英語授業実践記録
和光国際高校における多読プログラムの取り組み
埼玉県立和光国際高等学校
郷野昌子
 
1 はじめに

<和光国際高校、英語科の概要>
 和光国際高校は埼玉県で初めて開校当初より外国語科が設置された高校であり、今年創立19年目である。外国語科2クラス、普通科4クラス、情報処理科2クラスが併設され、女子が6割から7割を占める。外国語科に入学してくる生徒たちの英語学習に対する意欲は高く、普通科、情報処理科にもかなり高い英語力を持つ者が入学し、全学科通じて学習に対する取り組みは真面目である。
 本校の英語科教諭は13名。開校当初より英語教育に対する方針を立て、各科目のシラバス作りをし、年度末には各科目の実践報告がされている。「日本人のみの授業でも出来るだけ多く英語を使い、英文和訳を中心とした英文読解ではない英文解釈」「英語を使える力を養わせるため、英語による卒業論文の作成、スピーチ、ディスカッション、ディベートなどの発表活動」を行ってきた。開校当初に築かれた基本方針は現在まで大きく変わることはなく、教員の英語教育に対する熱意、科内での協力体制は開校当初より引き継がれている。平成16年度にはスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)の指定(3年間の研究指定)を受け、今まで実践してきたことをさらに発展させた形で研究を行っている。

 
2 旧多読プログラムから現行多読プログラムへ

 本校では、生徒が授業以外でも英語により多く接することを目的とし、多読プログラムを実施してきた。以下、旧多読プログラムと現行のものの概要を記す。

<旧多読プログラムの概要>
開校当初より実施。
入学直前の春休みから3年生4月まで、1〜3年生対象。
入学前の春休みの課題として全学科の生徒に1冊与え、その後 Oxford Bookworms より学科ごとに年間8〜10冊を生徒全員に与える。各学科、難易度、冊数を変える。時期を決め、読ませた後、課題テストを授業中に実施。(3年4月最終テスト)
課題テストの結果を成績に入れる。
リーディングマラソンと称し、期間限定で実施。(希望者が参加)本の難易度、ページ数(10ページ1キロ)などでキロ数を決め、42.195キロの完走を目指す。完走者は表彰し、賞品を与える。
問題点
課題テスト作り、採点の負担、煩雑さ。
生徒の力の差。(読むスピード、レベルなど)
テストのためのリーディング?になってしまっている。

<現行多読プログラムの概要>
平成12年度より開始。
入学直前の春休みから2年生終了時まで、1〜2年生対象。
リーディングマラソンを吸収した。
エジンバラ大学長期研修中の本校英語科教員からの提案によるEPER (Edinburgh Project on Extensive Reading)のガイドラインに基づくプレースメントテスト(*1)を実施。
判断レベルにより、スタートのレベル(*2)を決定。
その後、各教室設置のクラスライブラリー・ボックス(*3)または、外国語科準備室前設置のライブラリー・ボックス(*3)(レベルX〜C)から各自が好きな本を選んで読む。読んだ後、記録をノート(*4)につける。自分のレベルの本を10冊読み終えた時点で、生徒は教員の確認を得て上のレベルに進むことができる。
成績には点数化はしないが、反映させる。
(ノートを提出したかどうか、読んだ冊数を点検。平常点に入れている)
参加費として1年次、2年次の年度当初に1500円を徴収し、本の購入等にあてている。

上記*1〜*4に関して
*1 EPERのレベル判断テストについて 
英文中に当てはまる語句を入れる形のテスト。学年の最初(4月)に実施した後、後期の初め(10月)に実施。
*2 EPERに基づくレベル
レベルは最高のX からA, B, C, D, E, F, G、 一番下が RCの9レベルあり。
RC=Reading Card 絵が多いカードのような本。
Level
Average
vocabulary
(headwords)
Average length
(words)
G
300
700
F
500
2000
E
800
4000
D
1200
8000
C
1600
12000
B
1900
15000
A
2200
24000
X
3000
30000

*3 ライブラリー・ボックスについて
クラスに持ち運びができるプラスチック製ボックスに本を常備。
Graded readers Oxford の他、Penguin(Longman), Heinemann, Cambridge などの本も取り入れる。
各クラスには学科によってレベル、冊数が異なるが、100冊〜120冊常備。
外国語科準備室前にはX〜C各レベル20冊、計160冊を常備。
生徒は貸し出し簿に借りた本を記録する。
EPERのレベルに基づき各出版社の本をレベルに分けた一覧リストあり。
このリストに基づき和光国際高校独自のリストを作成。

*4 記録ノートについて
年度当初に生徒へ配布(B5判半分のサイズのもの)。
各本に挟まれているワークカードの問題の解答、感想を英語で書く。
各担当が随時回収、目を通し返却する。

<現行プログラムの実態>
 新プログラムが開始されて5年が経過するが、現在は直接の担当ではないため、各学年の担当にアンケートを実施してみた。

学年ではどのように取り組ませているか?
学年で統一している。1.5ヶ月に2冊のペース。ノートを定期的に集め点検。
記録ノートの提出日を設定し、期間を区切って読ませる。
生徒の様子
1年次は意欲があり積極的に参加をしているが、2年次では全く読んでいない生徒も見られる。
積極的に読んでいる生徒は限られている状況か?
多読プログラム結果の把握は?またその結果を生徒に発表しているか?
結果をなかなか集約できない状況。各クラスの担当者が把握している程度。
時折、クラスに結果を発表している。
生徒の感想(このプログラムで本を多く読んだ生徒などの感想)
2年間で30冊を読み自信がついた生徒がいる。(普通科)センター試験第6問を5分で読むことが出来たとのこと。
多読プログラムの良い点
生徒が自分で好きな本を読める。
テストのためではなく、各自のレベルにあった本を、自分のペースで読むことができる。
多読プログラムの問題点、改善すべき点
レベルで分けなくても、自分で選ばせてもよいのでは?
好きなジャンルの本が必ずしも自分のレベルで常にあるわけではない。
クラスのライブラリー・ボックスの本が不足。ノートを提出する期限が近づくと本が不足する。
教科書が理解出来ない生徒に対するケアをどのようにしていくのか?
生徒の英語力、読書習慣がないと続かない。
書籍の準備、管理に莫大な時間がかかる。(レベルシール貼り、ワークシート作り、ラミネート加工など)
生徒への働きかけ、評価がなければなかなか続いていかない。
ノートの点検に時間がかかる。
生徒の個々のレベルのチェックや結果などを上手く伝えないと、ただやらせるだけになってしまう。

 全員の教員にアンケートを実施したわけではないが、改善点、問題点が多く書かれていたことに驚いた。現行の多読プログラムは科内で時間をかけて話し合われ、実施に踏み切ったものであるが、年度半ばなどには実施状況を把握し、生徒の実態にあった進め方について常に考えていく必要があると実感した。現在は授業外での取り組みであるが、授業の中に取り込んで読書習慣の定着をはかることも1つの方法であろう。
 
3 おわりに

 「読むこと」は英語学習に限らず、学ぶことの基本であると考える。生徒たちをどのようにやる気にさせるかは、何を行っても教師側の仕掛けによると信じている。和光国際高校での新・旧の多読プログラムの概要、実態を紹介させていただいたが、各学校で、生徒の英語学習環境を整える際の参考になれば幸いである。