中学数学教科書「未来へひろがる数学」Q&A

Q5
連立方程式の解を(x,y)=(△,□)のような書き方にしてある理由は何ですか。

回答
 連立方程式の解の表記については,いろいろな方法がありますが,主に以下の3つのタイプに分かれると思われます。

 弊社教科書が上のウ)のタイプを採用している主な理由としては,
  1. 1) 値の組が解であることが意識できること
  2. 2) 解の表記は,中学校で学習するすべての方程式において解集合で統一していること
  3. 3) 方程式のグラフと関連をもたせることができること
の3点が挙げられます。
 1)について
 二次方程式の解をx=−2,3(x=−2,x=3)と書いた場合,間にある「,」は“or”の意味で使われています。
 一方,連立方程式で解をx=△,y=□と書いた場合,間の「,」は“or”ではなく“and”の意味です。連立方程式では,xとyの両方を組にして初めて1つの解となります。実際,

という連立方程式と(x−6)(y−5)=0という方程式を比べたとき,解はどちらもx=6,y=5と書けますが,「,」の意味は,前者が“and”であるのに対して,後者は“or”になります。そのため,連立方程式では組として1つの解になることがはっきりする形が好ましいと考えています。
 2)について
これは1)で触れたことと関連するのですが,弊社では,一次方程式の解は,x=6,二次方程式の解は,x=−2,3のように書いています。これらは,それぞれ,
 集合{x|2x+5=17}={ 6 }
 集合{x|x2−x−6=0}={−2,3}
を考え,省略して左端のxと右端の値のみを書いたものです。同様に,連立方程式の場合には,集合{(x,y)|5x+2y=40,x+y=11}={(6,5)}を省略して,(x,y)=(6,5) となるわけです。
 3)について
 一次関数の単元にある「方程式のグラフ」では,二元一次方程式の解となる値の組を座標とする点の集合が,その方程式を一次関数とみたときのグラフと一致することを学習しますが,連立方程式の解を(x,y)=(△,□)の形にすることによって,その関係が理解しやすくなるというメリットもあります。
 以上が,弊社の教科書で,連立方程式の解を順序対の形で書いている最大の理由ですが,ア),イ),ウ)のどれが主流となるのかはなかなか断定しにくい問題です。そのため,教科書では,他の表記の仕方についてもふれています。