教育改革のとりくみ 目次

夢を持ち,夢を語り,夢に向かって実現しようとする子どもの育成
〜「ふるさと八女ふくしま」をつくる子どもの育成を通して〜

福岡県 八女市立福島小学校

<はじめに>

 本校は平成19年11月15日(木),16日(金)の2日間にわたり開催される「日本生活科・総合的な学習の時間研究協議会全国大会福岡大会in筑後」の会場校であり,併せて,平成19年度,20年度の2か年間,国立教育政策研究所教育課程研究センターの指定事業を受け,生活科・総合的な学習の時間についてその教育課程の工夫改善についての研究を進めている。

<校区について>

<福島小学校正面>
  開校137年を迎えた本校は,自然豊かな八女市の中心部に位置している。

 校区は,江戸時代から近世において,八女の物資の集散地として町人の町として栄えた。そのため,現在も白壁づくりの町屋が立ち並び,八女福島燈籠人形(国指定重要無形民俗文化財)といった伝統文化や福島仏壇,提灯等の伝統工芸も全国的に有名である。これらの学習環境を教育活動に取り入れ,生活科・総合的な学習の時間(ふくしまっ子タイム)に力を入れて取り組んでいる。

<国指定重要無形民俗文化財・福島燈籠人形>
 折しも,平成18年12月に新しい教育基本法が制定され,その第1章 第2条「教育の目標」の5項に「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」という内容が明記された。本校では歴史と伝統に支えられた「ふるさと八女ふくしま」への愛着をしっかりと持ち,よき市民として成長していく事が出来るよう,郷土に伝わる「福島の伝統文化・歴史,共存・共生,自然・環境」を取り上げ「ふるさと八女ふくしま」を滔々と語る事が出来る子どもの育成を目指して「八女ふくしまプラン」を作成し,実践してきた。



こんな学校づくりに取り組みます

学校教育目標
夢を持ち,夢を語り,夢を実現しようとする 知・徳・体 心身ともに調和のとれた福島の子の育成

<めざす姿>
○進んで学ぶ子 ○ともに手を取り合える子 ○たくましい子 (人間力)
○夢がふくらむ 楽しい学校 (学校力)
○親しまれ 敬われ 信頼される教師 (教師力)

重点目標
「八女ふくしま」を中心にすえた生活科・総合的な学習の時間の取り組みの充実による問題解決力と表現力の育成。
特別支援教育の充実による豊かな心の育成。
「安全確保」と「あいさつ運動」の取り組み


「ふるさと八女ふくしま」をつくる子どもとは

 八女福島にある「ひと・もの・こと」に出会い,芽生えた自分たちの問題の解決のために,繰り返し働きかけ,心を躍動させながら,対象へのかかわりを深め,『ふるさと八女ふくしま』への愛着と気付き(生活科)や見識(総合的な学習の時間)をもって,よりよく生きていこうとする子ども。


そのために次のような特色ある教育課程を編成します




八女ふくしまプランについて

☆ 八女ふくしまプランとは

 八女福島校区を中心として身近な素材の学習内容を「伝統文化・歴史,共存・共栄,環境・自然」の3つの領域(スコープ)で選択し,各学年の発達段階に応じて系統(シークエンス)的に組織した内容構成表と年間カリキュラム表,単元計画表を合わせ持った6か年間を見通した本校ならではの生活科・総合的な時間のカリキュラムである。

☆ 八女ふくしまプランの作成の手順について

 先の中教審答申で総合に関しては,必ずしも目標,内容が明確になっていないと指摘された。本校でも各学年で総合の学習材となる素材を取り合い,配列しただけのカリキュラムになっていた。しかし,それでは学習のねらいや内容が不明確になり,いわゆる「活動あって学びなし」になっていた。

 また,内容の系統性がないために,学年間での逆転現象が起こったり,教科・領域との関連が不明確になるという問題がおきたりしていた。

 そこで,まず本校独自の生活科・総合的な学習の時間をつないだ6年間の内容構成表を以下の手順でつくることにした。

1 内容構成表の作成
学校の特性や福島の地域性を考えて3つの領域(スコープ)を設定する。(伝統文化・歴史,共存・共栄,環境・自然
発達段階を考えて系統(シークエンス)立てた内容を作成する。(生活科:気付きと愛着,総合的な学習の時間:見識と愛着)

