英語授業実践記録
新しい英語教育の試み
−普通の教育環境の、平均的などの学校でも実施できる教育実践を考える−
岐阜県立長良高等学校
石神政幸
 
1.はじめに

 本校の英語教育は、従来の訳読・文法中心の授業を行ってきましたが、一昨年度(平成16年度)より大規模な授業改善を行い、初期の段階ではいわゆる文法副読本の授業や市販の単語帳、文法参考書の使用はやめ、教科書を中心にして、音読指導やリスニング指導に重点を置いた授業に取り組んでいます。

 
2.英語授業改善への取り組み

a. 目標『音読指導およびリスニング指導を通して英語の基礎力を身につける』
b. 3年間の重点目標
 1年生 音読・リスニング指導に重点を置く。
 2年生 音読・リーディング指導(読解力指導)に重点を置く。
 3年生 大学入試に対応できる能力の育成に重点を置く。
c. 1年生(360名)からスタート、3カ年で全学年を対象とする。
d. 1年生では、英語 I (3時間)、オーラルコミュニケーション I (2時間)、2年生では、英語 II (4時間)、ライティング(文系3時間、理系2時間)の標準的な教育課程の中で実施する。
e. 英語 I について
(ア) 従来の訳読・文法中心の授業ではなく、音読指導やリスニング指導に重点を置いた授業を展開する。
(イ) 毎時間、リプロダクション、サイトトランスレーションなどを使って授業を行う。
(ウ) スラッシュリーディング(フレーズリーディング)と音声を併用して内容把握を行う。
(エ) シャドーイングを中心とした音声指導に重点を置く。
(オ) 音読は英語話者になりきって(感情を込めて)行う。
f. オーラルコミュニケーション I について
(ア) 前期(9月まで)は中学校の教科書を用いる。
(イ) 従来の訳読・文法中心の授業ではなく、音読指導やリスニング指導に重点を置いた授業を展開する。
(ウ) 文法については、本文の中で徹底を図る。
(エ) 英語話者の「意識の流れ」に注目させる指導を行う。
(オ) フリートーキングで、自己表現する時間を設定し、積極的に英語を話そうとする力を育成する。
(カ) ALT と連携を図り、既習事項を実践できる場を設ける。
g. 英語 II について
(ア) 英語 I と同じ授業形態をとる。
(イ) 授業最初5分間、多読を行う。
(ウ) 「スラッシュリーディング」のプリントの中で精読力も強化する。
h. ライティングについて
(ア) 教科書で基本的な文法を扱う。(週1時間)
(イ) ティームティーチングで、簡単なテーマの英作文を書く。(週1時間)
(ウ) リスニング練習も行う。(文系週1時間)
(エ) スピーチコンテストの原稿を作成し、練習を行う。
i. 定期考査などで、音声を中心とした出題方法を考える。
j. レシテーションコンテスト(1年生)
キング牧師やチャップリンなどの演説を暗誦する。
k. スピーチコンテスト(2年生) 
ライティングの授業の一環として、スピーチコンテストを行う。
 
3.具体的実践

◎英語 I (週3時間)
 英語 I では1年間1つの教科書を使い、1つの Part を2時間かけて行います。
 英語 I では「シャドーイング」「リプロダクション」「サイトトランスレーション」などの方法を使って、1時間の授業の中で1つの Part を8〜10回読ませています。「シャドーイング」では、内容を理解しながらや、頭の中に本文のイメージ(情景)を思い浮かべながらなど活動の目標を明確にするようにしています。「リプロダクション」(と呼べるかどうか分かりませんが)は、ペアで行い、1人が「スラッシュリーディング」のプリントを見ながら、フレーズごとに読んでいき、もう1人がプリントを見ないで、相手の音声だけをヒントに、もう一度自分で再構築して言ってみるというものです。最初はオウム返しに近いのですが、慣れるにしたがってフレーズを長くしていきます。「サイトトランスレーション」では、同じくペアで行い、一方がフレーズごとに日本語を読み、もう一方が何も見ずにそれを英語にしていくというものです。この活動ではどうしても日本語を介在させざるを得ませんが、2年生になると、1人が文の出だしの語句だけを言って、もう1人がそれに続けて文を言っていくという活動になっていき、できるだけ日本語を切り離すようにしています。
 宿題では、生徒全員に教科書の CD を買わせてあるので、その日の授業で行った Part を聴きながら、その本文を3回ノートに写すという活動になります。
 二時間目では、文法説明と音読が中心となります。その Part で大切な表現や重要な文法事項を簡単に説明します。

