化学授業実践記録
有機化合物分野の指導
−アルコールを端緒として−
北海道札幌西高等学校
金澤 豪
 
はじめに

 高校において新学習指導要領は平成15年度から学年進行で実施され、これにしたがった教科書で指導を受けた生徒が今春卒業した。本校においても平成15年度入学生は化学 I 、 II をひととおり学び終えた。化学は I Bから I に変わり、全体的に内容が易化しているが、無機分野のように生活に密着する分野では学習内容は増加している。このことは記憶に頼る学習が増え、しくみや理由を考えなくなる可能性がある。
 特に、化学結合においては、1本の結合のしくみを教えるのであって集合状態は教えない。金属結合は簡単な記述のみで終了する。このことは物質の学習としては極めて不十分であると言わざるをえない。そこで、有機化合物の分野を学習するとともに結合に関する考え方を導入することとした。
 
1.メタンと水の分子について模型を提示する

共有電子対と非共有電子対の和が4である。
立体構造
水の非共有電子対を強調し分子内の電気的なかたよりを確認する。
対して、メタンは立体的にバランスがよいことを強調する。
 
2.アルコール類の分子をつくり、
  水に対する溶解度を考える

(1) メタノールについて
 メタンのC−H結合をC−O−H結合にする。
 水分子の水素がメチル基にかわったことに気づかせる。大きさの違いを含め考え、水への溶解は容易であると導く。

(2) エタノールについて
 メタノールにメチレンを書き加える。

(3) プロパノールについて
 エタノールのC−H結合の水素をメチル基にかえ、構造式を書く。
 枝分かれの様子を確認させる。また、立体構造にも注意を向ける。
 また、水への溶解において、炭素数が増えたとき−O−H部位の影響はどのように変化するか考える。
 例として、1-ヘキサノールの構造式を書き、立体構造を考える。水と違う部分の大きさを比較する。均一に混合するかどうかを考える。その後、エタノールと水、1-ヘキサノールと水を実際に混合し、結果を確認する。アルカンであるヘキサンは水と混合しないことと見比べる。
 似たものどうしが溶解することから、分子構造の差異に気づかせる
 
3.ヒドロキシ基の存在による沸点の違い

 分子の構造は沸点にも影響を与えている。また、メタンの分子量が16、酸素の原子量が16と炭素数が少ないときほど、酸素の分子量にあたえる影響は大きい。
 分子量による沸点の比較をする。気体は分子間に働く力より大きな運動エネルギーを持つ。分子間力は分子量と相関がある。分子間に働く力は、他にヒドロキシ基のような電気的にかたよりをもつ構造の影響があり、この力は強く分子間に働くことを説明する。
 アルカンとアルコールの沸点の違いは、分子間に働く力が強くなる分子構造があることを説明する。

 
4.構造異性体を考える

 炭素数3個のアルコールから、炭素数4個のアルコールを水素とメチル基の交換により考える。ブタノールの構造異性体を書き、枝分かれの種類が増えたことを確認する。分子の空間認識も喚起する。
 
5.アルコールの第1級、第2級、第3級の比較と酸化

 炭素にいくつ炭素が結合しているか見比べる。次に炭素と水素の間に酸素を挿入し、酸化とする。脱水が起こり安定な構造となるものがある。
 第1級アルコールは、アルデヒドを経てカルボン酸になる。
 第2級アルコールは、ケトンになる。
 第3級アルコールは、酸化されない。
 構造式から炭素に直接、水素が結合していなければ酸化はされないことがわかる。
 
まとめ

 化学 I には、羅列型の教材、つまり浅い理解でも記憶すると理解が進んだように感じるものが増えた。考察を必要とする学習が減少したと感じている。その中で少しでも論理的な組み立てができるような学習指導ができるよう工夫した。前時の理解の上に次の項目が進むように授業の展開を考えつくったものである。近年の生徒は、辛抱強く考え続けることが苦手なため、このように総合化を意識した教材では取り組みにくく感じる場合がある。しばしば教科書どおりの学習の指示をするように授業展開することも大切と考えている。