教育改革のとりくみ 目次

学校・家庭・地域が協働し,それぞれの教育力の向上を目指す学校評価
和歌山県かつらぎ町教育委員会

1.学校評価の基本目標

 各学校が学校評価システムを構築することにより,家庭・地域が学校への関心や関わりを深め,学校・家庭・地域の協働による教育の質の保証を図る。

 本町では,学校評価を学校・家庭・地域が互いのよさを認め合うためのツールとして活用すれば,三者が協働したよりよい学校づくりにつながるとともに,学校・家庭・地域それぞれの教育力の向上に結びつくと考える。

2.学校評価システム構築のための推進体制

学校関係者評価委員会(外部評価委員会)  <組織図>

 平成18年度に教育委員会主催の「学校関係者評価説明会」を開催した際,出席していた学校関係者評価委員から「学校の何を評価していいのかわからない」「一般の者が学校を評価することができるのか」などの意見があった。

 その後,学校関係者評価委員の不安を払拭できるようにと研修会を実施したが,実際,学校関係者評価委員の不安を払拭できたのは学校訪問であった。学校訪問の回数を重ね,学校の教育実践に触れることで,学校関係者評価委員自身が学校の思いを理解し,何を評価すればいいのかを判断できるようになっていった。

 学校関係者評価委員に求められていることは,学校の自己評価結果を検証評価することで自己評価の客観性・透明性を高めることである。また,学校から教育活動に係る様々な情報の提供を受け,学校に対しては評価委員としての意見を,保護者や地域の人々に対しては,学校への協力を要請するという学校・家庭・地域を結ぶコミュニケーションツールとしての役割である。


3.かつらぎ町の「学校評価」の流れ   <流れ図>

(1) 『PLAN(計画):3月 = 年度末評価結果の把握・分析,学校教育目標・重点目標・学校経営計画の設定 等』

 各学校は,年度末評価の分析結果,学校関係者評価書等を参考に,次年度の重点目標や学校経営計画を作成する。年度内に学校経営計画を作成することで,次年度当初からの実践が可能となる。

(2)

『DO(実践):4・5・6月 = 策定した計画等の公表・説明,学校関係者評価委員の推薦,計画に基づき具体的方策を実践する,学校関係者評価委員への学校説明,学校関係者評価委員の学校訪問受け入れ』


1 策定した計画等の公表・説明
   各学校では,策定した教育計画等をホームページに掲載するとともに,PTA総会の場などで保護者対象にその年度の学校経営方針等を説明する。
2 学校関係者評価委員への学校説明
   年度当初,学校長は,学校関係者評価委員を招聘し,その年の目標・実践内容等を説明する。
3 学校関係者評価委員の学校訪問受け入れ
   学校関係者評価委員は,学校長から学校運営等について説明を受けた後,様々な機会を捉えて学校訪問し,学校の取り組み状況を観察する。

(3)

『CHECK(中間的評価):7月 = 中間的評価の実施』


1

中間的評価の実施

   中間的評価は,教職員,児童生徒,保護者対象に実施した。
 教職員対象評価調査票の様式は次のようなものとした。

平成19年度 ○○学校教職員 自己評価調査票
項目 番号 評価項目 評価欄 改善欄
とてもそう思う まあそう思う あまりそう思わない まったくそう思わない
道徳教育   「心のノート」が活用されている。  
               
 
               

 教職員は,各々の評価項目について自己評価し,あてはまる数字に○印をつける。

 この自己評価調査票で工夫した点は,「改善欄」の設置である。学校運営や教育実践で,特に改善やより一層の充実を図る必要があると思った場合は,この欄に○印を付けるようにした。具体的に,「どのように考えているのか」「どんな改善充実策があるのか」については調査票に記述欄を設け,記述することとした。複数の項目に○印を付けた場合は,取組む優先順位を付けることとした。

