教育改革のとりくみ 目次

『笑顔いっぱい 夢いっぱい そして挑戦』がある学校づくり
〜プロジェクト制(分掌)の導入から〜

大分県 日田市立桂林小学校

戦略的経営が必要な”わけ”

 様々な教育改革が打ち出されている。教育改革はどのような内容であろうとも,最終的には学校・教師がその実現を担うことになる。学校は教育行政の一端ではあるが,末端ではない。今こそ,経営戦略をもって本校のあるべき姿,方向を教職員に具体的に示し,教職員が一体となって子どもの教育にあたらなければならない。

 そこで,本校では昨年度から子どもの活動指針として3つのスローガンを掲げ,プロジェクトチームを編成した。

= 『桂林王国』づくり =
本校の目指す『3つのスローガン』

あいさつ王国「桂林」
チャレンジャー「桂林っ子」
淡窓先生に学ぶ「桂林っ子」

校舎正面写真

 本校の教育目標の具現化のためには,将来を見据えた構想と練られた戦略の展開が不可欠である。戦略的な発想を組織に浸透させ,具体化を図るという観点からも『プロジェクト制』を取り込んだ組織体制の整備が急務である。

 学校の経営ビジョンとして「わが校のミッション(存在価値,使命)」を明らかにする必要がある。その中で教職員一人一人がどのように関わっていくか具体的な取組が求められる。

そこで,「創造と活力ある学校づくり」を教職員のモットーにする。


1.機動的な組織としての「プロジェクトチーム」の立上げ
【資料1】校務分掌(PDF形式:108KB)
平成19年度桂林小学校プロジェクト(案)(PDF形式:78KB)

 本年度より機動的な組織のもとで,校内の課題意識を一つにするため,「プロジェクトチーム」を編成した。教職員は3つのプロジェクトのいずれかのスタッフとなる校内体制を取っている。この組織改革によって教職員の間からは様々な新しい取組が生まれるようになった。各分掌等の関係など問題も残されているが,手応えを感じている。
(1)プロジェクトチームの取組
 
計算タイム
1)「Head」プロジェクト
《目標》

□自分の考えをもつことができる子

□友だちと意見交換をする中で,考えを深め共通のものにしていく主体的な学びのできる子ども

□学力調査結果を活かした学力向上     【資料3】学びの基本(PDF形式:356KB)

 ・授業研究    ・授業を支えるもの(環境)
 
2)「Heart」プロジェクト

淡窓先生の像
『立志』淡窓の教え(思想)に学び,自らの
志をもって行動できる子ども

「万善簿」の取組(Healthと連携)
「淡窓の教え」人権教育,道徳教育担当
「淡窓の道」図書担当
「敬天」(もったいない)環境担当
「淡窓の教えを生かした表現」学芸担当
 
3)「Health」プロジェクト

《目標》 基本的生活習慣の確立と運動を通しての体力向上,並びに保健・食育指導を通して地域に根ざした教育活動を推進し,児童の健全育成を図る。

防犯訓練 ふれ合い登校
(2)プロジェクトチーム編成の効果
  1)「校内の課題意識の焦点化」ができる。

 ・ プロジェクトチームを編成したことにより,本校の課題解決への組織的な取組が可能になる
 ・ チーム内での討議であるため,組織全体の活性化につながる
 ・ 幅広い視野で課題解決に向けた取組を考えることができる
 ・ 取組に緻密さ・具体性ができ,一人一人の視線を同じ方向に合わせることができる
 ・ 3つのスローガンを各プロジェクトが担当することにより全校的な広がりとなる
 ・ MS会議を定期的に行う中で,学校経営方針とチームの取組に整合性が保たれる
 ※ MS会議(マネッジメント・スタッフ会議) 管理職,プロジェクトチーフ,主任主査,養護教諭
 
2)保護者・地域との連携が重視できる。

 ・ 学校自己点検・自己評価等による児童の評価,指導の改善につなげることができる
 ・ 家庭や地域と学校が一体となった取組に発展できる
 【例】 算数科における学習シラバス 学習意識調査 生活調査 食育 等を通じて
 
