英語授業実践記録
「読み」「書き」を通じての
コミュニケーション活動
〜グループでの「読み」「書き」学習の実践例〜
島根県立松江北高等学校
岩田史樹
 
1.はじめに

 「コミュニケーション手段としての英語学習」ということは学習指導要領にも記されているとおりであるが,高等学校の授業においては「聞くこと」「話すこと」に比べて「読むこと」「書くこと」はあまり「コミュニケーション」と結びついていないように思われる。会話を通じて人の話を「聞き」そして相手に「話す」際には,その場に相手とのやりとりが存在する。それに対して「読み」「書く」学習は,現実の活動と乖離していることが多い。現実にはいかなる文章であれ,筆者はどのような人々がそれを読むのか想定しながら書いているはずであるし,また読者は何らかの目的を持って読むはずである。授業においても,生徒が現実に存在する書き手や読み手を意識しながら,目的を持って「読み」「書き」をする機会を増やしていく必要があるのではないだろうか。

 
2.実践例

 大規模校では他のクラスとの足並みをそろえて指導せねばならない。むろん教員間で連携を取りながら様々な試みを行っていくことは大切であるが,現実的には担当者全員で各単元の細かい部分まで打ち合わせをすることは不可能である。よってここでは普段の授業を行いながら,その合間に短時間で組み込むことのできる活動の一例を紹介したい。以下に紹介するのは本校の2年生を対象としたライティングの授業における一実践例である。

(1)

授業構成
第1限 授業後半の20分で「読む」活動を行う
第2限 授業後半の20分で「書く」活動を行う
第3限 授業前半の20分で「読む」活動を行う

(2) 活動内容
[1] 「読む」活動
・5,6人程度のグループに分かれ,配布された例文を読む
  (文中の数箇所は空所になっている) 
・グループで話し合い,空所に適語を入れる 
・各グループの解答を黒板に書き,正解数を競う 

 今回は以下の例のように有名人を説明する文を与えた。各界の著名人を説明する同様の例文を4つ用意した。以下の例文中の(あ),(う)のように,たとえ人物に対する知識がなくても英文を読む力さえあれば答えはいくつかにしぼられるもの,(い)のようにある分野を得意とする生徒であればおそらく知っているもの,(え)のようにおそらくほとんど誰も知らないであろうもの,とバランスをとりながら出題した。

[例]
  Ichiro Suzuki is a great professional baseball player. He was born on ( あ ) 22nd, 1973 in (   ) Prefecture. After graduating from Aikodai Meiden High School, he joined Orix Blue Wave, which is now named Orix ( い ). While playing in Japan, he became the annual leading hitter of Pacific League ( う ) times. Then in (   ) he signed with the Seattle Mariners as the third Japanese player of the team, following ( え )(   ), who signed in 1993, and Kazuhiro Sasaki, who signed in 1999. That year he was chosen as the Most (   ) Player of American League. Since then he has won six successive annual (   ) gloves and has been one of the most outstanding players of the team.

[2] 「書く」活動
・グループで書く内容を決め,資料を集めてくる
・グループで話し合い,書く内容をまとめる
・分担しながら英文を書き,一つにまとめる

 今回は有名人の説明というテーマで,以下のようなワークシートに作文をさせた。誰のことについて述べられたものかを問うクイズにできるよう,すべて “He”, “She”, “They” のいずれかで書き出すように指示した([3] の後の生徒作文例参照)。

[ワークシート]
Members of the group                  

          (本文スペース,15行)                   

          The ( person / people ) we’ve mentioned above

                       ( is / are )   (あ)   .

[3] 「読む」活動
・教師は [2] で生徒が書いた作文の文法,スペルの誤りを訂正し,人数分印刷する。
[答えとなる部分{上例では(あ)の部分} は消す]
・生徒は教師の音読に合わせて文章を追い,内容を理解する
・グループで話し合い,答えを考える
・各グループの答えを板書し,正答数を競う

 以下に生徒の作文例を紹介する。ここに紹介したものは7グループのうち最も短いものである。生徒の書いた原文が分かるよう,誤りを訂正せず,そのまま掲載した(下線と記号は除く)。歴史上の有名人物から小説家,スポーツ選手など,様々な分野の著名人についての説明文が集まった。各グループとも精力的に活動を行ったが,文法・語法上の誤りはかなり多くあった。

[例]
 He was born in India in 1869. He majored in law (ア) at the college of England. Later, he began to (イ) campaign against the unfair society in South Africa. In 1914, he went back to India, and he appealed, “No violence.” He (ウ) struggled the independence of India. (エ) After he died, he has been called “Mahatoma” the great spirit.

 
3.実践結果

(1)目的を持った「読み」「書き」
 第1段階,第3段階の「読み」では,クイズ形式になっており,また競争することにより,情報を「すばやく」「知りたい」,と意図を持って活動に取り組めた。また「へえ〜」と言わせるような豆知識を入れることにより,知的好奇心を持ちながら読むことができた。第2段階の「書き」では,周囲が知らないと考えられることを伝えてあげたい,または問うてみたいという意図を持って書くことができた。また「書く」際のこの思いが今度は「読み手」に伝わり,第3段階での「読み」をより意義深いものにしていると考える。

(2)グループ活動の効果
 グループ内に英語の得意な生徒もいれば苦手な生徒もいるが,協力しながら活動をすることができた。またたとえ英語が苦手であっても,スポーツの好きな生徒もいれば音楽の好きな生徒もおり,それぞれが自分の得意分野を生かしながら積極的に活動に参加できた。

(3)教師の発見と生徒へのフィードバック
 生徒が自由に書いているせいであろうが,普段のライティングの授業ではなかなか見つけられないような誤りを数多く発見できた。上記例文の下線部(ア)のように,いいかげんな冠詞の使い方や “of” の連発が多く見られた。また自動詞と他動詞の区別がついていなかったり,動詞の用法を理解しないまま使っていることも多く,上の例のように下線部(イ)では正しく使えているのに下線部(ウ)では使えていない,というような本質的な理解ができていない例も見られた。また下線部(エ)のように,現在完了形の文中での “after” など,空所補充や多肢選択の問題では間違えないような誤りも多く見られた。

 
4.おわりに

 すでに述べたように,オーラル・コミュニケーションの授業に比べ,リーディングやライティングの授業ではなかなか現実の「書き手」や「読み手」を意識した活動をする機会は少ない。むろん「読む」ための知識や「書く」ための知識も必要であろうし,教師一人あたりの生徒の人数を考えると,講義形式の授業も必要であろう。しかし現実に即した書くべき状況を設定されなければ,真に「書く」体験は得られないし,「読むこと」にも同様のことは言えよう。ここで紹介したのはほんの一例であるが,今後も生徒が目的を持って「読み」「書き」できる活動を取り入れたいと考える。