英語授業実践記録
自学自習を促すハンドアウト作り
−ELEMENTを使用した3年間の授業の展開−
茨城県立水海道第一高等学校
櫻井友裕
 
1.はじめに

 本校は6年前に進学重視型の単位制高校に移行した。大学進学希望者は多く,全体の9割以上を占めているが,それぞれがその進学の目標を達成するのに十分な学習を自ら進められるかというと,疑問であると言わざるを得ない。学校全体の目標として,自学自習の習慣の確立を目指しているが,生徒が自分から勉強するのを待っているだけでは手遅れになる可能性が高いというのが現状である。特に1,2年次の段階では,自分で勉強しようとしてもその方法がよくわからないという生徒も多く,指導者側から課題を与えないと英語の学習時間が確保されない。本稿では,この問題点を踏まえつつ,ELEMENT READING (啓林館)の教科書に対応したハンドアウト中心の授業展開について述べていく。

 
2.1,2年次の授業展開

 英語 I ,英語 II とも ELEMENT を使用し,各レッスンにおいて数種類のハンドアウトを使用しながら授業を行った。主な内容は以下の通りである。

(1) 予習ノートの活用
 自学自習の習慣を確立させる上で,正しい予習のやり方を身につけることは不可欠である。ノートに教科書の全文を書かせ,単語を調べ,すべて日本語に訳させるという昔ながらのやり方にこだわる考え方もあるが,全文を日本語に訳すという活動は,英文速解という観点からは非効率的である感が否めない。さらに,自学に慣れていない生徒は,どこに重点を置けばよいのか見失う場合も多い。予習ノートを使用すれば,予習のやり方が身に付いていない生徒でも,新出単語の意味の確認やターゲットセンテンスの理解など,順序立てて行うことができるため,習慣化させることが比較的容易である。提出については必須とし,年度初めに年間の提出日を全て示すことで計画的な学習につなげた。解答についてはそれぞれの提出日以降に配布し,授業の時点で全ての生徒が予習ノートの内容を把握できているようにした。

(2) 文法ハンドアウトの使用(資料1
 各授業において,パートごとに全ての文の文法構造を解説し,訳も合わせて示したハンドアウトを使用した。訳を与えてしまったら,生徒は勉強しなくなるのではないか,という懸念もあったが,結果的にははるかにその不安を上回るメリットがあった。まず複雑な文について,いちいち黒板を使用せずに解説できるため,文法や訳の説明に時間をとられすぎることがない。教科書の内容理解において時間を短縮することにより,他の音声活動などに時間が割けるようになるだけでなく,生徒たちが,教科書の内容を理解するだけでは不十分であり,学んだことを使えるようになるまでが英語学習であることに気づくようになる。さらに,このハンドアウトがあれば,授業に出られなかったり,授業の内容を忘れてしまっても,自宅で学習する際にもう一度確認することができるため,自学のきっかけになる。実際に定期考査前にこのハンドアウトで復習している生徒はかなり多かった。

(3) 熟語ハンドアウトの使用(資料2
 各レッスンで提示された熟語表現を使用した例文とその訳を1枚のハンドアウトにまとめ,レッスンの終わりに配布した。生徒はペアを作り,決められた時間の中で,片方の生徒が日本語で言ったものを,もう片方の生徒が口頭で英訳するといった活動を行う。その後,教師が日本語でハンドアウトの中からいくつかの文を選んで言い,何人かの生徒をあてて英訳させる。この活動により,重要イディオムの定着を図った。

(4) シャドウイングの実施
 各パートの最後に,教科書の本文の音読を全体で行い,発音やイントネーション等の確認をした後,音声 CD を使ってシャドウイングをさせた。シャドウイングができない生徒は,本文を見ながらオーバーラッピングで読む努力をするよう指示した。教科書の CD は全員に購入させており,できるだけ家でも声に出して読むように指導して,自学自習の意識を持たせた。

 
3.3年次の授業展開

 上記で示したような授業を2年間実施したところ,少しずつではあるが,英語学習に前向きな生徒が増え,全体の成績も向上し始めた。しかし,全国模試の結果を見ると,同程度の学校と比較したときに,長文読解力がやや劣っていることが判明した。3年次ともなると,上位にはマーク模試で9割以上の点数をとる生徒がいる一方,下位には3〜4割の点数しかとれない者がいる。学力の差が非常に激しいため,中上位の生徒にレベルを合わせれば,上位の生徒にとっては簡単すぎるが下位の生徒にとっては難しいという状況に陥る。そこでこれまで使用してきたハンドアウトのノウハウを活かしながら,全てのレベルの生徒に対応できることを目指した,教科書の題材中心の授業展開を模索した。

