物理授業実践記録
Webソフトを用いた音波と交流の授業
―JST「理科ねっとわーく」の利用―
神奈川県立厚木高等学校
水上慶文
 
1.はじめに ―「理科ねっとわーく」の紹介―

 JST(科学技術振興機構)が運営している「理科ねっとわーく」という無料のサイトがあり、小・中・高等学校の教師であれば誰でも上記URLから入会できます。
 このサイトは小中高の理科(物化生地)の一斉授業においてインターネットに接続して利用することを目指しており、資料映像・実験映像・生徒に説明するためのCGなどが豊富にそろっています。教室でインターネット回線を利用できない場合、CDR版を無料で送付してくれます。


図1 「理科ねっとわーく」の入り口

 
2.音波や交流の実験で使えるソフトについて

 今回は『映像と音声分析・合成ソフトで学ぶ「音・波動教育用デジタル教材」』というコンテンツの中にある「波形の観察:振駆郎」「振動数と音階:発音(はつね)」というWebソフトについて紹介します。いずれもハードディスクにおいてオフラインで使用できます。
両者の機能
「振駆郎」
[1] 音声の録音・再生
[2] オシロスコープ
[3] メモリーオシロスコープ
(拡大縮小可能)
[4] 画面内2点間の時間間隔測定
[5] ファイル入出力
※パソコンの内蔵マイクを利用することもできます。
「発音」
2台の低周波発振器
[1] 0〜2万〔Hz〕
[2] 最小ステップ0.2〔Hz〕(数値が示される)
[3] 位相反転可能
[4] 波形7種
[5] LR独立出力
 
3. 授業における利用例

 ここでは3種類の利用例だけを紹介します。アイデアしだいでいくらでも広がっていきそうです。

(1) 音速の測定

 教科書の「音速はυ=331.5+0.6t」を学習する際の導入として行います。紙管(長さ =183.5cm、直径10cm)の一端を塞いで閉管を作り、図2のように開口端で発した衝撃音と閉口端での反射音をマイクで拾う(図3上側)。反射音の遅延時間を測定すると(図3下側)Δt =0.0106803秒なので管内を伝わる音速は になります。ちなみにこのときの気温15℃を公式に代入するとυ=340.5〔m/s〕となり、誤差は1%です。


図2 音速の測定


図3 振駆郎に取り込んだ波形(上)と反射波の遅延時間の測定(下)

(2) うなりの学習と公式の検証

 「発音」を正確に振動数が制御できる発振器として用います。

[1] 導入用:差が0.8〔Hz〕の二つの音を出し、ストップウォッチで20回「うなる」時間Δt を測定させ、このうなりの振動数の測定値 が0.8〔Hz〕になっていることを確認します。差を1.0〔Hz〕にして同じことを行い、「うなりの振動数は | f 1f 2 | になるのかなあ?」と問いかけてから教科書の学習に入ります。
[2] 波形の確認と | f 1f 2 | の検証:教科書の記述にあわせてうなりの波形を観察します(図4)。| f 1f 2 | の式も検証します。


図4 うなりの波形観察と周期・振動数の測定

(3) 交流回路の実験

 「発音」の出力を20〔W〕のアンプで増幅し、L出力を周波数可変の交流電源、R出力をスピーカーにつないで音を出し、周波数が変化していることを印象づけます。

[1] コンデンサーのリアクタンス :コンデンサーと豆電球を直列に接続し、周波数を小さくすると電球が暗くなることを見せます。(電流と端子電圧を測定し、Cを容量計で測定すれば検証実験になります。)
[2] コイルのリアクタンス XLL:チョークコイルと豆電球を直列に接続し、周波数を大きくすると電球が暗くなることを見せます。Lメーターがあれば検証実験になります。
[3] LCR回路のインピーダンス :電流計、豆電球、コイル、コンデンサーを直列に接続します。周波数を大きくしていくと共振周波数において電流が最大になり、豆電球は最も明るく光ります。

 図5について:C =25〔μF〕、L =0.1〔H〕(ともに素子の表示値)、f =300〔Hz〕のときに電流は最大値259.1〔mA〕になりました。電流計の下にある黒い箱がアンプです。


図5 LCRの共振実験