教育改革のとりくみ 目次
「生きる力」を育てる学校づくり〜生徒一人ひとりが「生きる力」を身につけるには,どのように学習を進めればよいか〜

神奈川県伊勢原市立伊勢原中学校


1. 研究テーマ設定の理由

 本校の教育目標である期待する生徒像は「生命の尊さを知り,心身ともに健康な生徒,お互いの立場を考え,思いやりのある生徒,知性を磨き,創造力豊かな生徒,主体的にたくましく生きる生徒」である。これは,子どもたちに知・徳・体の力をバランスよく育み,変化の激しいと予想されるこれからの社会において,困難な状況に立ち向かっていく力を育成することを目指している。

 さて,本校の生徒は,明るくあいさつができ,行事や部活動に積極的に取り組むなどの長所がある。しかし,学習活動において与えられた課題については真面目に取り組むが,自主的・主体的に取り組んだり,自分の考えを持ち,みんなの前で積極的に発言・発表しようとする生徒は少ないように見受けられる。21世紀を生きる者にとって,生涯にわたって主体的に学び続けることが大切である。生涯学習の基礎として,生徒一人ひとりに基礎的・基本的な学力を各教科学習において確実に身につけさせるとともに,「総合的な学習の時間」においては自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に解決する能力を育みたい。また,中学生の年代は生徒の適性,興味・関心等が次第に多様化してくる時期である。多様な選択教科を開設し,生徒の多様な学習ニーズに応え,生徒の個性の伸長を図りたい。

2. 「生きる力」のとらえ方

 先行きが不透明で,変化の激しいと予想される21世紀の社会を生きる子どもたちが,生涯学習の基礎として培うべき「知・徳・体のバランスのとれた総合的な力」を「生きる力」と本校ではとらえ,具体的には次の6点とした。

 1. 自らを律しつつ,他人と協調し,思いやる心や感動する心

 2. たくましく生きるための健康や体力

 3. 基礎・基本を習得する力

 4. 自分で課題を見つけ,見通しを立ててものごとに取り組もうとする力

 5. 直面した問題に対して自分で解決しようとする力

 6. 他者に自分の思いや考えをわかりやすく伝えようとする力


3. 研究のねらい

 生徒一人ひとりに基礎的・基本的な学力を身につけさせるとともに,生徒の興味・関心を大切にした「総合的な学習の時間」や「選択教科」を推し進めることにより,自ら学び,自ら考える力などの「生きる力」を育成する。

4. 研究組織


5. 各部会の研究目標と内容

 (1)  「必修教科」における「生きる力」の育成

 基礎・基本の習得は,「生きる力」を育成するうえで不可欠な要素である。必修教科部会では,各教科学習において,学習のねらい,課題を明確にした「わかる授業」を実践する中で,基礎・基本〔4(5)観点からとらえた学力〕を確実に身につけさせ,学ぶ意欲を高めようとした。

 具体的には,学習指導要領に示された目標・内容(最低基準)をきちんと把握し,その目標に準じた評価(いわゆる絶対評価)を充実させていく必要がある。学習指導要領に示す基礎・基本とは,知識・技能のみではなく,主体的に学ぼうとする意欲や考える力,自分の考えを的確に表現できる力,判断する力などを含んだものであり,それらを生徒がどのように身につけているかを適切に評価しながら,日々の指導の改善に生かし,基礎・基本の確実な定着を図っていくことをめざした。

 1)  年間指導計画,観点別評価規準・基準表の作成と評価の研究

 学習指導要領に示されている内容の分析から始まり,各教科観点別評価規準を設定し,その規準の達成度をはかる基準表を作成することによって,基礎・基本の定着を把握する適切な評価活動が行えるように努めた。また評価の方法・評価資料・評価資料の読み取り(教師間の評価の見極め)についても研究し,実践を進めながら生徒の変容を図ろうとした。

