製作活動をともなう選択理科の教材
−ペットボトルロケットを飛ばそう−
富士市立富士南中学校
鈴木 康裕
大会の様子1
3・2・1・発射!
大会の様子2
僕のロケットは飛ぶかな
 ここまで飛んだ!
僕のロケットが
いちばんだ

 「3・2・1・発射!」「ウォー,すごい」
 「今度は,僕の番だ。飛ぶかな?」「ペットボトルがパンパンで危ないよ」「もう少しだけ入れるよ」「僕は目が点になった」

 「自分の作ったロケットが空を飛んだということに,とても感動しました。すごくうれしいです。しかし,70m飛んだロケットもあるので,今度は“目指せ50m”です」
 「50m飛んだけど,まっすぐ飛べばもっと飛んだかも」
 「みんな,よく飛ぶなぁ。よく飛んだS君のロケットは,ボディが丈夫で形がしっかりしていて,空気の量が多かったぞ」

1.はじめに
 理科嫌いがささやかれている中,最近,子供科学館とか科学博物館などが各地に作られている。これら新設の科学館は体験型で子どもたちが操作したり,実験して遊ぶことができるようになっている。そして,いずれも大盛況だと聞く。しかし,学校では「理科の時間だと自由に実験ができない。実験すればレポートを書かなければならない」という不満を子どもたちは持っている。また,中学校の理科授業では,製作活動は限定されている。クラブ活動は,実質的には部活動との同心円活動を取り入れている。
 そこで,本校では数年前から,自分で作って,作ったものを実験できるペットボトルロケット教材を選択理科に取り入れた。大変人気のある教科になっている。その実践の様子を紹介する。

2.授業の実際
ここが大切だ まっすぐ,まっすぐ

(1) 選択理科
 金曜日の第5時に選択Aとして選択理科は3コース用意されている。「ペットボトルコース」は第1理科室で25名である。他に「電気工作コース」「植物採集コース」がある。
(2) ペットボトルコース
 ペットボトルコースとはいえ,1年中というわけにはいかないので,生徒の学習希望の多い「春の野草を見に行こう」「カエルを解剖しよう」「ペットボトルロケットを飛ばそう」「紙飛行機を飛ばそう」「大きな結晶を作ろう」等の課題を年間指導計画に取り組み,本コースを開いた。
(3) 「ペットボトルロケットを飛ばそう」
 この課題には9月11日から取り組み,5時間程度の予定で始めたが,製作に手間どる生徒も多く,11時間の現在でも製作途中の生徒もいる。
(4) 製作方法
 日本ペットボトルクラフト協会から出されている機体セット(キャップと発射台との接合部品,1000円)のみを生徒は購入,付属の「作り方」を参考に製作した。
(5) 実 験
 飛ばし方,遊び方は一切規定しないで,自由に実験させた。始めは飛ぶかどうか,飛んでもどのくらい飛ぶのか,見当もつかなかった生徒であるので,適当に水の量,空気の量を工夫していたが,一度自分で飛ばして以下の感想を持っていた。
 「風を切るようにきれいなフォームで飛んだ。70m飛んだときには目が点になった」(K.S),「翼が壊れてしまったので,修理をして今度は50m以上飛ばしたい」(T.I),「船体を少し上に曲げて作った。その方が上に上がり,遠くまで飛ぶだろう」(A.K),「水の量は少なくした方が軽くなるので,飛ぶのではないか」(S.T),「空気の回数をきめてやれば,どの条件のときにいちばん飛ぶかがわかる」(S.T),「水の量は1/4で,空気の回数を10回と35回で実験した。思った通りの結果が出た」(N.S),「水,空気の量を一定にして,誰のロケットがいちばん飛ぶか,やってみたいな」(T.W)
(6) 結 果
 「ペットボトルロケットを飛ばそう」という学習課題から,生徒は「遠くに飛ばすには」という学習問題を自らみつけた。そして,船体の形,水の量,空気の量をいろいろ工夫し,遊びながら様々な試行を繰り返した。

3.考 察
 日本ペットボトルクラフト協会で指定している方法を一切教えないでの実験であった。最初は空気入れの調子が悪く,飛ばなかったロケットであるが,自宅から空気入れをもってくるなどの努力の結果,歓声が出るほどの体験をした。
 実験中,生徒は水の量により飛び方に違いが出ると考え,各自,水の量を工夫して試行していたが,「空気の量は多く入れれば入れる程飛ぶが,危険も考えられるので40回を限度にしよう」等自分たちできまりを作ったりしている。そして,最後は発射台の角度にも注目してきている。ここらで本コースの実験は終了しそうであるが,「遠くに飛ばすには」というねらいを自分で考え思考することで,失敗もあるが,これが結果的に学習となっているようである。
 学校での理科授業の時間は制約があり,製作や考える時間を保証してやれないが,選択理科がその欠点を補うものと考える。
 「ペットボトルロケットを飛ばそう」という課題であったが,自分の祖父が作っていた「土竜除け」「魚仕掛け」を作ってみたいという自由な発想も大切にしたいと考えている。

ペットボトルで,おじい
さんがこんなもの作っていた
作業が遅いのよ。私たち

4.課 題
 製作に個人差があり,運動場での大会に参加できなかった生徒がいた。参加した友人から話を聞くだけだったり,「テレビでやっているのを見て,私のロケットも飛ばしたかった」と書いていたり,個人差に対応する時間を設ける必要性を感じた。

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