◎オーラルコミュニケーション I (週2時間)
 OC I では、前期は中学校の教科書を、後期は CD 付き長文読解テキストを用います。週2時間中1時間は基礎の確認と高校レベルの文法事項を学ぶ時間(インプット)、もう1時間は ALT の先生との授業で、一時間目に習った文法事項を実際に使ってみる時間(アウトプット)になります。
●一時間目
 中学校の教科書を用いるのは、基礎力を徹底して固めようという意図と、音読をするのに格好の教材だからです。中学レベルならば本文の内容を確認する必要はありませんし、家庭での音読活動がスムーズに進むからです。夏休みまでに「1000回音読」を目指します。
 後期には CD 付きの長文のテキストを用いて、本文の内容に関する高校レベルの文法事項を教えていきます。当然本文の音読もしていきます。後期では家庭での音読に加え、英語 I と同様に本文を CD を聴きながら3回写すことも行っていきます。
●二時間目
 ALT とのティームティーチングを行います。前期では、事前に課題(テーマ)を渡し、生徒は宿題としてそのテーマに対する意見を英語で書いて、カセットテープに録音してきます。その際、一時間目で習った文法事項をできるだけたくさん使うように指導します。そしてそれを元に授業でペアで会話をします。後期では、あるテーマに対し、賛成反対の意見をグループでブレインストーミングした後、ペアでディスカッションをし、それをカセットテープに録って、最後にディスカッションの内容をディクテートします。

◎英語 II (週4時間)
 授業内容は英語 I とほぼ同じです。CD を聴きながらの本文3回写しも行っていきます。
 授業のはじめに5分間の多読を行います。オックスフォードの“The Piano”を全員で読んだ後、図書館に設置したペンギンやケンブリッジなどの多読用テキストを各自借りてきて自分のペースで読みます。辞書を使わずに、英文を前から理解していきます。10月(後期)からは市販の5分間速読プリントを毎回使用します。まず最初は、音声だけを聞いて問題を解き、その後本文を読んでもう一度問題を解きます。

◎ライティング(文系週3時間、理系週2時間 3年次との継続履修)
 1時間はライティングの教科書を用いて、基本的な文法事項を確認します。
 もう1時間は ALT とのティームティーチングを行います。1年生でのオーラルコミュニケーションの授業を発展させた形式で、毎回さまざまなテーマについてグループ、ペアでブレインストーミングを行いながら、各自英作文を書いていきます。ALT がそれを添削します。6月ぐらいから自分でテーマを決め、スピーチの原稿を書き、推敲を重ねながら、11月の総合学習の時間に行われるスピーチコンテストで発表します。

 
4.授業改善の成果
(英語運用能力テストACEの結果より)

 音読・リスニング指導に重点を置いた1年生では、リスニングやリーディング、文法において高い伸び率を示しています。リーディング指導(読解力指導)に重点を置いた2年生では、リーディングがさらに伸びています。語彙や文法にはそれほど力を入れていないのですが、音読をすることで、語彙や文法の力も伸びていることも示しています。

 
5.最後に

 今回の我々の授業改善は、実用的な英語運用能力の養成を目指すと同時に、大学入試にも対応できる土台の育成を目指しています。成果を分析し、改良していく点もまだまだたくさんありますが、今年度の1年生(平成17年度入学生)は、さらに大きな成果を出しています。普通の教育環境の、平均的などの学校でも実施できる教育実践を考え、音声を通じて基礎・基本を定着させることを目指して、今後もこの授業改善を続けていきたいと思っています。詳しくは 本校のHP をご覧下さい。