実践研究 化学
身近な材料を使って
大阪府立吹田高等学校
辻 下 順 一

1.はじめに

 教科書の内容にそった実験だけでは,生徒はあまり興味を示してくれない.そこで,私は生活の中での化学を意識して身近な物質を実験材料として積極的に取り入れている.ふだん何げなく見ている物質だけに見方を変えるだけで生徒は興味を示してくれる.これが化学かと思われるかもしれませんが,化学という分野にこだわることなく,身のまわりの事象や物質に生徒自身がなぜかと疑問に思い,その解決のために工夫を凝らすことが今の生徒に求められていることだと思う.以下に本校で実施した実験をあげてみる.

2.ポップコーン

 ポップコーンはなぜの膨らむかを考えてみよう.また,普通のトウモロコシではポップコーンはできない.その理由を考えてみよう.
(1)ポップコーン用トウモロコシの粒と普通のトウモロコシの粒を比較する.2種類をスケッチして,異なる点はどこか考えてみよう.
(2)300mlのビーカーに,バターを少量とポップコーン用トウモロコシを約100粒程入れ,全体の質量を天秤ではかる(ビーカーの破損を防ぐため,必ずパイレックス製のものを使用する).
(3)アルミホイルをかぶせ,上部に穴をあけておく.穴から出てくる気体は何だろうか.
(4)バーナーを弱火にして,ビーカーを振りながら,おだやかに加熱する.音がしなくなるまで続ける.(火が強いと焦げてしまう.)
(5)破裂が終わると少しさまして,再びビーカー全体の質量を天秤ではかる.
(6)トウモロコシを入れたビーカー全体の質量にどのような変化があったか.また,それはなぜか.
 ポップコーン用トウモロコシは爆裂種という品種で,普通のトウモロコシの粒より丸く,外皮が厚く強い.ポップコーン用トウモロコシは乾燥しているように見えるが,少量の水分を含んでいる.加熱すると,内部の水が水蒸気になり,粒の中で充分な圧力が生じ限界になると厚い外皮が爆発して水蒸気が逃げる.質量変化は水蒸気の変化である.トウモロコシの品種による違いを知り,水蒸気の力に驚き,爆発の意味を知ることに素直によろこぶ.食べるときにきっと思い出してくれるだろう.

スイートコーン
(甘味種)
ポップコーン
(爆裂種)

3.繊維の識別

 衣服などに使われている繊維を,燃焼の違いや染色の違いにより識別してみよう.
(1)それぞれの布の端に鉛筆で番号を記入し,その布の一部を切り取り,ピンセットでバーナーの外炎にゆっくり近づけてみる.燃え方,臭い,特徴を表1と比べて,布の種類を予想してみよう.
(2)繊維鑑別試薬(Bokenstain)の溶液を100mlのビーカーに半分ほど入れ,加熱沸騰させる.
(3)全ての布をビーカーに入れて2分間ほど煮沸する.突沸させないようガラス棒でかき混ぜる(このとき自分の衣服に付かないように注意する).
(4)染まった布を取り出し,充分に水洗いし乾燥させる.
(5)表2の識別色サンプルと比べて,それぞれの布を確認し,レポートに貼ろう.
 繊維を手で触ったり光沢を見る.引っ張ってみる.燃焼の違いを調べる.生徒は,いろいろと意見交換をしながら進めていくと,ある程度は識別できる.最後に,染色により識別をする.識別表は,あらかじめ識別試薬で染めたものを準備しておく.繊維は種類によって化学的性質が異なるため,染料の種類や染色方法も異なる.生徒は,繊維の識別を表を見ながら比較し,クイズのように取り組んでいる.染色した布もカラフルである.繊維の構造や製法など,学習の前に身近な繊維そのものを意識させたい.

4.温泉卵

 食品成分表では,卵白凝固73℃と卵黄凝固68℃と示されている.卵黄が固まり,卵白が半熟の温泉卵(逆転卵)の最適の温度と時間を調べてみよう.
(1)班ごとに温度と時間を決め,温度を一定に保ちながら加熱する.
(2)皿にあけて,卵黄と卵白のようすを観察する.
 他の班の卵と比較させると,表では[7] [8] [10] [11]あたりが適当であった.こうした実験で,タンパク質の変性を知り,タンパク質について学習を進めたい.
温度
時間
15分
20分
25分
30分
65.0℃
[1]
[2]
[3]
[4]
67.5℃
[5]
[6]
[7]
[8]
70.0℃
[9]
[10]
[11]
[12]
72.5℃
[13]
[14]
[15]
[16]

5.おわりに

 面白い実験は教員自らが楽しむことである.授業のため,家庭科に繊維や食品についてアドバイスを求めたり,スーパーに材料を探しにいくことも多くなった.生徒も学校でこんなことをしたと友だちや家族に自慢気に話をしているようだ.学校の化学が広がる.生徒に基本的な学習の理解を求めることはもちろんだが,化学の範囲を超えて,素直に自然科学に感動し,あらゆることに疑問をもち,それを解決しようとする姿勢をこれからもずっともち続けて欲しい.

参考文献
(1)たのしくわかる化学実験事典 左巻健男編 東京書籍
(2)身近な化学実験T 日本化学会 訳編 丸善
(3)食品成分表 一橋出版

表1 繊維別燃え方・臭い・特徴

表2 識別色サンプル


表1 繊維別燃え方・臭い・特徴
予想
確認
種類
燃え方
臭い
特徴


綿
ポッと燃える
紙が燃える臭い
灰色の軟らかい灰を少し残す


羊毛
縮れてくすぶるように燃える
髪を焼いた臭い
黒褐色のつぶれやすい固まりを残す



縮れながら徐々に燃える
髪を焼いた臭い
黒褐色のつぶれやすい固まりを残す


レーヨン
紙のようにパッと燃える
紙が燃える臭い
白っぽくて軟らかい灰が少し残る


アセテート
溶けるようにして燃える
酢の臭い
硬くてもろく,黒色の固まりを少し残す


ナイロン
溶けながら燃え,炎から出すと消える
特臭
ガラスのような硬い玉ができる
熱いうちに伸ばすと糸になる


アクリル
溶けて弱い炎を出す
特臭
硬くて黒い玉が残る


ポリエステル
すすを多く出して燃える
芳香
溶けて玉ができる
熱いうちに伸ばすと糸になる

表2 識別色サンプル
繊維名
識別色
繊維名
識別色
綿
アセテート
羊毛
ナイロン
アクリル
レーヨン
ポリエステル

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