教材・教具の工夫
兵庫県加古川市立別府中学校
姫田 泰隆
1.単元名 方程式

2.単元の指導について
 本単元の内容は,前単元「正の数・負の数」「文字の式」の内容とも関連して中学校の全領域と深い関わりをもち,それらの基礎として位置づけされる重要なものとなっている。
 小学校では,ことばの式から□や文字χを用いたりして数量の関係を等式に表したりしている。また,□やχにあてはまる数を代入や逆算で求めたりしている。しかし取り扱いが,具体的な数量が中心であり,立式も簡単なものに限られており,一般的・抽象的な取り扱いはなされていない。
 中学校では,前単元で指導した文字の式についての知識を元に方程式とその解の意味を理解させ,方程式を形式的,機械的に解くための方法を指導する。解き方に習熟させ,これを利用して具体的な問題解決に利用させることで,数学的な見方・考え方のよさを生徒に感じさせたい。
 本学級の生徒は,男子20名,女子18名であり,明るく素直で,学習活動にも積極的に取り組む。中学校入学当初,小学校の既習事項についての確認のために代数分野について到達度テストを行った。
 その結果,小学校での既習事項である「わり算」「繰り下がり」についてかなり個人差が生じている。「正の数・負の数」「文字の式」の指導を通じて既習内容の復習も行ってきたが,不十分なため,放課後の希望者補充学習での指導を続けている。また,中学校に入学し,当初の緊張感も薄れるにつれ,積極的に発表しようとする生徒がやや減りつつある。ここでは,作業と小集団活動を取り入れ,意欲的・主体的に取り組める授業を心がけたい。

3.単元指導計画

3.方程式配当時間:12時間

 
 文字を含んだ等式から,文字の値を求める方法を理解し,これを用いて実際の問題が,形式的,能率的に処理できるようにする。そのために,
(1) 方程式とその解の意味を理解する。
(2) 一元一次方程式の解法を理解し,その解法に習熟する。
(3) 方程式を問題解決に利用できるようにする。
指 導 内 容指導時数
 1.方程式とその解・方程式を利用すると問題解決が容易になること
・方程式とその解の意味。方程式を解くことの意味
・等式の性質と,それを用いた簡単な方程式の解き方
2.方程式の解き方・移項の意味
・いろいろな形の一次方程式の解き方
3.方程式の利用・方程式をつくる手順
・方程式を使って問題を解くこと
・方程式の解を問題について吟味すること
・方程式を使って問題を解く手順のまとめ
問題演習 

4.本時の指導(等式の性質)
 (1)等式の性質を理解させる。
 (2)等式の性質のうち1・2を使って,χ+a=b の形の方程式を解くことができるようにする。

5.準備
 色画用紙模型
 ワークシート

6.展開
学習内容学  習  活  動 備   考 
導入
(前時の復習)
(本時の課題)
○方程式とその解の意味について復習する。
 ・χ−8=5,4χ−7=5の解を求める。
 ・2χ−3=6の解を求める。
2χ−3=6の解を求めるのは困難であることを知らせる。
展開
(1)等式の
性質を導く。
<例>1辺が2cmの正方形と,縦が1cm,横が4cmの長方形を考える。
 「正方形をA,長方形をBとしたとき,両図形の面積はともに4cmであることから,このことをA=Bと表す」左図で,AとBの図形は直線XYについて対称ではないことを押さえておく。
1)等式の両辺に同じものを加える。
対称軸の左右に同じ図形(合同な図形:面積C)をおく。

直線XYの左側の面積A+Cと右側の面積B+Cは等しい。
 よって,「A=Bならば,A+C=B+C」<等式の性質1>

     2)両辺から同じものをひく。対称軸の左右から同じ図形(合同な図形:面積C)を取り去ること

直線XYの左側の面積A−Cと右側の面積B−Cは等しい。
 よって,「A=Bならば,A−C=B−C」
3)両辺に同じものをかける。
<等式の性質2>
対称軸の左右に,それぞれ同じ図形を置くこと

直線XYの左側の面積A×4と右側の面積B×4は等しい
(枚数の組み合わせを3〜5の範囲でいろいろ試してもよい)。
 よって,「A=Bならば,A×C=B×C」
4)両辺を同じものでわる。
<等式の性質3>
対称軸の左右を等分割すること

直線XYの左側の面積A÷8と右側の面積B÷8は等しい。
 よって,「A=Bならば,A÷C=B÷C」<等式の性質4>
C≠0 をおさえておく。

(2)等式の性質




(3)等式の性質を使ってχ+a=bの形の方程式を解く。

○作業の結果から,等式の性質をまとめる。
 A=Bならば,A+C=B+C
 A=Bならば,A−C=B−C
 A=Bならば,A×C=B×C
 A=Bならば,A/C=B/C(C≠0)

○復習で用いた方程式χ−8=5の解を等式の性質を使って求める方法を考える。


χ−8=5  →  χ=13
両辺に8を加える(等式の性質1)

両辺から8を引く(等式の性質2)

○等式の性質1・2を使って,教科書p.80の(2)を解く。
命題「〜ならば〜」について簡単に説明する
(深入りはしない)。

C≠0が,Cは0でないことを示しておく。
復習の過程で,χ=13は導けていることを確認させる。



机間巡視,個別指導

まとめ ○等式の性質をまとめる。
○等式の性質による方程式の解法(χ+a=b)
      

7.指導を終えて(成果と課題)
 今まで1年時の「等式の性質」を導くために,教科書と同様に天びんを用いて指導を行ってきたが,今回は図形の面積を考えさせる方法を用いた。
 本稿では十分表現できているとはいえないが,天びんに比べて,大きい模型が使える,切り取り,重ねなどの手法が簡単に行える等々,作業そのものは生徒にとって視覚的にとらえやすかったようである。直観的にとらえるという点では,「天びん」も「面積図」も大きな違いはないと思うが,4つの性質を個別に導くという点では,順不同で扱えるため,「面積図」の方が面白いという感想を持った。
 今回のように教材・教具を利用しての指導では,時間配分を工夫する必要がある。そうでないと作業・操作に追われ,生徒自身によるまとめが不十分になりがちである。今回の指導でもaχ+b=cの解法まで例題及び演習をする予定であったが,見通しの甘さで次時に持ち越しとなった。反省し,今後の指導に生かしたい。


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