教育改革のとりくみ 目次

子どもも,教師も,保護者も,地域も,だれもがワクワクする学校づくり

東京都 港区立芝小学校

 子どもたちが楽しそうに学校に通う姿は,保護者や職員にとっても,地域の人々にとってもうれしいことである。この実現を目指し,芝小学校では,仲のよい友だちがいて,魅力的な職員がいて,通うことがワクワクするような学校づくりを進めている。

1.本校が目指す教育活動と校内体制

(1) 二人担任制・ブロック担任制等によるきめ細かな指導
 
【二人担任制による学習指導】
 本校では,平成16年度から各学級に担任と副担任を配置し,常に二人体制で指導を行っている。この二人担任制は学習指導のみならず,すべての教育活動で完全に二人の担任が子どもたちにかかわるシステムである。これは,特に初年度教育において大きな成果が認められている。

 また,2学年を1ブロックとして職員を編成したブロック担任制も合わせて導入している。低・中・高学年の各ブロックに担任と専科担当を配置し,複数の職員が連携して,TTや少人数指導,交流・合同授業や一部教科担任制の実施,生活指導や給食指導等を行っている。
 
(2) 学び・遊び・体験がたくさんある教育実践
 
【金管バンドの活動】
 体験的な活動を重視し,教育活動全体において「学び・遊び・体験がたくさんある実践」を計画的に取り入れている。

 体験学習はもとより,週に2回,ワクワクタイムと称した30分の休み時間を設定し,子どもたちが各自の興味・関心に応じた活動を行ったり,友達と思いきり遊んだりする時間を保障している。

 始業前や放課後には,4年生以上で編成している金管バンドの活動も賑やかである。
 
(3) フットワーク・ネットワーク・チームワークを生かした組織運営
   「フットワーク・ネットワーク・チームワーク」を合言葉に学校職員をはじめ,学生や教職を目指す方等の教育ボランティアやゲストティーチャーなど,子どもを取り巻くすべての大人が一丸となって日々の教育活動に取り組んでいる。そこでは,チーム医療(※)の考えを取り入れた協力体制が築かれている。その他に,各職員のコンピュータをつないだ校内LANシステムを活用し,確実な情報の共有化を図っている。

※「チーム医療」… 医療環境のモデルのひとつ。医療従事者が互いに対等な立場で連携し,患者中心の医療を実現しようとするもの。


2.自分のエンジンで動く子ども(アクセル・ハンドル・ブレーキ)を育てる教育実践

 ここでは,一人ひとりの子どもの可能性を最大限に伸長させるとともに,自己の力で行動することができる子どもを育成するための主な取り組みについて紹介する。

(1)確かな学力を身に付けさせるための実践
 
1 算数は全学年で,学級を3分割から4分割にしたコース別少人数指導で行う。
2 理科専科(1名)と理科指導補助員(3名)を配置し,理科学習の充実を図る。
3 毎週火曜日に「算数チャレンジタイム」を設定し,基礎的な計算力を定着させる。
4 各学級ごとに,週15分から30分の集中的な漢字学習を実施する。
5 各学期末に,学習内容の定着度確認テストを行う。
6 夏季休業中にサマースクールを開校し,課題や習熟度に応じた学習を進める。
7 「自学のすすめ」として,計画的に家庭学習を提供する。
【サマースクール】
 その他,インターネット等を有効に活用した情報教育やインターナショナルスクール等の交流校と協力した諸活動,子どもたちを主体とした環境教育(学校版ISO)の推進,調理学科を有する近隣の大学と連携した食の教育の工夫,漢字検定受験の促進などを通して,子どもたちに確かな学力を身に付けさせる方策を講じている。
   
