化学授業実践記録
金属イオンの分析実験
福岡県立小倉高等学校
納富義樹
 
1.はじめに

 本校は、平成17年度より、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の研究指定を受けている。「高い志と能力を有した研究者の育成」を目指して、大学等と連携した講座型体験活動の実施、専門的な研究活動を行う「SS研究会」の活動支援、そしてこれらを支えるハイレベルな授業内容と教育課程の研究などに取り組んでいる。
 化学に関しては、既存の科目を4つの学校設定科目「SS基礎化学」、「SS理論・無機化学」、「SS生命・有機化学」、「SS材料・有機化学」に改編して指導している。今回は、その中で生徒の思考力・考察力を高める探究活動として実施している「金属イオンの分析実験」についてまとめる。
 
2.実験の目的と方法

(1)目的
混合溶液に含まれる3種の金属イオンを分離・確認する実験を通して、金属イオンの性質を整理・再確認するとともに、実験操作の習得を目指す。

(2)準備
ろ過器具、試験管、試験管立て、駒込ピペット、金属イオンの混合溶液、分属試薬、熱湯、薬さじ、時計皿

(3)操作
 
@ AgとPb2+の分離と確認

混合溶液約3mlを試験管にとり、これに希塩酸を新たに沈殿が生成しなくなるまで加えて振り混ぜた後、ろ過する。
アのろ紙上の沈殿に約10mlの熱湯を2回注いで得られたろ液にクロム酸カリウム水溶液を1〜2滴加えて、沈殿が生成するかどうかを確認する。
イでろ紙上に残った沈殿を薬さじで時計皿に少量とり、アンモニア水を数滴加えて溶解するかどうかを確認する。

 A Cu2+とFe3+の分離と確認

操作@アのろ液を入れた試験管を熱湯を入れたビーカーに浸して温める。その後、水酸化ナトリウム水溶液を5〜6滴加えてよく振り、沈殿が生成していればろ過する。
ろ紙上の沈殿を約10mlの温湯で洗った後、アンモニア水を数滴加え、ろ液の色を確認する。
イでアンモニア水を加えた後も残っている沈殿を蒸留水で軽く洗浄した後、塩酸を加えて沈殿を溶解させ、さらにその溶液にヘキサシアノ鉄( I I )酸カリウム水溶液を1〜2滴加えて沈殿が生成するかどうかを確認する。

 B Zn2+とLiの確認

操作A−アのろ液に白金線を浸し、ガスバーナーの外炎に挿入して炎色反応が起きるかどうかを確認する。
操作A−アのろ液に硫化ナトリウム水溶液を3〜4滴加え、沈殿が生成するかどうかを確認する。

※生徒は以下の混合溶液 [1] 〜 [8] のいずれかを取って分析する

Ag+ Pb2+ Fe3+ Cu2+ Zn2+ Li+
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]

<実験概要図>


(4)流れ(65分授業)
@ 教師による説明(15分)
  ア ろ過の方法、ガスバーナーの操作、火傷への対処法
  イ 試薬の注ぎ方、酸やアルカリの取扱い
  ウ 廃液の処理法
A  生徒による実験(35分)
B  まとめ(15分)
  ア 実験結果及び考察内容の発表
  イ 教師によるまとめ

 
3.終わりに

 昨年度、本実験を実施したときは、8班中7班が含有イオンを全て的中させた。シナリオ通りに進めるのではなく、沈殿生成の有無等をふまえながら自分たちで考えて実験を進めていくことが生徒にとってはとても興味深かったようである。