 2)  学習ガイダンスの実施,本時の授業のねらいの提示

 学習のねらい,課題を明確にした指導の一環として,年度当初,各教科で学習ガイダンスを実施した。また毎授業開始時に生徒に本時の授業のねらい・課題の提示を行い,本時,何を学習するのか,生徒がねらいをはっきりつかめるようにした。

 3)  通信票の見方,各教科の観点別評価資料の配布

 毎学期末,保護者面談等の際,生徒と保護者に対して,通信票の見方と各教科の学期ごとの観点別評価資料を配布し,評価に対する生徒と保護者の理解を深めるようにした。また評価が生徒にとって次への学習意欲をかき立て,具体的な努力目標を立てる手がかりとなるように努めた。

 4)  学習相談日の設置

 定期テスト前や夏季・冬季休業中に学習相談を実施した。特に休業中は,理解が十分でない生徒の補充指導に力を入れ,教師側から該当生徒に,課題を用意したり,学習相談に来るように促した。また発展的学習内容に取り組む生徒に対しても,学習相談日を利用して自由課題や自由研究のアドバイスを行った。

 5)  授業研究と研究会の実施

 生徒に確かな学力を身につけさせるには,教科ごとにその指導方法を研究するだけでなく,それぞれの教科の良いところを吸収することが大切であると考えた。そこで教科の枠を越えた校内研究授業(全教科)を実施し,授業改善に努めた。また研究授業後,研究会を開催し,学習指導の工夫や,興味・関心を喚起するような授業のあり方,評価の方法や評価資料等について,情報交換や意見交換を行った。

 (2)  「選択教科」における「生きる力」の育成

 中学生の年代は,個性を探り,伸ばす時期である。多くの生徒は,「自分が何に向いているのか分からない」,「自分の適性や個性が何なのか分からない」段階であり,自分の能力や適性,興味・関心を自らの問題として考え,選択し,試行してみるために「選択教科」は大切な時間である。そのため,課題学習,補充的学習,発展的学習など多彩な学習活動やできるだけ広い分野での選択が可能となるようにした。

 さて,生徒の能力・適性,興味・関心を生かした選択教科を実施していくためには,生徒の希望を考慮したコースの開設が重要になってくる。また,選択のために生徒が正確な情報を収集し,教師のアドバイスを受けながら自己決定を行えるようなシステムが大切である。さらに選択した後,主体的な取り組みが継続していけば,生徒は達成感を得るはずである。本校ではこれらの課題に対して,選択教科の開設や運用,指導方法を検討し,以下のような実践をしている。

 1)  選択履修幅の拡大・工夫

 多様な特性を持つ生徒に応じた選択教科を行うためには,生徒の能力・適性,興味・関心に沿った選択履修幅の拡大が必要である。その実現のための方策として,生徒の個性の伸長を図り,多様な興味・関心に対応するために,選択教科のコースの拡大を図った。またそれにより,1コースあたりの平均人数を減らし,少しでも個別指導も一層充実できるようにと考えた。本校では昨年度までは2年生が9教科10コース,3年生が9教科11コースで実施していたが,今年度は2年生が9教科10コース,3年生が9教科13コースで実施した。

 開設コースについては2年生・3年生共に1週間で2時間ずつ授業があるが,次のように設定した。

 2年生は1週間で2教科,そして1教科の学習期間を半年間(前期・後期制)とした。選択の仕方は,5教科5コース(国語,社会,数学,理科,英語)の中から2コース,4教科5コース(音楽,美術,保体,技術,家庭)の中から2コースを選択し,前期,後期それぞれ5教科・4教科の中から1コースずつ学習していく。1年間で4教科4コースを選択し学習することになる。

 3年生は1週間で2教科,そして1教科の学習期間を通年とした。選択の仕方は,3教科6コース(国語,数学I・II,英語I・II・III)の中から1コース,6教科7コース(社会,理科,音楽,美術,保体,技術,家庭)の中から1コースを選択する。

