英語授業実践記録
ITを活用した英語教育
― Communicative Writing Competenceを育てる指導の工夫 ―
鹿児島県立鹿児島中央高等学校
田島洋輝
 
1 英語教育に
IT(Information Technology)
が必要な理由とITで変わる英語教育

アメリカ,テキサス州のある高校の図書館
(1)国際化・情報化という社会の変化
 アメリカやカナダに比べて3年は遅れているとされる日本の IT 教育。危機感を持った取り組みが求められている。国際化・情報化に対応した実践的コミュニケーション能力や情報活用能力がますます求めれるようになっており,まさに,The new model of education が始まっている。

(2)「IT・教育の情報化」は国策
 政府は IT 戦略本部を設け,“e-Japan 戦略”と銘打ち,日本を世界最先端の IT 国家にする方針である。そして,2005年までにすべての教室にコンピュータと液晶プロジェクタを導入し,インターネットに高速接続できる環境を実現する計画(教育の情報化プロジェクト)である。新高等学校学習指導要領の外国語編では,「言語使用場面の例」として,「電子メールや情報通信ネットワークによるコミュニケーション場面」があげられ,LL による音声学習のみならず,コンピュータによる個別学習,インターネットなどを使った英文情報の受信と発信を組み合わせた英語教育の重要性が示されている。そして,IT は,21世紀の学校教育において不可欠なものになるのは明らかであり,これからの英語教育の新しい形は,IT を利用する教育になる。
 IT を活用することで,[1] 伝統的な教師主導型から生徒中心型になりインタラクティブな活動を通して communicative competence を高められる。[2] 英語学習に対するモティベーションが高まり,英語が不得意な生徒でも,生き生きと学ぶようになる。[3] 速読力(例えば,スキミングやスキャニング),語彙力,全体としての英語力を高められる。
 生き生きとした教材と国際的なコミュニケーションの場が提供され,従来の知識偏重の教育から,「実践的なコミュニケーション能力」や「情報活用能力の育成」を目指した英語教育の実現に向けて限りない可能性が広がる。

 
2 ITを活用した
Communicative Writing Skills
を高めるための指導事例

 ネイティブスピーカーとのコミュニケーションは,生徒達に本来のコミュニケーションの目的と本物の内容や動機を与えてくれる。

(1)Eメールの利用(E-mail)

(a) メール交換(Key-pals)
キーパル(コンピュータのキーボードを使用したペンパル)とのEメール交換を通して,生徒達は本来の目的で英語を使えるだけではなく,世界中に友達ができ,新しい文化を学んだりいろいろなトピックについて質問したり,国際的なディスカッションができる。モティベーションが高まり,英文を書く態度は2ヶ月でドラマティックに変わる。

(b)「Eメールプロジェクト」の実践( 共同研究プロジェクト)

授業実践の構想図

 生徒達が関心のある国のほぼ同年齢の生徒達と,インターネット上で e-mail を用いて互いに日常生活,学校生活,行事等の出来事の情報を交換するのであるが,情報の共有だけではなく,その中で知り得た情報をもとに関心のあるテーマを設定し,ホームページとして公開・共有するものである。インターネット(e-mail を含む)を使うことによって,コミュニケーション本来の意味のある本当の目的をもって,より意欲的にライティング活動に取り組め,共同作業を通して Communicative writing competence も高まる。
 交流相手の見つけ方が大変であるが,プロジェクトでどのような成果を生みだしたいのかを考え,交流に熱心な先生を捜すことが大事である。キーパルの見つけ方としては,次のような方法がある。

[1] WWW を通して Dave's ESL Cafe
Web66
ヤフーなど。
[2] メーリングリストを利用して(TESL-L
[3] ALT,県及び市の国際交流課や国際交流員を通して
[4] 姉妹都市の教育委員会に交流をお願いし学校を推薦してもらう等。

 その中で,私が最も効果的だと思ったのは,Dave's ESL Cafe の "Teachers' e-mail" のコーナーを利用することであった。熱意のありそうな先生にメールを送って,交流の依頼をした。そして,その先生と8〜9回メール交換し意思疎通した後,生徒の最初のメールを送ることができた。(実践例については紙面の都合で述べられないので,最後に紹介するHPアドレスにアクセスしてください。)