3)3つのスローガン達成状況…3年計画(本年度2年次)

 ・ 横断幕の校舎への掲示 保護者,児童,地域の方々へ視覚的に訴えることができ,本校の意思表明ができる
 ・ 説明責任を明確にする必要が生じ,各チームでの主体的な情報公開につながる
 ・ 「桂林王国支援隊」 育友会,自治会の支援などを得ることができる
 
起業家教育
 
淡窓コーナー
「あいさつ王国”桂林”」
(Healthプロジェクト)
 
学校自己評価等でその期待は大きい
(全ての教育活動の基本であり,「生きる力」そのもの)
以前に比べ,挨拶ができるようになったという保護者や地域の方の意見
「チャレンジャー”桂林っ子”」
(Headプロジェクト)
 
起業家教育(経済産業省指定)
中国の小学生との交流(国際交流)
相撲大会
   
「淡窓先生に学ぶ”桂林っ子”」
(Heartプロジェクト)
 
淡窓コーナーの設置
淡窓先生没後150年記念事業
教育課程への取り込み(桂林小の伝統として)


2.今後の課題

  1 多岐にわたる分掌・委員会を整理したプロジェクトの効果的な運営
  2 合理的で無駄のない,しかも時間の余裕を生む会議の在り方への見直し
  3 桂林小ブランド化のための「桂林王国づくり」3つのスローガンとプロジェクトの取組の整理統合
  4 より機動的・戦略的,そして,組織的な取組ができるような校務分掌表の見直し
  5 プロジェクトチームの主体的な保護者・地域への情報の提供(説明責任の遂行と広報)


3.これからの取組について

 
(1)教職員の構え
 
  「一人を忘するれば,教育はその光を失う」
(2)児童の構え(活動の場づくり)
 
  ◎「桂林王国づくり(3つのスローガン)」
 
3年間で目標達成をねらう…本年度2年次
(3)学校経営上の目標…『質の高い教育の実現』
 
  1 不易と流行を明確化し,時代を超えて大切にするものを受け継ぎ,新しい時代の変化や要請,未来社会に対応する先見性ある学校教育を推進する。
  2 学校教育目標を全教育活動の場で具現化するため,「プロジェクトチーム」を中心にしながら,全教職員の共通理解を深め,学校・学年・学級経営の一体化を図る。
   
学校の経営構想と学級経営案をしっかりつなげる。
  3 「学力向上拠点形成事業推進校」として,実践に根ざした教職員研修を深化し,子ども一人ひとりを生かし伸ばす指導力の向上と指導体制の確立に努める。
   
モデルの活用を中心に,子どもの思考を深めるTT体制
算数と国語におけるTT体制
 
TT形式による授業
 
   
三層における少人数指導(補充・発展学習の充実)
  4 学級,学校がこれくらい頑張っているんだということを,子ども・保護者に知らせる。
   
達成度の数値目標を明らかにし,取組の公約を評価,公表
年4回の学校公開を実施し,保護者に公開
  5 校長として,学校の説明責任・結果責任を明確に内外に示し,開かれた運営を徹底する。
   
学校行事,総合学習等の成果などの発表会を開き,積極的に地域や保護者に公開
日常の取組や授業参観をし,その日のうちの指導
教師の自己評価を尊重し意識の高揚を図る
(コーチングによる…)
教職員研修の強化
例; (一年次…幼・保育園,二年次…中・高等学校等)


《参考文献・資料》
  天笠茂『学校経営の戦略と手法』ぎょうせい 2006
  特集「新しい時代を拓き,生きる力をはぐくむ教育と学校経営」『小学校時報』
(全国連合小学校長会編集)第一公報社 2005.4
  特集「時代や社会の変化への対応と学校経営」『小学校時報』
(全国連合小学校長会編集)第一公報社 2005.10
  天笠茂『悠』(シリーズ゙・学校経営力を高める1)ぎょうせい 2005
  特集「経営戦略の発想で見直す校内体制」『悠』ぎょうせい 2005
  特集「これからの学校経営」『指導と評価』図書文化 2005
  小島邦宏・天笠茂編『学校の組織文化を変える』ぎょうせい 2001


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