 これは2年生の時に幅広く学習し,3年生の時には2年生の経験をもとに,じっくりと学習に取り組めることをねらったものである。

 生徒の能力・適性,興味・関心に応じた選択教科を実施していくために,「補充的な学習」,「発展的な学習」,「課題解決学習」に内容を分類してコースを設定した。各教科で検討して1つの内容で実施したり,補充的内容と発展的内容の両方を扱うコースもある。2コースを開設する数学科では「補充的な学習」と「発展的な学習」,3コ−スを開設する英語科では「補充的な学習」(2コ−ス)と「発展的な学習」(1コ−ス)に分けた。どのようなコース内容にするのか各教科内,教科間で話し合いバランスが取れるようにしている。

 2)  開設までの手順

 本校では,できる限り生徒の希望を尊重し対応できるように,選択教科開設まで次のような基本方針を立てた。

 ア) 希望調査をふまえ,できる限り生徒の希望を優先させるよう配慮する。

 イ)  希望にかなり偏りがでた場合

 a) 生徒の希望人数が少ないコース担当者には,週2回でなく,週1回だけそのコ−スを実施し,希望人数の多い教科のTT(補助)へまわれないか,係がコース担当者に相談してみる。

 b) 少々人数が多くても受け入れ可能だ(適正規模は30名以下)と担当者の了解が得られた場合は,希望どおり受け入れる。

 ウ) 生徒に人数情報を提供し,再度希望を提出してもらう

 さらに今年度の3年生では次の方針を加えた。

 エ) 3年生の英語と数学では,補充及び発展コースを増設し,個々の生徒の学力を伸ばすようにより一層対応した学習を行う。

 オ) 3年生の選択音楽では,「合唱コース」を設置し,水曜日と金曜日の2クラスではなく,水曜日に合同1クラスで実施し,指導者を2人とする。

 カ) 3年生では従来の(国語,社会,数学,理科,英語)・(音楽,美術,保体,技術,家庭)のそれぞれのグループから1コースずつ選択する方法からT群(国語,数学,英語)とU群(社会,理科,音楽,美術,保体,技術,家庭)のそれぞれから1コースずつ選択する方向に変更する。

 3)  ガイダンス(全体ガイダンス,コースガイダンス)の充実

 生徒の興味・関心,能力・適性を生かした選択教科を行うためには,各コースの実施内容が正確に伝わるようなガイダンスの実施と,生徒の希望を生かしたコースの開設が必要である。

 選択教科の開設にあたって,2年生,3年生ともに体育館において全体ガイダンスを行っている。全体ガイダンスでは,選択教科の意義や選択の仕方の説明や,各教科ごとの担当者が概略を説明する。

 さらに,別の日に2時間各コースごとの詳しいガイダンスの時間を設けた。その時には,少人数の中で質問や要望を出しやすくするために,各コースごとに教室でガイダンスを行った。今年度は2年生はすべてのコースのガイダンスを受けることができ,3年生は全部で6コースのガイダンスを受けることができた。コースガイダンスでは,各コースの年間計画や学習内容を具体的に知ることができる。また体験的に授業を受けたり,昨年度までの選択教科の作品を見せたり,生徒の要望を担当者が聞き内容を改善することもある。

 このようにガイダンスの時間と回数を多くしたのは,生徒が主体的に考えたり教師と相談できる期間を確保し,個々の生徒にあった適切な選択を促し学習への意欲を喚起するためである。

 4)  選択教科ノートの活用

 自ら進んで学習に取り組み,目標を達成しようとする力を育成するために,指導内容の充実と指導法の改善を目指して検討してきた。

 生徒が自ら課題を設定するためには,自分の学習状況を振り返りながら把握し,次の目標を立てさせるような方法がよいのではないかと考え,選択教科ノートの活用に少しずつ取り組んできた。これは授業を振り返り,反省や感想,次の目標や要望を記入するものである。今年度から多くの教科で取り入れている。ただし教科の特性もあり,共通したものではなく,各教科ごとに独自に作成,活用していった。

