化学授業実践記録
燃え上がる鉄粉
〜物質の表面積と反応速度〜
(長野)長野吉田高等学校
松本俊一
 
1.はじめに

 本校では毎年7月に,本校に入学を希望する中学生に対して体験入学を実施している。化学では50分の時間内で実施可能な実験のうち,インパクトの強いものを選んで中学生に体験してもらい,例年好評を得ている。この実験はその中でも評判のよかったもので,おなじみの金属である鉄を題材に,物質の反応速度を物質の形態でコントロール可能であるということを体験するものである。実験も比較的簡単で,結果も驚きに満ちたものであるので,授業の参考になれば幸いである。
 
2.実験の内容

器具: 試験管×2,ステンレス試験管立て,試験管ばさみ,マッチ,ガスバーナー,蒸発皿,ろ紙,薬さじ,ゴム栓,ネオジム磁石,ピンセット
試薬: シュウ酸鉄 Fe(COO)2・2H2O(500gで約3000円),スチールウール ,釘

【実験】

《鉄の微粉末の調整》

1. シュウ酸鉄 Fe(COO)2・2H2O の黄色粉末を試験管2本にそれぞれ7分の1ほど入れる。
2. 試験管ばさみで試験管を保持し,ガスバーナーを弱火にして5〜10分ほどシュウ酸鉄を加熱する。管内に水滴がつくのを防止するため,まず試験管の上部をまんべんなく加熱し,その後シュウ酸鉄を加熱すること。加熱とともにCO2ガスが吹き上げ,黄色のシュウ酸鉄が黒色に変化してゆく。
反応式: Fe(COO)2・2H2O → Fe+2CO2+2H2O
シュウ酸鉄 Fe(COO)2・2H2O の黄色粉末 加熱によりCO2が脱離し,黒色のFeに変化する
3. 2.の粉末が完全に黒色に変化したら加熱をやめ,すぐゴム栓を乗せて試験管立てに放置する。触れられるほどに冷めたら,余分な空気に触れないようゴム栓をしっかり締める。予備も含めて2本つくるほうがよい。
 
3.結果および観察事項

1) 実験台に釘,スチールウール,試験管を並べて立てる。ネオジム磁石を近づけ,全て鉄である(くっつく)ことを確認する。
2) まず釘にマッチで点火してみよう。燃えるだろうか。
3) スチールウールを軽くほぐして広げ,ピンセットでつまみ上げて下部にバーナーで点火してみよう。鉄線がじわじわ燃えるのが観察できる。
4) 蒸発皿の上に濡れたろ紙を敷き,試験管内部の微粉末の鉄を30cmほどの高さから静かにあけてみよう。空気に触れた瞬間に真っ赤な火の粉が見える。ろ紙が乾いて燃えだすこともあるので,煙が見えたら水を追加する。
ネオジム磁石にくっつく鉄の微粉末 空気に触れると,赤熱した粉末が見える
※風向きによっては実験者のほうに粉末が流れてくることがある。素肌に触れると大変熱く,服に触れると焦げることがあるので,高いところからあけない方がよい。
5) 3種類の鉄の反応を確認したら,器具を洗浄し,もとあった場所に戻す。反応後の鉄粉末は,教卓に回収する。実験台に粉末が飛び散るので,濡れ布巾で拭いておく。
 
4.終わりに

 中学生に対しては,

[1] 同じ鉄であっても,形状によっては燃焼(酸化)する速度が大きく違う
[2] この鉄粉は冬にはおなじみの使い捨てカイロの中身であること
[3] カイロは鉄粉の粒径と塩水などの添加剤で温度と持続時間を調整しているということ
[4] 炭鉱などで起こる粉塵爆発の原因はなにか

などを実験のまとめとして考えさせ,感想を記入してもらっている。
 高校化学の授業では,化学 II の反応速度の範囲で活用可能ではあるが,実際にはそこまで到達できずに授業時間数が終わってしまう。もし十分な時間があれば,授業の中で再度取り扱ってみたい実験である。