2 年間カリキュラム表
の作成
内容構成表をもとにして3つの領域と各学年の内容を持った単元名を考え,各学年に年間を通して配列する。

3 教材化と単元の構成
を図る
学習材を生活性,本質性,活動性で教材化を図る。
ゴールイメージを持ち,単元目標を決める。
導入の工夫,子どもの意識に沿って学習活動の流れを構成する。


学びの質を高めるために

ひとと学びたいムの基本形>
 気付きの質(生活科)や子どもの見識(総合的な学習の時間)を高めていくために意図的,計画的に学習の各段階で「ひとと学びたいム」を位置づけて単元の構成を工夫した。

 また,学び合いのパターンとして次のような場の設定を考えた。

ひとと学びたいムの場の例>



具体的授業実践について(平成18年度実践より)

<実践事例 第5学年 総合的な学習の時間> 単元名「燈籠人形を守るぞ!PR隊出動!」

具体的な活動の流れ

写真1 ひとと学びたいム1の様子
つかむ段階

 燈籠人形の存続(後継者不足)の問題点に気づき,自分にもできることはないかと,課題をつかむ。
いかす段階
 民俗歴史資料館で燈籠人形の舞台を背に「燈籠人形PR隊」が学習して思った事,分かったことをPR活動。
 大きく新聞に取り上げられました。

<実践事例 第6学年 総合的な学習の時間>
単元名「福島の未来を拓く子ども議会を開こう〜ふくしまのまちづくりプロジェクト〜」

具体的な活動の流れ



新聞記事2 新聞記事3


具体的授業実践2について(平成19年度実践より)




いかす段階
ひとと学びたいム4
できあがったパンフレット
伝統工芸館においていただく
伝統を守り続けていくためには,自分たちにもできることが分かり,成就感を味わい,これから自分にできることを見つけていきたいなどの展望をもった。


成果と課題

1 成果

1年生から6年生まで,一貫した内容でのカリキュラムが出来たことで学びの広がりと深まりが系統的に明らかにする事が出来た。(八女福島プラン)
学年の壁を越えたカリキュラムを作る事が出来た。(5年2学期〜6年1学期へ)
単元の各段階の必要なポイントに適切に,意図的・計画的に「ひとと学びたいム」を位置づけた授業を展開し,「ふるさと八女ふくしま」を愛する子どもの育成を図る事がでた。
ふるさとを素材とした学習を展開する事で子ども達が主体的に将来のまちづくりへの具体的な夢(構想)を持たせる事が出来た。

2 課題

GTと子ども,子ども相互の学び合い,対話等の活発化への取り組み等。


<おわりに>

 平成19年11月15日・16日の両日で「生活科・総合的な学習の時間全国大会 福岡大会in筑後」が久留米市(15日・木)とここ福島小学校(16日・金)を会場として行われます。当日は,子どもたちが,「ひと」と生き生きと語り,学び合い,高め合う姿をご参観ください。そして,今後の我が校へのアドバイス等をお願い致します。
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つかむ段階 ひとと学びたいム@でのゲストティーチャー 国語科で学んだ「ユニバーサルデザイン」の視点でまちを調査し,グループでまちの改善計画をまとめ第一回子どもも議会を開く。 ためす段階 ひとと学びたいムA まちづくりのことを行政や関係団体に積極的に教えてもらったり,インターネットで情報収集をしたりなど活発に学習活動を行う。 ポスターセッションで調査内容の突き合わせ。 まちの活性化へ提言活動。視点は「必要性」と「有用性」,「実現性」,「効果性」,「継続性」。まちの人の意見やアドバイスで不十分さを再認識。さあ,次の調査活動へ。 たかめる段階 いかす段階 ひとと学びたいムB ひとと学びたいムC 八女市議会場を授業の場として第3回子ども議会を開催。修正したアイデアの公開の場。 子ども達が子ども議会を通して考えたアイデアを実際に実践の場に移して活動する。観光客からの励ましの手紙。 第4学年「八女ふくしま匠の技を伝えたい!」 つかむ段階 ひとと学びたいム@ 伝統工芸館でのインタビュー後,課題づくりをしている様子 伝統工芸館での対象への出会い ためす段階 ひとと学びたいムA GTや友だちにアドバイスを受け,何を伝えなければならないかをはっきりさせ,不十分な点をもっと調べなければならないという新たな課題をつかむ たかめる段階 ひとと学びたいムB GTからのアドバイスをもとに,伝統工芸を守り続ける方の思いが伝わるパンフレット,もっとそのすばらしさを伝える工夫をするという課題をつかむ