 これにより,生徒は自らの学習を反省し,また教師は各生徒の学習状況をつかみ,生徒を支援することができると考えた。

 (3)  「総合的な学習の時間」における「生きる力」の育成

 本校の総合的な学習の時間(以下「総合」)の目的は,必修教科及び選択教科と連携して「生きる力」を育成することにある。そのために,個人が自ら課題(テーマ)を設定して調査研究を行い,その成果を発表する「個人課題研究」を3学年共通の学習課題としている。個人課題研究の基本的な考え方としては,生徒一人ひとりの興味・関心を大切にし,体験的な活動を積極的に取り入れ,地域との交流も加えながら,「みつける」→「調べる」→「まとめる」→「発表する」→「ふり返る」を計画的に実行し,生徒の心に達成感や成就感をもてるようにすることである。このような,「総合」の学習活動によって,課題設定能力や調査研究を進める思考力,成果をまとめ発表する表現力を身につけ,「生きる力」を育てることを目指した。

 本校の「総合」においては,「生きる力」を育成する上での重点事項を以下の5点に絞り,取り組むべき指導事項についての研究を進めた。

 1.自ら考え,課題を設定する力を育成する。

 2.自ら進んで課題に取り組む力を育成する。

 3.成果をわかりやすくまとめ,発表する力を育成する。

 4.他者の発表を参考にしたり,自らの活動を振り返ることにより,新たな課題を見つける力を育成する。

 5.進路学習を通して,自分自身の生き方について考える力を育成する。


 1)  個人の興味関心に基づくテーマ設定

 ア)  個人研究が「総合」の中心

 本校では,あくまで個人の興味・関心にもとづき調査研究を進める個人研究を「総合」の大きな柱とした。自分自身の「調べてみたい」「研究してみたい」という内なる欲求を大切にし,自分自身の力で問題に取り組み解決することにより,個人の「生きる力」を伸ばすことができると考えたからである。

 イ)  発展的なテーマ設定の工夫

 教科学習が1年・2年・3年と進むにつれて内容が発展的になるように,総合学習でも学年が進むにつれテーマや内容が発展的になるよに工夫した。1年生ではフィールドワークなどの実地見聞や実習が行いやすく,身近でテーマ設定もしやすい伊勢原市を中心とした「郷土を知る」を学年のテーマとした。2,3年生は個人が興味・関心のある課題を見つけ,自分自身がやってみたい内容を研究する「自由テーマ」とした。各学年とも,生徒自身の興味・関心を大切にしたテーマ設定になるよう配慮した。

 ウ)  ウェビング表の活用

 個人に合ったテーマをいかに設定するかは,「総合」が成功するかどうか重要なカギを握っている。テーマが決まったらウェビング表を生徒一人ひとりが作成し,テーマの広がりや深まりを確認する。ウェブとは「クモの巣」のことで,ウェビングとはテーマから関連する事項が密接に関連を持ち,しかも広がりがあるかどうかを見る有効な手段である。

 2)  テーマ追究学習の実践

 ア)  個に応じた指導・支援

 「総合」は個人によってテーマが違うため,一人ひとりに応じた指導が必要である。クラス単位で学級担任が指導していたものを,昨年度より少人数クラス,そして今年度より課題別クラスも実施して,個に応じた指導を行いやすくしている。

 a)  少人数クラス <今年度の2年生の例>

 7クラスを,1組から出席番号などで機械的に11クラスに分け,生徒一人ひとりに教師の目が届きやすくした。1クラス10人程度減っただけであるが,教師の支援がしやすくなり,子どもたちも落ち着いて取り組めるようになった。

 b)  テーマ別クラス <今年度の1年生の例>

 8クラスの子どもたちから出てきたテーマを,できるだけ同じテーマになるように,また,各クラスの人数にばらつきができるだけ出ないように,教師の方でテーマごとに10クラスに分けた。同じ傾向のテーマなので,担当教師もよりきめ細かい支援ができるようになるだけでなく,受け持つ生徒の人数も少なくなるので,一人ひとりに目が届きやすくなるという2つの効果をねらっている。

