教育改革のとりくみ 目次
中高一貫教育の実践−世界に通じる骨太の人間の育成をめざして

新潟県立村上中等教育学校

1.学校の概要
 本校は、平成14年4月、募集停止となった新潟県立村上女子高等学校の施設・設備を使って開校した中等教育学校です。(註1)
 募集人数は1学年2学級80人で、6年後に6学年480人が揃います。
 現在、男子33人、女子49人、計82人が活動を開始しています。

所在地
〒958-0031新潟県村上市学校町6番8号
TEL 0254-52-5115 FAX 0254-53-6773
e-mail mses@murakamijoshi-h.ed.jp

二つの校章がある正面玄関
(左が中等教育学校の校章)

○出身地域別生徒数
  
 村上市岩船郡新発田市豊栄市北蒲原郡合 計
男 子1713 33
女 子2519 49
合 計423282

○教職員数
  
 校長教頭教諭養護教諭事務技術講師合計
人数19
  *ALTは4人来校

註1:現在、同一校舎に村上中等教育学校の1年生82人、村上女子高校の2・3年生251人が学んでいます。教務室はそれぞれ別。教室は普通教室棟の2階を村上中等教育学校が、3階を村上女子高校が使用しており、特別教室・体育館・グランド等は共用です。

2.本校の目指す教育
  (1) 教育目標
 主体的に学び、確かな学力と豊かな人間性を身に付け、国際的な視野をもって社会に貢献できる人間の育成

  (2)

 校是
 「 Let's try! 挑戦・創造・貢献 」

  (3)

 教育課程等
 6年間を通じた計画的・継続的な教育指導で、世界に通じる生徒を育てたいと思っています。このための気持ちの持ち方として「Let's try!」を標榜しています。
 これからの時代に生きる生徒にとって、英語が話せることとコンピュータが使いこなせることは、欠かせないことです。

○前期課程の教育課程表
  
 1 年2 年3 年
国 語140105105
社 会10010080
数 学140140140
理 科10010080
音 楽453535
美 術453535
保健体育909090
技術家庭656530
英 語140140140
選  択

学校設定教科
45100175
国際理解
情報科学
(45)
国際理解
情報科学
(45)
国際理解
情報科学
(45)
 国 語
数 学
英 語
(30)
国 語
数 学
英 語
(45)
音 楽
美 術
体 育
技 術
家 庭
(25)
科学I
科学II
世界の国々I
世界の国々II
(60)
音 楽
美 術
体 育
技 術
家 庭
(35)
 
総合的な学習の時間707070
道 徳353535
学級活動353535
105010501050
    このため、前期課程では、「数学」「英語」は標準より週当たり1時間多く実施しています。また、 中等教育学校の教育課程の基準の特例を使って、「国際理解」「情報科学」という選択教科を設定しました。現在、3年生までに全員が英検準2級以上を取得することを目指して、取組を開始しています。
 本校では、本物に触れる授業を大切にしたいと考えています。そのため、生徒には、できるだけ学校に出て,いろいろな体験をさせたいと考えています。今年度は、7月に粟島で体験的な活動をしたり、8月には廃校になった村上市の大栗田中学校で体験活動を含めた学習合宿を予定しています。その際、地域にはいろいろな専門家がいますので、そうした人たちに積極的に参加していただきたいと考えています。
 また、学校内の授業についても、元大工さんだった方から「技術」の指導に加わっていただいたり、外国経験のある人から「英語」や「社会」、「国際理解」の時間等に加っていただくなどして、中身の濃い授業をしていきたいと思っています。
*中等教育学校の「教育課程の基準の特例」を適用

3.これまでの取組から
 外部の方を指導者に招いた授業として、4月以降、「保健体育」の時間に、エアロビクスのインストラクターに来てもらって指導していただきました。
 5月2日には、「いわふね・村上学」と位置付けた総合的な学習の時間の一環として、関川村の若ぶな高原から山形県の小国町に抜ける大里峠越えを体験しました。
 次に、その取組を紹介します。

実践報告 巡検を取り入れた遠足の実施

 開校から約1か月経った5月2日、学校から約30km離れた山形県境の「大里峠」へ、遠足を実施しました。
 遠足といっても、親睦やレクリェーション的な活動ではなく、テーマに基づく研修活動を中心とした巡検で、本校の「総合的な学習の時間」のテーマ『いわふね・村上学』の一つに位置付けた活動でした。

  
1.ビジュアルでインパクトのある事前学習
 遠足を1週間前に控え、今回の巡検先「大里峠」について、生徒が視覚的、体験的に学習できるように二つの活動を組み合わせて事前学習を行いました。
 一つは巡検先の地元で、大里峠の伝説を紙芝居で語り継いでいらっしゃる川又政男さんの実演。もう一つは現地の実写画像や研修に登場する実物を交えたオリエンテーションでした。ビジュアルでインパクトのある学習を通じて、生徒の研修への関心が高まり、「すごい場所なんだぁ。」「おもしろそう。」「早く行きたい。」といった声が聞かれました。

紙芝居での事前学習

2.活動を通して探究でき、生徒が選択可能な課題の設定
 今回巡検場所に選んだ大里峠は、5月でも雪が残る峠で、自然豊かな山です。また、この峠は旧米沢街道の要衝で、途中には戦国末期の金山跡や明治から昭和初期にかけて採掘されていた銅山跡があるなど歴史の山です。そして、地元に伝わる大蛇伝説にまつわる「蛇骨」が発掘される伝説の山でもあります。
 この多面的な追究が可能な山について、今回、生徒は「鉱山探検調査隊」「蛇骨発掘調査隊」「山野草調査隊」の3つの中から研修内容を選択して事前学習を進め、当日は地元の専門家3人から解説をしていただいて研修を深めました。


鉱山調査隊の様子

山草調査隊の様子

蛇骨調査隊の様子

3.生徒全員が取り組む「マイレポート」
 今回の探究活動は5,6名の班での活動でしたが、レポートは個人レポートの形をとりました。事前学習や当日の解説、資料、事後の調べ学習、採取した実物などを活用し、生徒一人一人がアイデアを絞ってレポート作成に取り組んでいました。限られた紙面に一人一人の個性や工夫が活きるレポートとなっています。


[PTAの協力]
 今回の遠足は峠越えということで、その安全性の確保や途中での休憩、トイレなど、配慮しなければならない点が多々ありました。このような点に関して、学校から呼びかけたところ、平日にもかかわらず20人近くの保護者の方から御支援をいただくことができました。保護者・教員が一丸となって、生徒の活動に関わっていく、このような体制を、6年間を通じて継続していきたいと考えています。


山頂でのPTAのみなさん

 

巡検のゴール
(山形県小国町立玉川小中学校で)


4.成果と今後の課題
 本校は新潟県北部の十数市町村から生徒が通学する、広い地域を学区とした学校です。
 今回の活動は、体験の中で自然や人に関わる活動を中心に据えましたが、このような、地域の「本物」を体験することによって、言葉ではなく体で「いわふね・村上学」の奥の深さや、体験活動・探究活動の大切さ、おもしろさを感じさせることができました。充実した個人レポートの様子や「今までで、一番楽しい遠足だった。」というような声が生徒から聞かれたことも成果の表れと考えています。
 学校がスタートして、まだ1か月という早い時期での活動でしたが、生き生きした生徒の目に、これからの本校の進む方向を再確認することができました。これからも、こうした活動を通じて、生徒の目を地域から次第に日本あるいは世界へと向けさせ、6年間の計画的・継続的な教育の中で、骨太で真の学力を身に付けた人間を育成していきたいと考えています。


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