 記述欄の様式は次のとおりである。

優先順位のついた具体的な改善・充実に係る意見
優先順位 項目番号 具体的な改善点等
1位    
2位    
3位    

 学校では,「具体的な改善点等」に記述されている内容を整理すれば,その学校の課題に対する改善策の原案が,しかも取組みの優先順位のついた改善策の原案ができる。これを現職教育等で協議すれば,全教職員が共通理解した改善・充実策になるのである。

(4)

『ACTION(改善,修正):8月 = 中間的評価結果に基づく改善・充実策を講じる』


中間的評価結果に基づく改善・充実策

中間的評価実施後の「自己評価結果に対する改善・充実策」
分類 項目 番号 評価項目 改善・充実策 取組状況 達成状況 備考
               
 
               

 中間的評価実施後,各学校では8月中に,教職員・児童生徒・保護者対象の調査票を集計・分析し,9月からの実践に向けた改善・充実策を講じることとなる。この改善・充実策は,年度当初の目標が達成できたかどうかを検証する年度末評価項目として機能するものでなければならない。そのためには,より具体的な改善・充実策であることが求められる。

(5)

『DO(実践):9月・10月・11月・12月 = 学校関係者評価委員の学校訪問受け入れ,改善・充実策に基づいた実践をする』


4・5・6月期と同じように学校関係者評価委員の学校訪問を受け入れる。
   この時期の学校関係者評価委員による学校訪問では,4・5・6月期の取組により,どんな成果があったのか,現在の課題は何か,課題解決のために講じた改善・充実策はどんなものかを理解してもらうことが大切である。

(6)

『CHECK(年度末評価):1月・2月 = 年度末評価の実施,自己評価書の作成,学校関係者評価書の作成』


1 自己評価書,学校関係者評価書の作成
 

 各学校では,中間的評価結果(7月実施)と年度末評価結果(2月実施)を基礎データとして,全教職員で協議し次年度の実践につながる『自己評価書』を作成する。

 自己評価書で工夫した点は,「学校のよさとして外部にアピールできる内容」欄を設けたことである。学校・家庭・地域が互いのよさを認め合うことができるような内容になることを期待している。

 当該校の学校関係者評価委員会は,学校が自己評価を適切に行ったかどうか,教育活動その他の学校運営の改善に向けた取組が適切であったかどうかを検証するために,学校側から提出された『自己評価書』の説明を学校長から受ける。学校関係者評価委員は,4月から実施してきた学校訪問での子どもの姿や教職員との懇談などで感じたことと学校長からの自己評価書の説明との相違点について質問し,学校側の見解を聞くこととなる。その後,学校関係者評価委員全員で協議し『学校関係者評価書』を作成,学校長と教育委員会に提出することとなっている。


自己評価書・学校関係者評価書の項目
自己評価書 学校関係者評価書
目標や計画についての達成状況 目標や計画についての達成状況に対する意見
取組の状況 取組の状況に対する意見
取組の適切さの検証結果 取組の適切さの検証結果に対する意見
次年度に向けての改善策 次年度に向けての改善策に対する意見
「学校のよさ」として特にアピールできる内容 「学校のよさ」として特にアピールできる内容と認められること
その他 その他
「自己評価書」「学校関係者評価書」とも,上記の項目について文章で記述する。


(7)

『ACTION(改善,修正):3月 = 自己評価書・学校関係者評価書を 参考にして,改善策を講じる,結果の公表・説明』


1 自己評価書・学校関係者評価書を参考にして改善策を講じ,学校の全体構想に生かすとともに次年度の学校経営計画に反映させる。このような取組が次年度当初からの実践を可能にするのである。
2 結果の公表・説明
   1年間取組んできた教育活動の成果や課題,課題等に対する改善・充実策などを公表することは,本町が目指す「家庭・地域が学校への関心や関わりを深め,学校・家庭・地域の協働による教育」の実現には不可欠なものである。評価結果を情報として提供することで,保護者・地域が学校への関心を抱き,支援・協力というかたちで関わりが深まり,よりよい関係を築くことができるのである。