テーマ1大山(31人)テーマ2歴史・神社・仏閣・城(32人)
テーマ3産業(31人)テーマ4生物(31人)
テーマ5地学など(27人)テーマ6伝統文化(26人)
テーマ7環境(32人)テーマ8福祉(27人)
テーマ9施設・教育(26人)テーマ10スポーツその他(26人)

テーマ1 大山 (抜粋)
氏名テーマ名
大山豆腐について
大山の名物
大山ごま
大山の旅館について
大山街道について

 イ)  振り返り用紙の活用

 「総合」の時間の最後5分を使い,その日に行った活動・反省・自己評価,次回の予定などを簡単に書きとめる作業を行っている。そうすることによって,生徒が自分の活動状況を反省し,教師が生徒一人ひとりの活動状況を把握することができる。

 ウ)  研究の経過・成果のファイル

 本校では,生徒一人ひとりがクリアファイルを持ち,活動の記録や振り返り用紙などをファイルしている。生徒が自分の活動を振り返り,反省し,学習を深める材料となっている。

 エ)  フィールドワークの実施

 深まりのある研究にするために,現場に足を運んでの実地体験や実験観察を行うフィールドワークを実施している。1年生では1月に,2年生では6月に,3年生では夏休み(任意)に実施している。

 実際に自分自身が見聞きして体験している研究成果には説得力がある。発表会でも,そうした発表は聞く生徒も興味を持って聞き,質疑応答も活発に行われた。また,フィールドワークを行う際には,生徒が自分達で計画を立て,訪問先とのアポイントメントも自分たちで取っている。

 オ)  「総合」の時間割設定および図書室パソコン室の利用

 フィールドワークやまとめ・発表の時間を充分確保するために,各学年とも午後に2時間続きの時間を設定した。

 本校は,全校生徒800名を越える大規模校のため,全学年同じ時間に「総合」を設定すると,図書室やPC室の利用に重なりが多くなり,生徒一人あたり活用できる資料が非常に少なくなってしまう。そこで,火・木・金の午後の時間に3つの学年を振分りけて「総合」の時間を設定し,各学年が身軽に活動できるようにした。

 また,コンピュータの使用希望を朝の学活でとり,午前中のうちに午後の使用時間を割り当てて効率的にコンピュータが使えるように配慮したり,クラスごとにコンピュータの割り当て台数を決めを,各クラスがいつでも5台はコンピュータが使えるようにする工夫も行っている。図書室も,基本的に教師を配置し,希望者がいつでも使えるようにしている。

 3)  メディア学習の実施

 資料の集め方・まとめ方・発表の方法を修得するメディア学習は,「総合」を充実させ,わかりやすく説得力のある発表にするために必要なことである。本校では,3年間に次のようなメディア学習を行う。特に,1年生ではメディア学習に充分な時間をとり,その後の「総合」に活用できるようにしている。

 ア)  資料の集め方では ・・・・・・ 学校の図書室の使い方,PC室のインターネットの使い方,市立図書館の利用法,依頼電話のかけ方,取材の仕方

 イ)  まとめ・発表では ・・・・・・ 新聞講習会の実施,個人新聞の作成,キーワードカードによる発表法,OHPによる発表法,PCによる画像処理の方法,プレゼンテーションソフトなどによる発表法,効果的なわかりやすい発表の仕方,発表会の司会進行

 4)  中間発表会・クラス発表会・全体発表会の実施

 発表会の意義は,他の人に研究の成果や価値を知ってもらうこと,自分自身の研究を振り返ったり取り組み状況を再確認できることの2点である。

 ア)  テーマ追究学習を充実させるための中間発表会

 中間発表会を行うことによって,子どもたちは,現在の自分の活動状況や今後自分が何をやるべきかを明確にすることができる。また,教師も生徒の活動がよく見えて,教師からのアドバイスも生きたものになる。

