中学理科教科書「未来へひろがるサイエンス」Q&A

生命

Q6
藻類は植物ではないのですか?

回答
 平成24年度用教科書から五界説の考え方に基づき,藻類を植物のなかまに分類しておりません。五界説では,造卵器をもち,内部に胚を形成する有胚植物(陸上植物)を植物界に分類しております。なお,藻類は五界説では原生生物界に分類されます。
さらに詳しい説明
 かつて生物を植物と動物,あるいは植物,動物,原生動物に分けていたような分類体系では,光合成生物の多くは植物に分類されていました。現在でも世間一般の理解はほとんどそのままになっていますから,藻類が植物でないと急に言われると疑問だらけになるというのはもっともです。しかし,現在はできるだけ生物の系統樹にみられる枝分かれにおいて,単一の枝(単系統群)をそれぞれ独立した分類群にしようという考えが学会ではふつうになっています。この観点に基づくと,少なくとも造卵器をもち,内部に胚を形成する有胚植物(陸上植物)を植物界としてまとめ,あわせて動物界(後生動物)と菌界をまず独立した分類群とし,それらの祖先となる真核生物を原生生物界,さらに最も単純な体制をもつ原核生物界を認めるという五界説のほうが生物の進化過程に近い分類だという判断がなされました。

 平成24年度用教科書から,この五界説の考え方に基づき,植物は陸上植物のみに限定した分類群になりました。そうすると,植物の祖先である緑藻類やその他の藻類は,より原始的な原生生物に含まれることになりました。従って,藻類は植物のなかまに分類しておりません。

 五界説の原生生物界は,植物,動物,菌の祖先を含む多様な群となり,当然のことながら多くの系統を含む多系統群で,この点では「単系統」を重視するという方針とはあわないことになります。進化には枝分かれと段階とがあり,枝分かれだけで忠実に分類すると実際の社会ではとても使いにくい分類体系になってしまいます。旧来の広義の植物が今も使われているのは,このような大まかな理解が結構便利だからです。五界説は現在の社会で,科学と実用性の両方から判断して教科書で教えるべき最良の分類ということになります。

 なお,高等学校生物教科書では,さらに進んで3ドメインという生物の大分類をまず行い,そこからドメインごとの分類を行うという体系に替わっています。この場合でも,真核生物ドメインの分類はこれまでの五界説の分類に近いものになっています。