4.成果と課題

< 成 果 >

(1) 「教育活動の改善」の視点から

1 学校のマネジメントが変るきっかけとなった。P−D−C−Aサイクルが定着してきた。
2 具体的な目標設定が軸のぶれない実践を可能にしている。
3 年度末に次年度の取組内容が明確になる。
   年度末に『自己評価書』『学校関係者評価書』をもとに『学校経営計画』を作成するので4月当初から実践することができる。

(2)

「教職員の意識改革の」視点から


1 今まで以上に,児童生徒・保護者・地域の方々の意見に耳を傾けるようになった。
   ただ,児童生徒・保護者の意見に耳を傾けるのはいいが,どの程度まで受け入れるかは全教職員で協議する必要がある。大切なのは,各学校の主体性・自立性なのである。
2 情報提供等,開かれた学校づくりに努めている。
 

 町内全ての小・中学校で,校区内の事業所等に『学校だよりファイル』を置き,訪問者が自由に『学校だより』を読めるように工夫している。

 地域への情報提供のために,学校長が自ら作成した「学校だより」を,地域を巡回しながら配布し,学校の取組に対する理解と協力が得られるよう訴えている学校もある。

 また,年度当初,学校長がPTA総会で学校経営計画を説明するとき,学年主任から学年経営計画を,養護教諭から健康教育計画を説明するなど情報の提供について工夫をこらす学校も出てきている。


(3)

「保護者や地域住民の学校への協力」の視点から


1 保護者が学校の取組を理解し,協力するようになってきている。
 

 ある学校長が,学校評価システム構築事業の指定前と指定後の違いについて次のように語っている。

 「以前から保護者対象の学校評価は実施していた。学校評価システム構築事業の指定を受けた後は,情報の提供を意識して取組んできた。指定前の保護者対象の評価の記述欄には学校に対する苦情が多かったが,この2年間で苦情は激減している。学校の取組が理解されてきたのだろう。」

2 学校関係者評価委員を中心に,学校に協力しなければという雰囲気が出てきている。
 

 学校関係者評価委員の活動総括会である『平成19年度かつらぎ町立小中学校学校関係者評価委員会』を平成19年2月に開催した。全体会のあと6グループに分かれてのグループ別討議会を実施した。はじめて実施した昨年と比べると,学校評価等に係る肯定的な意見が多くなった。

 例えば,

学校は,学力向上の取り組みについてアンケート結果等を活用して丁寧に説明してくれた。

教職員の努力している様子がよく理解できた。
学校訪問は,年間7・8回行った。学習発表会等いろいろな場面を見てきたが行事への保護者・地域住民の参加が少ない。我々が,参加者を増やす役割を果たさなければと感じた。
子どもの様子を学校に伝えることができた。教員も相談に応じてくれたので学校との関係は良好である。
学校側から学校だよりなどで情報提供を受けているので,おおよそ学校の様子はわかる。
この2年間の取組みを無駄にしないように,各学校で引き続き取組んでほしい。

など,意見の内容等から学校に協力しなければという雰囲気が感じられる。

< 課 題 >

(1) 各学校の実践に関わって

1 学校評価を全教職員のものとする。
   学校評価を使った学校経営を行うためには,全教職員がチームとなることが必要である。 そのためには,学校評価で得られた情報が全教職員のものになるようにしなければならない。
2 データ集計の方法やその活用。
   簡単な記述でいいので学校としてのコメントをつける必要がある。このことが教職員間の考えのズレを修正することになる。
3 情報提供のあり方。
   保護者・地域の人々が学校に関心をもち,関わりをもちたくなるような情報をどのように提供していくか,今後とも考えていくことが必要である。

(2)

学校関係者評価委員の活動に係って


学校関係者評価委員の活動のあり方
   学校関係者評価委員に求められていることは,学校の自己評価結果を検証することで自己評価の客観性・透明性を高めることである。また,学校から教育活動に関わる様々な情報の提供を受け,学校に対しては評価委員としての意見を,保護者や地域の人々に対しては,学校への協力を求める,という学校・家庭・地域を結ぶコミュニケーションツールとしての役割が期待されている。学校の応援団であり続けるような,学校関係者評価委員の活動を今後とも目指していく必要がある。


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