 イ)  お互いに学び高め合うクラス発表会

 研究の成果は,一人ひとりがクラスで発表する。少人数クラスや課題別クラスに分かれていた生徒も元のクラスにもどし,さまざまな発表を見る。発表方法は基本的に個人の自由で,メディア学習で学んだ成果を生かせるようにする。

 発表方法で多いのは,プリントや画用紙・模造紙によるものであるが,キーワードカードと写真やグラフを組み合わせたり,OHPを使ったり,時間をかけてプレゼンテーションソフトなどに挑戦したりする生徒もいる。

 よりよい発表を行おうと,多くの生徒は一所懸命発表の準備を行う。発表は質問を入れて1人5分程度であるが,質問も多く出て活発な発表会が行われた。保護者や地域の方の参観もあった。

 ウ)  視野を広げる学年全体発表会

 学年のすぐれた研究内容・発表方法を見ることによって,一人ひとりの研究によい刺激を与え個人研究の今後の参考にすることができる。

 5)  相互評価と自己評価

 クラス発表会の時,必ず相互評価を行う。相互評価はメッセージカードに書くなどして,発表者本人にかえしいく。そうすることによって,お互いに認め合いやる気を起こすことにつながっていく。

 その後,自己評価を行う。各自は他の意見や評価を参考にし,自分の研を客観的に評価していく。さらに,次の「総合」の取り組みに対する意欲へとつなげていく。

 6)  職場体験学習の実施

 2年生では,自分の希望する職場にでかける職場体験学習を実施している。この学習には事前の準備と事後のまとめに時間がかかるが,当日の体験はもちろんのこと事前の準備から訪問先とのアポイント取りまで生徒自身が行うため,生き方を考え,深める学習としてふさわしいものと考える。

平成15年度 職場体験学習実施要項(抜粋)

 1. 目的

 (1)  職場体験を通し,はたらく人の姿に接したり,体験することにより望ましい職業観についての理解を深める。

 (2)  進路選択の視野を広げることにより,自分の生き方を考え,学習意欲を高る。

 (3)  体験を通し,職場での協力の大切さを理解し,人の思いやりや正しいマナーとルールなどの大切さを知り,適応能力を養う。

 2. 日時 平成 15 年 11 月 18 日(火)8:30〜

 3. 対象 2学年生徒

 4. 活動範囲 原則として伊勢原市内

 5. (以下略)

<体験先>

     保育園,老人ホーム,伊勢原駅,警察犬愛犬訓練所,消防署,県警本部,動物保護センター,県立歴史博物館,生命の星・地球博物館,パン屋,洋菓子店,和菓子店,自動車販売店,楽器店,旅館,ラーメン店,スポーツ店,そば屋,米店,美容院,農家,コンビニエンスストア,その他

 7)  「総合」の評価について

 通信票への記述は,各自が努力したところ工夫したところ,身についた力などを個人内評価し,文章で表現する。それにより,生徒のやる気が引き出せると考える。本校では,6つの観点を設定し,その中でも,特に顕著な点を指導要録や通信票に記述している。

6. 成果と今後の課題

 (1)  「選択教科」においては,9割程度の生徒が「有意義な活動であった」,「意欲的に取り組めた」と答えている。これは多くのコース設定やガイダンスの充実が図られたため,自分の興味・関心,能力や適性に基づいた選択がなされ,各選択コースにおいて,目標を実現しようと取り組んだ成果であると思われる。

 (2)  「総合的な学習の時間」においては,クラス発表会や学年全体発表会などで,他人の優れた発表を見る機会を持つことができ,ステップアップのためのよい機会となった。また,クラス発表会で相互評価を行うことにより,生徒の相互理解が深まり,一人ひとりの個性を認め合うことができた。

 (3)  「必修教科」においては,評価基準の見直しはもとより,評価計画,評価場面,評価方法は客観的で妥当性をもっているか,生徒と保護者への説明責任を果たしているかなどの点から今後も改善・検討が必要である。

〈参考資料〉「総合的な学習の時間」の指導計画


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