英語授業実践記録
「論理的な英文を書く」ための3年間の取り組み
−3年間のティームティーチングを通じたライティング活動−
青森県立三本木高等学校
志村康秀
 
1.はじめに

 「論理的な英文を書く指導」の取り組みをしようとした時、次の2つが大きな動機となった。1つ目に、「日本人は読み書きができるが、英語を話せない」とよく言われるが、「書ける=文法・和文英訳」なのではないか、という点である。2つ目は「知的な人間は知的な文章を書ける」という観点から、通じればよい英文ではなく筋の通った根拠のある文章を書けるよう3年間かけて指導して行きたいと考えた。
 特に理数科は本校では「特別進学クラス」と位置づけられており、1クラスだけ独自の取り組みもして来た。理数科で事前に行って、成功した事例を普通科に適用した場面も多かった。
 以下には3年間の流れとトピックの選定、評価の仕方、伸びた能力について述べ、最後にワークシートの一例を紹介する。

 
2.3年間の流れ

(1)  1年次は英語 I の各課を終了するたびに、自分がそれについてどう思ったかを2文程度で書く問いを定期考査で出題した。また、年度後半からはトピックを決めてティームティーチング (以下 T-T) でパラグラフライティングを始めた。書き出し、締めくくりを入れて5文以上で良しとした。

(2)  2年次はライティングの授業で、理由とサポートをつけたパラグラフライティングの指導を T-T で定期的に行った。
 英語 II においては、毎レッスン後に自分の意見を書く課題を出し、定期考査で出題した。2文程度、またはS,Vが2つ以上の分量とした。
 理数科においては毎週定期的にT-Tを行い、journal(ジャーナル)という名前で定期的にトピックを決め、書いたものの提出を義務付けた。普通科生徒は希望者を対象とし、添削指導と口頭での個別指導を行った。

(3)  3年次は基本的に2年次の継続であるが、トピックの難易度を高め、定期考査における配点も増やした。

 
3.トピックの選定と評価について

(1)  英語 I 、I I については「筆者の考えについてどう思うか」、「自分ならどうしたか」という出題が主であった。

【トピック例】
[1] What is your future job?
[2] When your brain is dead, can you give your organs to other people? Why?
[3] Chris Moon lost his lower right leg and right arm because of the landmine accident. If you were in his position, what would you do?
[4] Some languages in the world are disappearing very fast.
What do you think about that?

(2)  ライティングについては定期考査ごとを目安に身近な社会的トピックを選んだ。賛成・反対型、どう考えるかの説明型が主であった。題材は教科書以外にも英検やTOEFL、大学入試でのトピックも参考にした。
 初期は5文以上、2年次後半から理由を3つ述べることとした

【トピック例】
[1] Should students wear a school uniform?
[2] The use of cell phone at school should be banned.
[3] English should be taught in elementary schools.
[4] Shops which are open 24 hours.
[5] Should high school students learn another language instead of English?
* 理数科では考査以外でも「明日死ぬとしたら一番したいこと」「魔法が使えたら何をするか」「年金制度」「死刑制度の是非」などの出題を行った。

(3) 評価は最初100点中8点〜10点の配点とし、形式が整っていることを重視した。後半からは内容の論理性、オリジナリティも評価の対象とし、20点の配点とした。

 
4.指導の留意点

(1) この「論理的な文章を書く」指導は3名の JTE と ALT とのチームで行ったので、4人の連携を重視した。トピックの大半は T-T の頻度の多い理数科でやってみて、生徒の反応が良かったものを選び、共通のワークシートと指導案を作成して普通科6クラスで実践した。
ワークシート例

(2)考査に出題するトピックは必ず事前に提示し、T-Tの授業ではトピックについての賛成・反対、良い点・悪い点を生徒の意見を元に書き出していき、生徒が自分の文章をまとめられるよう援助した。
 ワークシートは教員の添削を受けられ、定期試験に必ず出題した。定期試験に出題し、評価されることは生徒の良い英文を書こうとする動機付けとなった。

(3) 1年次後半はパラグラフとして必ず書き出しと締めくくりの文がある5文以上が条件であった。学年が上がるに従って、理由が3つ以上とそのサポート文があることを必須とした。counterargument (反論と論拠) は3つの理由のうちの1つと数えた。

 
5.指導の効果について

(1) 試験での配点は1〜2年次100点中7点〜10点程度と多いものではなかったが、継続的に出題することで考える習慣、英語で表現する態度が身についてきたとの感触を得た。事前の指示・添削を受けられることもあり、何度も通う生徒、得点源とする生徒達も多かった。

(2) 理数科では試験での出題の有無に関わらず Journal を書くことを必須にしたが、普通科の有志も2年次で増え続けた。トピックは ALT と相談して決め、添削をした。課題以外にも自発的に取り組んでノート1冊、2冊と書いた生徒は例外なく学力向上を示した(偏差値70〜80後半、難関大模試での高得点など)。そのような生徒の感想は「苦手に思っていた英語が分かるようになってきた」「人の書いた文章を客観的に読めるようになった」「読みながら使おうと思って教科書などを読むようになった」などである。

(3) 模擬試験の英語の項目別評価では「英作・表現」の箇所が学年全体の数字として明らかな伸びを見せ、定着した。特に定期的に行った理数科では「文法・英作・表現」部分は3年次の模試においても主要な得点源となっている。
 
6.しめくくりに

 「コミュニケーション」というと、多くの生徒は特に口頭でのやりとりを思い浮かべがちである。しかし、論理的な文章を書いて相手に伝えるのは同じように大切なコミュニケーション活動であり、将来的な需要も、ますます高まると予想できる。また日本語との文化や発想の違いを学ぶ上でも、学んできたことは母国語を大切にすることにつながると考える。
 自分が一番に目指したのは「習う英語」だけではなく「発信する英語」である。3年間を通じて強く感じたことは、生徒には「表現・発信したい」欲求がある、ということである。また、それが正当に評価されればモティべーションはさらに上がり、好循環を生み出すということである。
 3年間を見通した計画と職員間の共通理解とティームワークは必須である。「共通の意識を持ったトピックの選定と事前打ち合わせ」が80%を決めると言っても過言ではない。