英語授業実践記録
SELHi高としての取り組み
徳島県立富岡西高等学校
橋見誠一
 
1.はじめに

 5年前に本校に赴任して,生徒の英語力が学年の進行とともに下がっていくことに対して,英語科としてこれといった組織立った取り組みができていないことに危機感を覚え,英語科の改革に着手した。まず科会議を2週間に1回のペースで開き,授業の進度や生徒の理解度,指導上の悩みなどを共有し,また模試の結果がでるとすぐに成績の分析を行い,指導方法の問題や今後の方針などを話し合った。単語や熟語の小テストの実施などはもちろんであるが,生徒のレベルに応じて5段階くらいの読み物を生徒に与えた。その他,定期的に英字新聞なども与えて,興味を持った記事の要約などをさせた。その結果,多数の生徒の英語力が目に見えて向上し,全体として一定の評価が得られたが,現3年生から,入学してくる生徒の学力層が大幅に広がり,中学英語を理解していない生徒が目立つようになった。SELHi高の指定を受けたこともあって,さらに英語科としての取り組みの強化を図った。

 
2.取り組み内容

(1)ブリッジ教材の作成と活用
 中学英語がきちんと身についていない生徒の指導と高校入門期の指導の強化を狙いとするため,3月下旬に合格者に対して,中学校で学習する文法項目を基に作成したテストを実施した。その結果を分析した上で,本校オリジナルのブリッジ教材を作成した。作成にあたっては,近隣の中学校の先生方からも協力をいただき,特に中学生が苦手とする項目には多くの時間をさいた。最初の2週間程度の使用であるが,英語 I の教科書の内容も取り入れており,スムーズに高校英語に移行できている。この教材を使う時には,特に英文の音読にも力を入れており,声を出すことを徹底して指導している。

(2)読解力向上のために
 速読力を主とした読解力については,大学入試という観点からもその重要性は言うまでもないことである。本校では1年生で「精読」,2年生で「多読」,3年生で「速読」指導に主眼を置き,さまざまな工夫を凝らしながら指導している。例えば,1年生の学校設定科目である「グラマー・フォー・リーディング」では,1つの文法事項を学習した後,その項目の入ったある程度長い文章を読ませることで文法事項の定着を図っている。そのための教材選びに大変な時間と労力を要するが,本校の教員が分担して行っている。
 また,本校オリジナルの「スライド・リーディング」は英文の構造に習熟させるのには有効な方法である。「スライド・リーディング」とは,独自に開発したコンピュータソフトを使って,右側の語句が分からない状態で生徒に英文を読ませることである。次に来る語との関係を予測したり,コロケーションの知識によって次の語句をイメージさせながら英文を読むことで,視覚的にも英語の語順や構造に慣れることを狙いとしたものであり,このことが最終的に英語を左から右によむことに自然とつながっていってくれるのではないかと考えている。
 もう1つの学校設定科目である「リーディング・スキルズ」という授業では,「ReadSmart」というESL教材と「READING NAVI」(啓林館)を使って,授業のほとんど全てを英語で行っている(時には挫折することもあるが・・・)。いろいろな英文を読むのに必要とされるスキルを教え,速読力の養成に努めており,和訳などは行っていない。定期考査には学習したスキルを使うような未習の文章を使用したり,辞書も持ち込み可とするなど,従来とは違ったスタンスで生徒の英語力の評価を行うなど工夫を凝らしている。

 
3.教員と生徒の変化

 SELHiのおかげで今までの授業スタイルを見直し,変えざるをえなくなったこともあって,教授法に対する個々の意識が高まり,生徒による授業評価にも表れているように,結果的に全体として授業の質が向上している。音読指導を徹底し,授業に変化を持たせられるよう,ペアワークなど生徒の活動を大幅に取り入れており,「自信はなくても,とにかく英語で教えることにチャレンジしよう」という意識を全員が持つよう心がけている。
 生徒の側にも変化が見られるようになった。英語で授業を受けることを普通に感じるようになり,発音がしっかりとできるなど音読指導の効果が出ている。また,以前は学年進行とともに壁を感じて,英語に対する興味を失う生徒が多かったが,そのような生徒が少なくなり,成績も維持できている。英語による授業を期待して入学してくる生徒も多くなり,授業に対する積極性も格段に増しているようである。

 
4.おわりに

 一人が考案したアイデアを全体で共有したり,さらにいいものになるよう話し合いを重ねる中で新たな発見が生まれるなど,SELHiのもたらしたものは大きく,英語科の授業力は本校のアピールポイントの1つとなっている。「ブリッジ教材」や「スライド・リーディング」などもまだまだ改善の余地がある。生徒の英語力を伸ばした他校の成功例や取り組みを参考にしながら,生徒にとって魅力的かつ力のつく「富西英語」を確立できるよう,英語科として研鑽を重ねていきたい。