教育改革のとりくみ 目次
「丸山方式」で自主・自主を育む実践の歩み

千葉県丸山町立丸山中学校


1. 本校建設の経緯

 本校は平成16度第3学期より新校舎へと移転し,新しいシステムのもとに学校運営を始めている。新校舎建設にあたって,平成13年度より町に「丸山中学校等建設委員会」が設置された。教職員も先進地視察や勉強会,施設・設備に関するヒアリング等に取り組み,町と共に新しい教育のかたちを模索してきた経緯がある。その結果,新丸山中学校は県下でも数少ない教科教室型校舎として完成することとなった。

2. 本校の特色

 本校は教科教室型校舎という特色の他にもエコスクール(オール電化学校給食センター・地元杉材を内装・外装に利用した温かみのある施設・雨水の洗浄水等への利用),地域と連携した生涯学習の場としての学校,生徒の憩いの場となる様々な工夫(広々とした空間構成・中庭・家具・ベンチ・観葉植物や絵画等のインテリア)などの特徴をもつ。

3. 「丸山方式」とは何か

 「丸山方式」とは,「独立したホームベースエリアをもつ教科センター方式」のことをさす。「独立したホームベース(以下HBと略称)エリア」は2階部分に設置された生徒の生活の拠点となる場所である(右写真)。
 「HB」はクラス全員が集まれる場所であり(通常の教室の3分の2ほどの大きさ),クラス単位の生活に対応する。朝や帰りの学活はここで行われ,学級担任との結びつきは主としてここで形成される。また,生活集団としてだけではなく,道徳・学級活動・行事などで共通の目的をもった目的的な集団を育成する機能を果たす場として設置されている。
 「HBエリア」は各HBを結びつける機能をもつ廊下部分や同学年間を結ぶテラスを含めた二階部分の総称である。異学年が同一階に集中することをメリットと考え,1年生のHBエリアを中央に設置し,その両側をそれぞれ2年生・3年生のHBエリアとして配置した。各学年や学級の活動がオープンに示され,異学年間の交流が盛んになることで全校のまとまりを醸成するのが目的である。

 「教科センター方式」は,教科教室型校舎のもっとも特徴的な運営方式で,生徒の学習の核となるシステムである。
 本校は各教科がすべて専用の教科教室をもっている。これがいわゆる教科教室型校舎の特徴であるが,それだけではなく,各教科教室に隣接するかたちで「メディアスペース」が設けられている。このメディアスペースとその他の多様な学習空間(グループ学習室や階段・中庭・ビオトープ・屋外体育施設など)および教科教室で構成される学習のための空間を「教科センター」と呼ぶ。
 教科センターにはメディアスペースを主として,各教科ごとに必要な学習材や教具・各教科の生徒作品等が展示・掲示され,授業の流れに応じて自由に使うことができるようになっている。また,この学習空間を効果的に活用して,TT・個別学習・少人数学習・習熟度別学習などの指導が可能となる。
 この2つのシステムを相互に関係づけて運用することで,「かしこく(確かな学力)」「やさしく(豊かな人間性)」「たくましく(たくましい身体)」という学校教育目標の達成をめざし,子どもたちに「自主・自立」の力をつけようとするのが「丸山方式」のねらいである。




4. 「丸山方式」で自主・自立を育む

 では,具体的に「丸山方式」で自主・自立を育てる実践の例を紹介したい。
 まず,本校は平成14年度より新校舎移転を視野に入れてノーチャイムを実施している。これは,一日の流れの中で時間を守り,自ら行動することを重視した方策である。教科センター方式では朝学校に登校し,HBに入って学活を終えると,あとはほとんど毎時間移動教室となる。その日の時間割に応じて生徒は各教科センターを回る。定時に始まり定時に終わることを職員・生徒共に大切にしている。
 また,奉仕部活動(生徒会活動)で自治的な活動を行うための見直しに取り組んでいる。従来当番的な活動に陥りがちだった活動を見直し,ボランティアの精神を発揮できるような活動を模索中である。
 授業においては,生徒が自分で目標を設定し,達成に努力することができるようにするため,学習案内(シラバス)を作成した。学期のはじめのガイダンスと学期末の評価のための参考として生徒・保護者に配布している。その他にも各教科で授業内に自己評価や相互評価を行い,生徒が自分や学習集団の状況を正確に認識し,さらなる向上のために自分で目標を設定するための評価の在り方を探っている。
  また,各教科センターの運営方針に基づき,教科センター内の環境整備に努めている。教科センター方式においては「教師も環境の一部」であり,生徒が主体的に学習に取り組む学習の在り方が求められる。授業に魅力がなければ生徒は教室移動に意義を見いだせなくなってしまう。「魅力ある授業」づくりの努力を各教科で続けている。教科センター方式による魅力ある授業の開発に向け,以下の3点を目標として取り組んでいる。
 (1)  各教科センターの運営方針に基づいた教育環境の整備により,生徒が魅力を感じる学習空間を構成する。
 (2)  学ぶ意欲を高めるための学習環境・学習形態・学習方法の在り方を,各教科・領域の特性を生かしながら探る。
 (3)  個に応じた評価を重視し,生徒が自分の学習状況を把握し,目標を設定して主体的に学べる評価方法の開発と実践を行う。


5. 開かれた学校づくりを目指して

 本校の周辺には,町民の集まる役場,町民体育館,公民館があり,町としても本校を含むこの地域を町の「文教ゾーン」としてとらえ,その中の学校を町の教育・文化・情報の発信基地と位置づけている。学校は町のシンボルであり,町民の学習・集会・憩いの場であると考えている。自然に児童・生徒・町民がここに集まり,豊かな環境の中で,ともに学び,出会い,語らい,世代を超えたコミュニケーションが生まれることを願っている。こんな「リビング」のような学校をつくることを基本理念においている。
 家庭や学校が子どもたちの教育の核になるものの,地域も一体となり教育を推進しようとする基盤は心強いものを感じる。現在までの具体的な取り組みとしては,以下のとおりである。

 1)  「学校だより」を家庭だけでなく,地域にも回覧し,学校の様子を伝えるようにした。
 2)  授業や部活動において,地域の方にも指導に入ってもらうようにした。
 3)  学校支援ボランティアとして, 生徒の学習・生活に関する支援や環境づくりにお手伝いいただいている。
 4)  文化祭のカルチャー講座では,地域の方がその道の専門家(郷土料理,生け花,手品など)として生徒の指導に当たっている。

 地域の特性や優れた人材を生かすことによって,挨拶の輪が広がったり,地域に大切にされている感触を感じたりし,生徒の心的成長もみられている。また学校の様子が伝わり,地域でも学校に対する関心が高まり,学校への信頼感も増してきている。

6. おわりに

 新校舎での生活が始まって8ヶ月。一歩ずつ中身の改革を推進しているところである。「丸山方式」の成果を見届ける上で,学期にごとの生徒の意識調査の実施,また学力調査も毎年実施し,その推移とそれに応じた手立てを考えていくことが重要である。そしてそれを支える教職員集団の「常に前を見続ける意識改革」の重要性も併せて付け加えたい。

〈参考資料〉校舎平面図


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