(2)広い視野と逞しく豊かな心を育むための実践
 
1 心の教育を充実させる。
「へんじ・あいさつ・あとしまつ」を徹底する。 ・全職員による指導の徹底
ボランティア活動を取り入れる。 ・地域清掃 ・高齢者在宅サービスセンターとの交流 ・ユニセフ,赤十字の活動など。
2 ふれあい月間・チャレンジ月間を設定する。
子ども主体の活動を工夫する。 ・自他のよいところ発見活動と全校への発表 ・児童会による,あいさつ運動 ・家庭や地域でのお手伝いプロジェクトなど
おとな主体の活動を工夫する。 ・職員による本の読み聞かせ ・大勢のおとなと遊ぶ時間の設定 ・PTA主催の活動など
3 日常的に異年齢の縦割り班による活動を行う。 ・レクリエーション ・各種集会 ・誕生日会食会など
4 教育相談活動を充実させる。 ・教育相談日の設定 ・スクールカウンセラーや関係機関との連携など
5 読書センター・情報センターとして機能を生かした学校図書館を運営する。
・専門職員の配置による図書館機能の拡充 ・朝読書 ・ボランティアグループによる定期的な読み聞かせ ・公立図書館との連携など
【芝沖クルーズ】
6 本物と出会う感動的な体験学習を位置づける。
  ○情操教育を充実させる。・毎週水曜日の音楽図工朝会の実施 ・4年生以上による金管バンドの編成 ・月1回の ミニコンサートの開催・日本フィルハーモニー管弦楽団との交流 ・近隣の美術館との提携による美術鑑賞 ・PTAによる各種イベント(宿泊体験等) ・地域の協力による芝沖クルーズ(船から見た東京) ・劇団四季や各放送局との連携による活動など。
   その他,近隣幼稚園・保育園との協同活動,健康教育の一環としての鉄棒,縄跳び,持久走,水泳等へのチャレンジ活動,全員が一輪車・竹馬に乗れるようになる指導などを行っている。
   
(3)地域とともにある開かれた学校を実現するための実践《参観から参加へ》
 
1 年間4回の学校公開・学校説明会の実施や学校運営連絡協議会の開催,日常的な学校訪問の受け入れや地域行事への参加,学校だよりや学校ホームページの充実などを通して,関係者との双方向の理解を深める。
2 保護者・地域対象の外部評価(芝小アンケート)を実施し,その結果を公表するとともに,それらに基づき教育活動の改善を進める。
3 教育ボランティア(学生・保護者・地域・ゲストティーチャー等)を数多く採用し,多彩な授業を展開する。
4 各種行事や安全教育等の一層の充実に向け,保護者との連携・協力体制を強化する。


3.国際科の充実と発展に向けた取り組み

国際科の新設 港区では,「国際人育成を目指す教育特区」として,国から構造改革特別区地域計画の認定を受けた。芝小学校では,その特区指定校として平成18年4月から国際科がスタートしている。本校は,6年前から英語活動や国際理解教育に取り組んできたので,子どもたちや保護者には問題なくに受け入れてもらうことができた。

本校の取組 本校では,各学年ともに週2時間の国際科を設定し,英語活動と国際理解教育を進めている。

 外国人講師は,週に4日間の常駐で,国際科の授業のほかに,少人数での会食やクラブ活動にも取り組んでいる。

 本校では,子どもたちに,国際コミュニケーションの基礎を培う活動を通して,確かな学力と豊かな心をはぐくんでいる。


 ◇本校の本年度の研究テーマは
国際社会に生きる子どもの育成 -二人担任制を生かした国際科指導の工夫-
 であり,これには,芝小学校から世界にはばたく人材を育成したいという願いがこめられている。


 ◇研究の概要は以下に示すとおりである。

指導体制の整備
国際科推進担当と国際理解教育委員会を中心にして,国際科の充実に向けた指導体制を整える。
担任・副担任・専科(音楽・図工・保健・TT・RAS・SA)等のブロック担任制を生かす。
教育ボランティア等の協力により,多彩な教育活動を展開する。
RAS(リーディングアドバイザリースタッフ:図書館指導員)
  SA(サイエンスアドバイザー:理科指導補助員)

学校システムの改善
保護者や地域から信頼され,子どもが誇れる学校づくりを進めるために関係者と行う協働活動を実現させる。
チーム医療の考えを基盤とした校内体制を充実させる。
組織的な研究を通して,各教員の教育力の向上を図る。

系統的・発展的な国際科カリキュラム編成と実施・検証を行う。
国際コミュニケーションの基礎を培う過程を通して,生活指導・心の教育の一層の充実を図る方法を探る。
異文化理解等と関連させ,健康づくり体力づくり・食育についての取り組みを深める。
指導法の開発

評価法の工夫
日常的な評価の積み重ねとともに,複数の教員による,より総合的な評価を行う。
児童の自己評価を工夫し,実施する。
国際科の評価の他に,教育活動全体に関することについて保護者・地域からの評価を受け,国際科を含む授業等の改善を行う。(芝小アンケート)


4.おわりに

 港区立芝小学校では,学校の自主性と自立性を確立し,組織的・継続的な努力を重ねることにより,子どもも,教師も,保護者も,地域も,だれもがワクワクするオンリーワンスクールとしての学校づくりを目指していく。


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