(1) ハンドアウトの作成(資料3
 下記に示す内容で構成したB4縦10ページほどの教材を,各レッスンの最初にまとめて配布した。この教材のねらいは大きく次の2点に分けられる。第一に,使い方の工夫で,どの学習段階の生徒にとっても活用できるものを目指した。第二に,授業外での生徒の学習活動の手助けとなるような内容をできるだけ多く盛り込んだ。ELEMENT READINGは12のレッスンと3つのExtra Readingで構成されており,1つの題材に充てられる時間は5〜6時間程度である。従って,授業以外で生徒がすぐに取り組めるもの,定期考査前に復習できるものを提示しておくことで,自主的な学習時間が増えることを期待した。ハンドアウトの作成に当たってはTeacher’s Manualに付属するCD-ROMに収録されているものを多く用い,作業の効率化に努めた。

[1] Keyword Checker & Vocabulary
 Keyword Checkerは各レッスンの最初にあるものをそのまま使用した。また,ハンドアウトの1枚目にそのレッスンの新出単語を集め,日本語の意味はもちろん,派生語や類義語などを示すことで,生徒が活用しやすいようにした。新出単語を一通り確認した後,英英辞書の定義から単語を探す課題に取り組ませた。英語の説明から単語を考える問題は,早稲田をはじめとする多くの私大で出されており,入試にも直結するものである。

[2] The Theme of the Passage & The Theme of Each Paragraph
 教科書の英文を読み,各段落の内容を端的に理解させ,全体の主題を選ばせる問題である。どちらも各レッスンの最後にある問題だが,段落ごとの内容の整理については英訳して提示した。必要があれば教科書の日本語の表を参照してヒントにするよう指示した。

[3] Reading Task I〜III
 本文の概要をつかんだ後,もう少し詳しい内容把握に取り組ませる。Task Iは空欄の穴を埋める選択肢を選ぶ問題,Task IIは要約の文の穴埋め,Task IIIはT-F問題である。全てCD-ROMに収録されているものから選択,加工しながら作成した。

[4] Reading Task IV以降
 内容に応じて本文を3〜5のまとまりに分け,それぞれ深い内容理解を問う問題を作成した。具体的には,各パラグラフの要約の穴埋めや,指示語の言い替え,英問英答などを取り入れた。

[5] Grammar
 難解な文や,ターゲットセンテンスについて,文法の解説をまとめて示した。なお,授業で扱うのはここまでであり,[6] 以降は自習用の教材となる。

[6] Reading Aloud
 学習事項の定着を図るため,1,2年次で行ってきたような音読・シャドウイングを続けるよう指示した。本文の重要表現を日本語に置き換えて示しておき,生徒はそれを英語に訳しながら音読できるように作成した。

[7] Idioms
 重要表現を使用した例文の穴埋め問題を作成した。3つの Drill で構成し,それぞれの熟語を3回練習できるようにした。

[8] Further Reading
 最後にレッスンの内容に関連する入試問題を1〜2題掲載した。題材が同じ英文中には,共通する単語が多く使われているため読みやすくなることを実感させることで,多読の重要性を意識させた。

(2) 授業の展開
 授業においては各活動を区切り,タイマーで時間を計りながら取り組ませ,速読を促した。問題ごとに答え合わせを行い,簡単な解説を加えた。そして,先に述べたように,どのレベルの生徒にとっても授業が有意義なものになるよう,次の3つの受け方の中から自分の学力に合うものを選ばせるようにした。

[1] 成績上位の生徒
 このレベルでは,予習をせず,初めて読む英文として問題に取り組ませ,入試問題を解く意識で受けるよう指示した。

[2] 成績中位の生徒
 このレベルでは,1,2年次と同様,事前に自分でわからない単語の意味を調べたり,教科書の本文をざっと読んでおくなどして,予習をしてから取り組むように指示した。

[3] 成績下位の生徒
 このレベルでは,成績中位の生徒と同じように,事前に予習をするよう指示した。さらに,必要があれば,本文の日本語訳を参照しながら問題に取り組めるようにした。英語が苦手な生徒にとって,要約や指示語の問題などは,訳を見ながらでも簡単にできるわけではない。どのように答えを出せばいいかを知ることから始められるように配慮した。

 
4.まとめ

 この取り組みについては,英語科の他の先生方にも興味を示していただき,現在は持ち回りで各レッスンのハンドアウトを作成している。また,アンケートの実施により,この授業形式は生徒にはおおむね好評であることが判明した。さらに,全国模試の結果などを見ても,過年度と比較して好成績をあげている。本稿で紹介した取り組みだけによるものではなく,様々な場面での英語担当教員の連携や共通理解が生み出した成果であると考えている。