授業実践記録

科学的に探究する能力を培う理科指導 〜プラスチックを題材として〜
神奈川県川崎市立西生田中学校
小平 拓巳 ・ 大槻 隼也

 

1.はじめに

2008年1月に発表された中教審答申をうけ,2008年3月に新しい学習指導要領が告示され,2009年からはその移行が進んできた。改訂の経緯の中にも「知識基盤社会」である今日の状況を見据えて,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」を育むことの重要性が打ち出されている。

理科においてもその基本方針が答申の中で次のように示されている。

@科学的に調べる能力や態度を育てるとともに,科学的な認識の定着を図り,科学的な見方や考え方を養う。
 
A「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」などの科学の基本的な見方・概念を柱とし,小・中・高等学校を通じて発達や学年の段階を踏まえた内容の構造化を図る。
 
B科学的な概念を使用して考えたり,説明したりする探究的な学習活動の充実。
 
C理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会を持たせ,科学への関心を高める観点から,実社会・実生活との関連を重視する内容の充実。

今回はこのような新学習指導要領の方向性を考慮した上で,理科の学習において新しく追加項目となった2単元「身のまわりの物質」のプラスチックについて1年生で行った授業を紹介する。

 

2.授業の概要

今回は2単元1章のまとめとしてプラスチックの性質について2時間続きの授業を展開した。1時間目は,実験用のプラスチック板キットを用い,4種類のプラスチック(ポリエチレン,ポリスチレン,ポリエチレンテレフタラート,ポリプロピレン)の性質を調べた。各班で既習事項や日常の知識を参考にしながら調べる方法(密度の測定,燃やしてみるなど)を考え,実験を行った。2時間目は,身の回りのプラスチック製品が一体どの種類のプラスチックで作られているのかを1時間目の実験結果をもとにしながら検証方法を考えて調べた。

また,この2時間の授業を通して,ホワイトボードを自分たちが考えた実験方法や実験結果を書かせるなどの思考プロセスの手段の一つとして使用し,ゲストティーチャーとして社団法人プラスチック処理促進協会の方に来ていただき,導入やまとめをしていただくなどを行った。

 

3.実践例(指導案)

理科学習指導案

1.単元名

第1分野 第2単元 「身の回りの物質」
<小単元> いろいろな物質とその性質 (9時間)

2.単元の目標

身の回りの物質についての観察,実験を通して,固体や液体,気体の性質,物質の状態変化について理解させるとともに,物質の性質や変化の調べ方の基礎を身に付けさせる。

3.指導計画

(1)単元の指導計画

第1章いろいろな物質とその性質
どのようにすれば物質を区別できるかな・・・・・・1時間
磁石や乾電池で物質を区別しよう・・・・・・・・・1時間
加熱したときの変化で物質を区別しよう・・・・・・2時間
てんびんを使って物質を区別しよう・・・・・・・・3時間
プラスチックを特徴で区別しよう・・・・・・・・・2時間
(本時 2時間目)
 
第2章いろいろな気体とその性質
空気にふくまれる気体とその性質をさぐってみよう・2時間
そのほかの気体を区別しよう。・・・・・・・・・・4時間
 
第3章物質の状態変化
物質のすがたはどのように変化するのか・・・・・・1時間
状態変化と温度の関係を調べよう・・・・・・・・・2時間
混ざり合った物質を分ける・・・・・・・・・・・・2時間
 
第4章水溶液の性質
とけるとはどういうことなのか・・・・・・・・・・2時間
溶質をとり出してみよう・・・・・・・・・・・・・3時間
酸性やアルカリ性の水溶液を調べよう・・・・・・・3時間
酸とアルカリを混ぜるとどうなるか・・・・・・・・3時間

 

 

 

(2)小単元の指導計画

第1章 いろいろな物質とその性質

学習項目 学習内容
どのようにすれば物質を区別できるかな 話し合い活動1 どうやって判断する?
見た目では区別のつかない身の回りの物質を区別する方法をグループで考え,それらを持ち寄りクラスで最もよい方法を考察する。
     
磁石や乾電池で物質を区別しよう 実験1 磁石や電気で物質を区別しよう
磁石や乾電池を使い調べた物質を,その結果によって金属と非金属,さらに金属の中でも鉄に分類できることを知る。
   
