教育改革のとりくみ

「確かな力」をつけるために
―算数科の評価方法研究を中心にして―

東広島市立寺西小学校

1.学校教育目標

  
豊かに生きる  ・自分らしく生きる
・かかわりを大切に生きる

2.研究主題

  
豊かな心を持ち,主体的に学ぶ子どもの育成
―「確かな力」をつける―

3.本校がめざしていること

  (1)
 研究構想

 「豊かな心」と「主体的な学び」をキーワードに,子どもたちにつけていきたい力を明確にし,授業実践をしていく。その力を「確かな力」としている。
 この力は,各教科,領域等のそれぞれの学習の中で培われるものではなく,学校で行っているすべての教育活動における学習がスパイラルに絡み合いながら培われると捉えている。
 
研究構想図

  (2)

 学校からの発信 学校への発信

 本校が捉えた「確かな力」をつける取り組みを保護者,地域の方々に発信していく(学校からの発信)。そして,そのことから保護者・地域の方々から学校へ向けて発信されることを受け止める校内態勢をつくり,教育活動をさらに充実したものにしていく(学校への発信)。つまり,双方向の連携を推進していく。

  (3)

 「確かな力」

 「確かな力」とは,これまで数年間の取り組みの中で,子どもたちにどんな心を育て,どんな力をつけるのかを,国・県・市の方針,児童の実態,地域・保護者の願い等を鑑み,1つの表に表したものである。学習指導要領が示す目標と内容とともに,本校がめざす基礎・基本と捉えている。
 

確かな力

4.評価研究の必要性

 次の3点から,評価研究の必要性を感じ取り組んでいる。

  1) 学校評価から

 「子どもたちに確かな力をつけます。」と学校の教育方針を示している。方針として示す以上,結果責任も問われる。学校評価を行うと,「確かな力については分かったが,子どもたちについたかどうか分からない。」という意見が返ってくる。

  2)

 新指導要録の評価から

 指導要録の改訂に伴い,評定も含めて目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)に改められた。この他にも多くの改善点が教科審の答申に示されているが,新学習指導要領の完全実施に合わせ,学校全体で評価,評定について共通理解を図る必要がある。

  3)

 私たち教職員の願いから

 もちろん子どもたちを評価するということは,私たちの指導に返ってくることになる。指導と評価の一体化を図る取り組みを推進していく必要がある。また,子どもたちに「確かな力」がついたかどうかあいまいな評価をしてはならない。かといって,数字だけで切っていく評価は小学校段階の子どもにはなじまない。どのような評価をしていくべきか。

5.算数科の評価の取り組みについて

  (1) 算数科における「確かな力」

 学習指導要領に示されている算数科の目標を達成すると同時に,本校が示す「確かな力」をつけていく。算数科の目標と「確かな力」のねらいを含めて,算数科における「確かな力」と考え,実践している。

  (2)

 学習の流れ

 学習の流れを構想する段階では,主に「主体的な学び」を育てることを念頭に置き,指導計画を立てている。

  (3)

 評価の基本的な考え方

1) 評価の役割

学習の主体者である子どもが互いに学び合う過程で,自らのよさに気づき,可能性を生かして,豊かな自己実現に生きてはたらく資質や能力を身につけるように援助すること


評価は,学習指導と表裏一体のものとして捉え,指導の改善を図るものであり,子どものよさや可能性を引き出し,育て,伸ばすという,一人一人の自己実現を支援するもの

2)

 評価時期とその機能

評価の種類指導にどう生かすか
指導前における評価
(診断的評価)
子どもたちの既習事項や指導事項の理解を調べ,次からの指導に生かす。
指導過程における評価
(形成的評価)
子どもの活動状況を観察し,学習への意欲・態度,技能の習熟,理解の程度等を見とり,指導に反映させていく。必要に応じて指導計画を軌道修正する。
指導後における評価
(総括的評価)
学級や学年全体の学力を確実に捉え,指導の反省や計画の修正に生かす。


一人一人に何がどこまでできているかをはっきりと知らせ,今後の指導に生かす。

  (4)

 評価方法

1)
 目標に準拠した評価を行うために,子どもたちがどのような状況になれば目標を達成したことになるかを判断していく「評価規準」を,各単元毎に作成する。


指導要録の観点別評価の観点毎に作成し,通知票に当たる「あゆみ」の評価の観点もこれと同じにする。
 
単元ごとの評価規準例

2)

 1単位時間毎に評価し,それを次の時間の指導に生かしていくことを共通理解し,単元指導計画とともに,単元評価計画を立てる。


1単位時間毎にすべての観点に評価することは困難なので,重点評価観点を決め,◎と○で示す。


評価方法についても計画を立てておく。
 
単元指導計画例

3)

 実際の授業における評価記録は「座席表」を活用する。


評価規準を基にしてその時間の評価基準を作成し,座席表に記述しておく。


細かい評価計画を立てておき,数値等で簡潔に記録できる場合は,数値等で記録できるようにしておく。
 
座席表を活用した評価例

4)

 1単位時間毎に評価したことを単元毎に集計する評価シートを作成する。


評価計画に準じ観点別に分けたシートをつくる。


評価シートには,数値等で記録しているが,数値に表しにくい子どもたちの学習状況がある。それを記述できるところを作っておき記録し,総括する時に生かす。
 
評価シート例

  (5)

 留意していること

 1時間1時間の授業において,机間指導の中で言葉かけをしたり,ワークシートやノートに言葉を書いたり,振り返りで書いた感想に教師のコメントを入れたりして,子どもたちの意欲づけをすること。


 座席表に記録したことを次の指導に生かす。特に,「努力を要する状況」と判断した子どもに対して,その授業後,どう指導したかを記録しておくこと。
 このような記録は,直接総括的な評価に生かすことは難しいが,子どもたちの思いの把握や指導計画の修正には十分生かせるものである。評価を細かくすればするほど,時間がかかるし,煩雑なものにもなる。評価のための評価に終わらないよう,あくまでも子どもたちに「確かな力」がついたかどうか評価し,それを私たちの指導に生かすように心がけている。

6 成果(○)と課題(◇)

  ○ 単元毎に評価規準を作成することにより,1時間毎の指導のねらいが明確になり,学習中における子どもたちの評価の方向性がはっきりと見えてくるようになった。

  ○

 単元全体の評価計画を綿密に立てて指導することによって,子どもたち個々にわたり適切な評価,指導・支援ができるようになった。

  ○

 座席表を使った補助簿の使用により,授業の中で確実に個々の子どもへの評価,指導・支援の記録が残せ,より客観的で信頼性のある評価につながっていった。また,その記録が授業後の個々への指導・支援や次時の指導計画の修正につながり,形成的な評価として機能した。

  ◇

 どこまで細かくしても,評価は最終的にはその子どもたちを指導する教師の主観が入る。学校全体での評価研究を続けながら,教師の授業力,指導力,評価力をつけていきたい。

  ◇

 積み重ねてきた評価を,「あゆみ」「指導要録」の評価・評定へと総括していくが,子どもたちの多様な成長ぶりを示すことができる総括方法は,単なる数値化だけでは難しい。これからの課題として研究していきたい。



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