英語授業実践記録
dictoglossの実際
北海道札幌北陵高等学校
三井真弘
 
1.dictoglossとは

 授業に dictogloss を導入してから数年が経ち,その間,様々な試行錯誤を経ながら現在に至っています。ここでは日頃 dictogloss について考えていることを述べ,dictogloss の魅力をご紹介したいと思います。
 dictogloss は Grammar Dictation とも呼ばれ,Wajnryb (1990) では以下のように説明されています。

a. A short, dense text is read (twice) to the learners at normal speed
b. As it is being read, the learners jot down familiar words and phrases
c. Working in small groups, the learners pool their battered texts and strive to reconstruct a version of the text from their shared resources
d. Each group of students produces its own reconstructed version, aiming at grammatical accuracy and textual cohesion but not at replicating the original text
e. The various versions are analyzed and compared and the students refine their own texts in the light of the shared scrutiny and discussion

 ご覧のように,この活動では「聞く」「書く」という活動が中心となります(協働学習によってもたらされる効果はここでは触れません)。「聞く」ことについては,「音声を聞き取る」ことよりも「文脈を聞き取る」ことに焦点が行きます。そうしなければ「書く」ことができないからです。このことは,「聞く」活動としてよく行われる,問題演習やいわゆるディクテーションの問題点を解決するヒントになります。例えば,問題演習では設問に関する箇所だけ聞き取れれば正解できてしまったり,いわゆるディクテーションでは音声に集中するあまり意味が素通りされてしまったりする場合がありますが,dictogloss では,聞き取った英文全体の意味を文脈の中で理解することが優先されるので,上記のような問題は回避されます。
 また,「書く」ことについては,文脈のある素材を再構築するため,文と文とのつながりや段落のまとまりなどを意識するようになります。さらに,英文を書きながら,グループ内で文法的な正確さを常にモニターすることになるので,単なる知識として文法を学ぶのではなく,実際に使用しながら文法を学んでいくことから,定着度が高いと言われています。Grammar Dictation という別名の通り,特定の文法項目に焦点がいくような素材を用いれば,その文法項目に関するメタトークを増やすことも可能です。
 このように,dictogloss は「聞く」「書く」の両面で,極めて実際的な活動であると言えます。

 
2.マネジメント

 マネジメントの留意事項として,聞かせる回数とメモの取り方について触れておきます。聞かせる回数については,Wajnryb(1990) によれば2回となっていますが,この回数にはこだわる必要はないと思います。内容が聞き取れなければ再構築できませんから,素材の難易度に応じて柔軟に対応すべきだと思います。次のメモの取り方とも関連しますが,聞かせる回数を増やせば,いわゆるディクテーションに近い活動になり,聞く回数が少なければ,自力で英文を作っていく割合が高くなります。
 メモについてですが,何度も聞く機会があるとなると,生徒たちは一語一句すべてをメモしようとします。このメモの取り方もひとつの方法ではありますが,ディクテーションと同様に「意味の素通り」が起こり得ます。一方で,情報として重要と思われる語句だけをメモする方法では,英文の構造はすべて自分たちで考えなければなりません。本来の dictogloss はこちらのメモの取り方を意図していますが,負荷も大きく時間もかかります。
 つまり,素材によって,あるいは狙いによって,聞かせる回数を臨機応変に設定したり,メモの取り方をコントロールしなければなりません。折に触れてメモの取り方も指導していくべきでしょう。そのあたりのバランスの取り方が dictogloss のマネジメントの難しいところです。

 
3.展開例

 では,『Listening Box 2』(啓林館)を例に,dictoglossの展開例をご紹介します。素材となる音声は以下の通りです。

A: Hi, Cathy. Why didn’t you come back to Boston last week on Friday morning?
B: Well, I was supposed to, but I couldn’t. My flight was from Kansai Airport by way of New York. I could fly to New York from Osaka as planned, but at the airport in New York the seats were overbooked and some of the passengers couldn’t get on board.
A: Then what happened?
B: The airline company gave us the seats for the next flight and paid us two hundred dollars for the inconvenience. So, I came back Friday afternoon.
『Listening Box 2』(啓林館)Lesson 9より

 本冊には,この音声について以下のような設問があります。

3. What happened to Cathy in New York?
A. The plane from Osaka was not on time and she couldn’t catch the flight to Boston.
B. Her baggage was lost and she had to wait.
C. Because of the overbooking she couldn’t get on board.
D. She was lost her way and missed the flight to Boston.
4. What did the airline company do for her trouble?
A. They gave her a seat on the next flight and paid her for the inconvenience.
B. They gave her a seat on the next flight and a special travel ticket.
C. They gave her a hotel reservation and meals.
D. They paid for the whole airfare from Osaka to Boston.

 最初にB4判の用紙を配布しておきます。この用紙の左側はメモに,右側は英文の再構築に使用します。以下,授業の流れを説明します。

1. 本冊の設問に目を通し,何を聞き取ればいいのかを確認させます。その後,音声を2回聞いて,設問に解答させます。
2. 設問の答えを確認します。必要があれば,語彙などもこの段階で説明します。ここまでの作業が,概要の理解だけでなく,後の英文を再構築するにあたってのヒントにもなります。
3. 音声を2度聞いて,メモを取らせます。その際,キーワードのみをメモすることとします。
4. ここからグループ・ワークです。4人のグループでメモをもとに情報を共有し,英文の再構築を始めます。この素材は会話文ですが,第三者の立場から状況を説明する英文を書くものとします。生徒が作業している間,教員は机間巡視をしながら状況を確認します。必要に応じて,個々のグループへのアドバイスや全体への説明をします。
5. 作業の途中,生徒の作業が行き詰まる頃合いを見計らって,何度か音声を聞かせます。場合によっては,多くのグループが聞き間違えている箇所を指摘するなど適度なヒントを与えます。
6. ひとつのグループに再構築した英文を板書してもらい,間違っている箇所を指摘しながら,できるだけ自力で修正させます。時間がなければこの部分はスキップすることになります。
7. スクリプトを見ながら音声を聞かせます。聞き取りに問題があった箇所に注意を促します。
8. スクリプトを参考に,再構築した英文をできる範囲で修正させます。生徒の再構築した英文は素材の英文とは別物になっていますので,完璧に修正することはできません。
9. 各グループ1名に用紙を提出してもらいます。どの生徒が提出するかは授業の最後にこちらから指名します(「各グループで出席番号の2番目に大きい生徒」など)。

 これでおよそ45分の活動時間を想定しています。僕の授業では,週に1コマのペースでリスニングの教材を用いて dictogloss を行っています。スペースの関係で,生徒たちが実際に再構築した英文やメモをお見せできませんが,徐々にまとまった文章を書けるようになってきています。

 
4.まとめ

 ここまで,dictogloss の概要を述べてきましたが,いかがでしたでしょうか。dictogloss のバリエーションとして,この他にも様々な活動が考えられます。例えば,僕の担当している英語 II の授業では,まとめとして音声を聞いてメモを取り,そのメモをもとに口頭で要約をするという活動をしています。また,素材を聞かせるのではなく,読ませれば copygloss という活動になります。このように, dictogloss は場面に応じてまだまだ応用のできそうな活動です。
 これを機に,授業で dictogloss に取り組んでみようと思って頂ければ幸いです。

【参考文献】
Ruth Wajnryb (1990). Grammar Dictation Oxford University Press
友田芳子・伊達民和・野村真理 『Listening Box 2』 新興出版社啓林館