加熱したときの変化で物質を区別しよう 実験2 ガスバーナーを使ってみよう
ガスバーナーを正しく安全に使うための基本的な操作を学ぶ。
     
実験3 加熱した時の変化で物質を区別しよう
炎の中に入れた物質を,その変化の違いによって有機物と無機物に分類できることを知る。
てんびんを使って物質を区別しよう 話し合い活動2 どうやって嘘を暴いたか?
アルキメデスの話を題材にアルキメデスが嘘を暴くために思いついた方法をグループで考察する。
同じ体積でも物質によって質量が異なることを理解する。
   
実験4 いろいろなものを測定しよう
いろいろな物質の体積や質量を求めるために必要なメスシリンダーやてんびんの基本的な操作を学ぶ。
     
実験5 密度をつかって物質を特定しよう
物質の体積と質量の関係から密度の定義について理解し,見た目が同じ2つの物質をその物質の密度をもとに特定する。
 
プラスチックを特徴で区別しよう

本時2時間目
実験6 プラスチックの性質を調べよう
4種類のプラスチック板を使い,いろいろな実験方法で各プラスチックの特性を見つける。
話し合い活動3 プラスチックを種類分けするには?
実験結果を参考にしながら日常のプラスチックがどの種類なのかを根拠をたてて予想し,それを確かめる方法と手順を考える。
 
実験7 身近な製品からプラスチックの種類を探る
話し合いをもとに考えたプラスチックの種類を断定するための方法と手順を使って実験を行い,身近なプラスチックの種類を調べる。
 

 

(3)小単元の評価規準

自然事象への
関心・意欲・態度
科学的な思考 観察実験の
技能・表現
自然事象についての
知識・理解
身のまわりの物質を区別する方法に興味をもち,物質を区別する方法を考えようとする。
物質の燃え方の違いに興味を示し,いろいろな物質について調べようとする。
物質の体積と質量の関係に興味を示し,いろいろな物質について調べようとする。
磁石や乾電池で調べた物質を,その結果によって分類することができる。
炎の中に入れた物質を,その結果によって分類することができる。
各々のプラスチックの性質を調べ,その結果から日常のプラスチック製品を種類ごとに分類することができる。
物質が磁石につくかどうか,電気を通すかどうかを適切に調べることができる。
ガスバーナーを正しく安全に使うことができる。
物質が燃えるかどうか,二酸化炭素が発生するかどうかを安全に正しく調べることができる。
てんびんでものの質量を正しく測定することができる。
金属と非金属の違いについて理解する。
有機物と無機物の違いについて理解する。
質量の定義について理解する。
同じ体積でも物質によって質量が異なることを理解する。
密度の定義について理解する。
プラスチックにも種類がありそれぞれの性質に違いがあることを理解する。

 

(4)テーマに迫るための手立て

小単元の指導計画
 新学習指導要領では,本単元でプラスチックを扱うこととなっている。教科書では加熱による実験で有機物と無機物を学習しその後,有機物の1つとしてプラスチックが紹介されている。しかし,今回は小単元の最後にプラスチックを扱うように計画を立てた。このことによって小単元のまとめとして,多様な方法でプラスチックの性質を調べることができ,より科学的に探求する活動を取り入れることができる。
 
話し合い活動
 科学的に探求する活動の中で自身の考えを一層深めていくためには,自分の考えだけにとらわれず,他の人の意見を聞き,取り入れていくことも時には必要であると考えた。そこで本単元では学習の中に話し合い活動の場面を何度か設けた。このことで多面的な見方で考え,現象を捉えることができ,科学的な思考をより深めることが期待される。
 
ホワイトボードの活用
 話し合い活動を活発にするために本校の理科の授業では,考察の場面でホワイトボードを活用してきた。考察を話し合い,発表する手段として多く使用してきたが,今回は予想や自分達が考えた実験の方法を書き込むようにした。また,学習における思考の経過を整理して書き留めるために,他の班の意見を聞いたり,実験を行っていく上で考え方が変わったら書き変えていくようにした。考察のみではなく多くの場面で書いたり消したりができるホワイトボードを活用することで探求の深まりが増すと考えられる。

 

 

4.本時の活動

(1)目標

プラスチックの種類やその性質に興味を持ち,プラスチックを種類分けするためのいろいろな方法を自ら考えて実験を行い,その結果をもとに日常で使用されているプラスチックを種類ごとに分類することができる。