(2)WWW を利用した活動例

(a) 情報検索と発表 (Summarizing a Topic from a Web Page)
 関心のあるテーマ・物語に基づいて,インターネットを利用して情報を検索し,そのサマリーを作らせる活動である。

Stage 1 学習の案内のリンクを通して生徒にテーマを与える。または,自分に関心のあるテーマ・物語を考えさせる。
Stage 2 生徒にインターネットを利用させて,関心のあるテーマ・物語についてのウェブサイトを探し,必要な情報を収集させる。一般的なサーチエンジンは次のとおりである。
http://www.google.comhttp://www.yahoo.com検索した中から,一つのページを選ばせる。
Stage 3 ワープロを使って,ワークシートを利用してサマリーを英文でレポートにまとめさせる。レポートには画像等を含めてもよい。
Stage 4 グループで意見交換させた後,いいレポートをみんなで読み,共有する。または,そのサマリーをクラスの前で発表させたり,生徒のリンクのページにのせてもよい。

(b) 課題解決学習 (Research on a theme)
 調査のためにウェブサイトで利用できるトピックの数は無限である。グループでテーマを決め,または,質問事項に基づいて,インターネットを利用して調査し,それをレポートにまとめる活動である。

Stage 1 生徒達はペアかグループを作り,何について調べるかを話し合う。(または,各生徒調べる質問を一つずつ書かせて回収し,その質問事項の書かれた用紙をランダムにし生徒に配布する。)
Stage 2 テーマまたは質問事項についてインターネットで調査し,ネットサーフィンしながら英文を読ませ,調査させる。
Stage 3 調査の結果をワープロを使ってレポートにまとめ,プリントアウトする。同時に,ワークシートを LAN で教師用のフォルダに送らせる。レポートには画像等を含めてもよい。クラスの前で発表させる。クラスの掲示板に貼ってもよい。

(c) バーチャルツアー (Virtual tour)
 インターネット上では,実際にはあまり行けそうにない有名な場所や博物館へ,バーチャルツアーをすることができる。そしてそれをレポートにまとめさせる。たとえば,ホワイトハウススミソニアン博物館グランドキャニオンナイアガラの滝ホワイトハウス for kids

(d) 学習者用サイトの利用 (Using sites specifically designed for students)
 生徒用に作られたウェブサイトを使って様々な活動をさせることもできる。たとえば,"Dave's ESL Cafe" は,教師にはもちろんのこと,EFL / ESL の生徒にとって世界的に最も有益なサイトのひとつである。アメリカの大きな TESOL の大会でも取り上げられ絶賛されている。このウェブサイトはカリフォルニア州立大学ノースリッジ校の Dave Sperling 先生によって開設されているが,ものすごい情報量だけではなく,世界中の人々とコミュニケーションをすることができ,楽しみながら英語力を高めることができる。ブラジルのあるファンは,「テクノロジーを利用してはいるが,感情や人間的なふれあいを伝えることができ,少しも機械的な冷たさがない」と,コメントしている。30近くのセクションを持っているが,その活用の工夫次第では,英語学習において限りない可能性が広がる。中でも,「Discussion Forums」 は世界中の教師と生徒の誰でもが,世界中の誰でもと容易に様々なトピックで話し合い,英語の指導・学習方法について,アイディアや示唆を共有できる。
 
3 おわりに

 実際,インターネットを活用することによって,生徒は本物の英語で計り知れない情報を得ることができるだけでなく,実社会とインタラクティブなコミュニケーション活動ができる。つまり,インターネットは,コミュニケーションをその主要なゴールとしている言語習得に対して非常にふさわしい道具だといえる。
 「まだメールは来ていませんか。」と聞きに来る生徒がいたり,詰め込み式の授業で最も退屈そうにしていた生徒が,真っ先に e-mail 交流を希望したりしたことを考えると,IT の利用は,少なからず学習意欲を喚起する。国際化・情報化に対応した実践的コミュニケーション能力を図る英語教育を目指して,同時にグローバルリテラシーを備えた生徒がひとりでも多く育つことを期待している。そして,「使える英語力」「世界に通用する英語力」を育成するための指導を目指し,生徒にコミュニケーションの喜びを与えたい。