英語授業実践記録
グローバルに活躍する人材育成をめざす
:国際文化科学コース
沖縄尚学高等学校
国際文化科学コースアドバイザー
喜屋武臣市
 
1.はじめに

 平成15年の国際文化科学コース(以下、「本コース」)開設から5年、生徒達はアメリカを中心にカナダ、イギリス、中国、台湾などの多くの海外大学に進学している。
 本コースの海外大学進学指導は、教科指導と段階的構造を与えた語学研修・交換留学プログラムの二本を基軸としている。さらなる質的向上を図りつつ、近未来の日本の多文化社会を見据えた取り組みは焦眉の急である。
 以下、本コースの概要を若干の将来展望とともに紹介する。

 
2.コースの教育目標

 本コースは、日本人としての文化的素地と世界に通用する論理的思考力を兼ね備え、グローバル化の進む日本および国際社会のさまざまな分野で活躍できる人材育成の基礎づくりを目標としている。

 
3.教育目標達成のための基本枠組み

(1)

英語圏大学への進学

 本コースはその教育目標を達成するため、アメリカやカナダなどの英語圏の大学進学に焦点を当てている。

(2)

文化的素養を培う

 「あなたは、この大学のために何ができますか」という問いがアメリカの大学受験でよく投げかけられる。これは生まれ育った土地の文化的素養を培い、課外活動などを通した経験を積ませることの大切さを示唆するものであり、本コースでは、それらは多文化社会に生きる必須要件として位置づけている。
 
4.授業実践の工夫

(1)

教科教育

 アメリカ、カナダの大学入学には、それぞれの大学が求めるTOEFLやSATの一定以上の成績が求められる。そのため、3年生になると、その基礎力養成に多くの時間があてられる。

[1] TOEFL・SAT対策:3年になると、海外大学大学院を修了した日本人教師陣と米国人教師陣による本格的な指導が行われる。
[2] 英語による授業:3年生には、海外大学での英語による授業に馴染ませるため、アメリカ人教師が「アメリカの歴史」、「エコロジー」、「SAT数学」など、文系・理系のモデル的な科目の指導にあたる。これは結果的にTOEFL対策にも効果を生んでいる。一般教科の生物や数学IIでも専門用語の英語表現を取入れ、試験問題には英語題を加えて、TOEFLでの理数系の文章を抵抗なく読めるようにサポートしている。
[3] 書く力を養成する:海外大学では“書く力”が最も重要な位置を占めるという観点から、多くの“書く機会”を提供している。
ア. 「カレッジ・ライテイング」は、さまざまなテーマで課題を与え、エッセーの書き方の習得をめざしている。
イ. 「週間ジャーナル」は2年、3年生に“書くことの習慣化”をめざしたものである。2年生は最低30行、3年生は45行を義務づけられ、毎週月曜日に提出し、米国人担当教師が文体、文法などを添削して週央には生徒に返却される。
ウ. 「会議英語」は、後輩達の前での英語発表・討論を経て、『卒論集』として発行され、卒業式の日に手渡される。この授業は、海外大学で求められるアカデミック・レポート作成を模擬的に経験させる意図があり、英語で準備した執筆要領に沿ってまとめさせている。大学での専攻希望分野に関連する課題をここ沖縄の中から探りだし、混沌とした中から自分の卒論テーマ設定に至るプロセスは、生徒達にとってはレポートを書く以上に大仕事になる。それだけに生徒同士が力を合わせなければならない。そのことを念頭に、最初の授業は、英語でいう「会議」の語源は、「ともに、運ぶ」という意味をもつという説明で始められる。グローバリゼーションを生きるということは、そういう生き方でもあろう。また、会議を実らせる上で大切な“積極的に質問する姿勢”を促すために“There is no stupid question!”というスピリットが強調される。
[4] 文化的素養を培う:本コースの生徒は、「特別活動」の時間に空手、三線、書道のうちのひとつを3年間履修し、沖縄(日本)の文化的素養の獲得が期待されている。空手、三線には沖縄県外・海外からの生徒がより強い関心を示すなど、期せずして切磋琢磨の機会にもなっている。

(2)

語学研修・海外交換留学プログラム

 本校は、アメリカの3大学、2短大、3高校;台湾2高校;オーストラリア5校、フィンランド1校と教育協定を締結し、共同研究発表、語学研修、交換留学プログラムを実施している。今年はすでに海外に送り出した生徒が95人、受け入れ外国人生徒は78人となっている。プログラムの運営・管理は、「プログラム室」が担っている。プログラムは、次のような段階的構造を持たせている。
[1] 県内でのESL研修:中学生中心に8泊9日の宿泊研修には、米国提携大学のESL専門家および本校の英米人講師が指導にあたる。
[2] 米国提携大学での夏期語学研修:高校生を中心に3週間の語学研修・アメリカ家庭生活を経験する。
[3] 1ヵ月交換留学:米国や台湾姉妹校で3週間の授業・文化体験、ホームステイを通しての家庭生活を経験する。夏期にアメリカ・台湾の姉妹校の生徒を本校に受け入れ、授業参加、調査、フィールド・トリップをもとにまとめた2時間の調査結果発表会には、本コースの生徒達が討論に参加する。
[4] 1年留学:学校独自のプログラムと県費・国費などの留学プログラムへの参加・挑戦の支援。
[5] 政府の交流プログラムへの参加:本年度の場合、外務省のプログラムで来日したベトナム、フィリピンの生徒達を受け入れ、本校の生徒達との混成チームで協働した成果の「ミニ研究」は、「温暖化」「人口問題」などから身近な問題についてパワーポイントでまとめ、分科会ごとに発表され、討論には全校生徒がそれぞれに参加した。

(3)

英語弁論大会への参加と実績

 本コースの生徒達は、ほぼ毎年、沖縄県高等学校英語弁論大会で優勝・準優勝しているが、昨年は県内・海外大学などが主催する県内主要4大会の完全制覇、九州地区デイベート大会でも優勝するなどの好成績をあげている。しかし、弁論を仕上げる過程でのクラスの生徒同士・先輩、後輩の相互作用は同じ程度に価値がある。
 
5.進学実績と留学生からのメッセージ

 本コースの卒業生は、アメリカの提携大学、ワシントン大学、アリゾナ大学、マサチューセッツ大学や女子大の名門校スミス・カレッジ、カナダのカルガリー大学などに合格している。本コース開設前に海外大学に進学した生徒達は、海外や日本の大学院に歩を進めている。本校のホームページには留学生から海外大学のキャンパスライフ、留学の意義、将来設計などのメッセージが掲載されているので、海外大学をめざす方々には次のアドレスにアクセスして一読をお勧めしたい。

http://www3.okisho.ed.jp/curriculum/kokusaibunka/introducer

 
6.今後の課題と展望

 この5年間を振り返ると、さらなる質的向上の余地を残しているものの、一定程度の基礎固めはできたと考えられる。そして近未来の日本を見通した場合、多文化社会への備えは不可欠であり、本コースでは全教科を日本語と英語で提供する時期にきている。