英語授業実践記録
インプット活動をアウトプット活動へつなげるために
広島県立神辺旭高等学校
永尾昌栄
 
1.はじめに

 コミュニケーション能力の伸長が求められている現在,自分の意見を英語で発信する,あるいは,内容を整理し,わかりやすく伝えることのできる能力を伸ばすことがますます大切になってきていることは言うまでもない。発信するためにまず必要なことは,インプット活動であると考える。インプット活動を通して学んだことをスムーズにアウトプット活動につなげるために,日常的な授業において行っていることを述べさせていただきたい。

 
2.インプット活動は,シンプルに徹底して,しかも楽しく

(1)語彙のインプット

単なる1対1の記憶としてのインプットでなく,思考力を要する活動
ゲームという形で,インプットを楽しく行うための活動
教師は極力手を貸さず,生徒が自ら活動するしかけづくり

を念頭に行っており,その具体例を次に示す。

【事例】『Helter-skelter Game』

[1] ペアをつくる。
[2] 各ペアに word hunter と名付けたワークシート(ペアの数だけ設問があり,それぞれに番号が付いている)を渡し記入させる。または,教科書の中からその語を見つけ出させる場合もある。この定義文は,後には生徒に作成させる。

設問は下記のような記述:
問題1(  )= All of the people inhabiting a specified area. The total number of such people. 
( )に入るのはpopulation
[3] 黒板の表(生徒の座席表と連動)に,答えを記入させる。
表に番号を書き入れ,指定された問題番号の答えを,座席対応表に記入する。
ペアが8組ある場合の記入の例(最前列左に座っているペアはpopulationと記入)
1 population 5 harvest
2 effort 6 pavement
3 deliver 7 assign
4 life 8 culture
[4] ゲームの開始
手順1  8つのペアが記入した単語が正しいかチェックを行い,表を確定。
手順2 教師がランダムにペアを指定する(今回はペア1を指定する)。
当てられたペアの生徒aは対応した英単語(population)を言い,生徒bは自分のペア以 外の単語を言う(今回はペア8を指定する)。
当てられたペアの生徒a(今回は8)は対応する英単語(culture)を言い,生徒bは同様に他のペアに対応した単語を言って,その手順を繰り返していく。(下図の番号に従って進行する。)
手順3  ペア内のもう一人の生徒は,日本語で次のペアの指名(population, 文化 → culture, 収穫 → harvest,努力・・・)のように行う。
途中で止まったペアは,ゲーム終了後,担当した単語を使って英文を作り発表する。
 ゲームの名前にもあるように,スピードも要求されるこのゲームに生徒は楽しんで積極的に参加し,同時に語彙が自然に定着していく。

(2)文法のインプット

 英文の内容を理解したり,英語を書いたりする際に,文法の理解は必須のものと考えている。単なる知識に終わらず,英文中でどのように用いられているかを理解することはもちろん,それを使って表現活動にもつなげている。
[1] 文法はシンプルに公式で
「公式」「鉄則」を生徒に提示し,理解を促す。
【事例】受動態の進行形 【事例】It is said that he was a singer.
be + 〜ing
+ be+ p.p.
---------------------------
bebeingp.p.
He is said /to have been a singer
「時がズレたら to have p.p.」
[2] 短文のインプット
[3] 長文の中でどのように使われているのかの理解
[4] 英文の作成(短文〜まとまりのある文)
 この [1] 〜 [4] をその文法事項がでてくる度に行い,何度も繰り返している。
 
3.アウトプット活動の可能性を探して

 学んだ事がらを生かして,生徒が発信する内容の難易度を少しずつ上げていく指導を行っている。その際,心がけていることは,4技能はそれぞれ独立しているものではなく,互いに密接な結び付きをもって習得していくものであるので,1つの活動で複数の技能の習得を同時に行えるような取組みを授業に採り入れる工夫を行っている。

(1)書く活動を多目的に生かすために

 学んだ語彙を生かせるテーマを与え,先の(2)で学習した文法事項を使った文を必ず入れるという条件の下,設定した語数で書かせる。先の項で述べた [4] の活動をここで行うことになる。(教員は事前に英文を添削し,生徒は各自発表の練習をしておく)テーマは,最初は What did you do during summer vacation? 等から, What do you want to do to make the world better? や,レッスンを終えた後で,内容について自分の意見を述べる等へと少しずつ抽象度を上げていく。
【事例】 1人の生徒が他の生徒の前で口頭で発表した後,他の生徒は発表生徒が作成した T/F 問題に答え,さらに 内容について質疑応答する。これによって,英語を書く力だけでなく,伝えたいことを効果的に伝える力の育成が,また受け手の生徒には,リスニング力,コミュニケーション力の育成も図られる。
【事例】 生徒全員にある生徒の原稿を提示し,一定の時間で読ませ,それを要約させる。これによって,速読,要約の素材として英作文を生かすことができる。

(2)発信形態を工夫して

 自分の意見を述べるだけでなく,学んだことを整理し,受取り手にわかりやすく説明する力も発信力の1つであると考える。レッスンの内容を,日本語を介さずに理解し,英語で伝えるために,発信する形の工夫も行っている。
 特に小説や随筆を取り上げる場合は,ペアで1レッスンを絵本や漫画で表現したり,グループで1パートをスキットにするという活動を行っている。アウトプットを,書く,話す活動に限定するのではなく,絵と文字,セリフと演技に置き換えるという発信方法の可能性をさぐりたいと考えている。生徒はより深く内容を理解しようとし,いかにわかりやすく効果的に伝えられるかを工夫するようになる。一方教師は生徒の内容理解や関心・意欲なども同時に評価できる。また,ペア活動を通して,学ぶ活動が深化するだけでなく,生徒の隠れたパフォーマンス力や絵の才能を生かすことにより,生徒が学習に対して意欲と自信をもてるようになる。
 
4.終わりに

 以上,授業で行っている内容の概略を,例示を含めて述べさせていただいた。授業が生徒にとって意味をもつためには,一人ひとりが伸びてゆき,それをクラス全員でサポートする雰囲気が作られていることが重要である。語学習得の基本は,やはり地道にコツコツ,である。一生懸命学習をしている生徒がクラス全員から認められ,その姿を全員が目指すという雰囲気を作りたいと考えている。
 まだまだ試行錯誤を繰り返しながらの実践である。生徒が英語をもっと学びたい,と思える授業をつくり上げるために,日々努力していきたいと考えている。