(2)展開

  学習活動 指導・支援(○)と評価(●)
導   入 前時(本日4校時目)  
CDを加熱しプラスチックのシャボン玉を作る演示実験を見てプラスチックの性質に興味を持つ。
演示実験を行う。
身近なプラスチック製品にどのようなものがあるか,またそれらの素材にプラスチックがなぜ使われるかを考える。
ゲストティーチャーの紹介をする。(社団法人プラスチック処理促進協会)
展   開
プラスチックにも種類があることを知る。
 
身近なプラスチック種類の例
ポリプロピレン(PP)
ポリエチレン(PE)
ポリスチレン(PS)
ポリエチレンテレフタラート(PET)
プラスチックの種類が異なると性質にも違いが現れるかに疑問を持つ。
プラスチックの性質について興味を持つ。(関)
 課題1 プラスチックの性質を調べよう 〜種類が違うと性質が異なるか?〜
各班でプラスチックを種類ごとに区別する方法を既習の実験方法をよりどころにして考え,ホワイトボードに記入する。
実験
4種類のプラスチック板を使い,いろいろな実験方法で各プラスチックの特性を見つけ表にまとめる。
 
全班が必ず調べること
@ それぞれのプラスチックの密度
A 加熱による物質の変化
 
予想される生徒の実験方法
・ ゆでる
・ やすりでこする
・ 割ってみる
・ 塩酸につけてみる
・ 金づちでたたく
・ 曲げる
実験の結果をまとめる
話し合い活動
磁石や電気,密度や加熱による変化で物質を種類分けすることができたことを思い出させる。
金属の特徴からプラスチックは非金属であることを認識させる。
加熱実験では燃えるかどうかの他に燃え方の違いにも注目させる。
換気に充分留意させる。
ガスバーナー等の火の扱いには充分に注意させる。
臭いが出る気体が発生することについて留意させる。
実験に必要な器具を正しく安全に使用することができる。(技)
プラスチックの種類が異なると性質が異なることを考える。
身近なプラスチック製品がどの種類のプラスチックなのかを考える。
プラスチックにも種類がありそれぞれの性質に違いがあることを理解する。(知)
ま と め
実験結果をもとに,身近なプラスチック製品がどの種類のプラスチックなのかを調べるための実験方法を班で話し合い,ホワイトボードにまとめる。
実験方法を考える手だてとしてエタノール溶液(比重:0.85)を用意し紹介する。
導   入 本時(本日5校時)  
プラスチックは種類が異なると性質が異なることを確認する。
前時の学習内容を確認する。
実験結果をもとに,身近なプラスチック製品がどの種類のプラスチックなのかを調べる各班の実験方法を思い出す。
各班の実験方法を確認させる。
展   開
 課題2       身近なプラスチックを種類分けしよう
実験  
各班の実験方法を確認し,必要な器具を用意し実験を行う。
実験方法は各班がホワイトボードに書いた手順に従い行う。
 
予想される実験の手順
燃焼→エタノール溶液
水→エタノール溶液→燃焼
水→エタノール溶液→食塩水
水→エタノール→折り曲る
透明度→エタノール溶液→燃焼
透明度→エタノール溶液→折り曲る
透明度→エタノール溶液→食塩水     など
換気に充分留意させる。
ガスバーナー等の火の扱いには充分に注意させる。
臭いが出る気体が発生することについて留意させる。
理科室内に置いてある実験器具の他にあらかじめ必要と思われる材料を用意しておく。
実験に必要な器具を正しく安全に使用することができる。(技)
実験結果をもとに4つのプラスチック製品がどの種類のプラスチックかをホワイトボードに記入する。
実験の方法を考え,その実験結果から,日常で使用されているプラスチックを種類ごとに分類することができる。(思)
班ごとに実験の結果とそのように判断した理由を前に出て発表する。
それぞれの製品がどの種類のプラスチックかを知る。
PP : クリアファイル
PE : ジッパー付の袋
PS : CDケース
PET : 卵のパック
発表の際は班の全員が前に出る。
ま と め
ゲストティーチャーに話を聞き,プラスチック製品を分類することの有用性について感じる。
感想を授業プリントに記入する。
プラスチックには4種類以外にも様々な種類があり,プラスチックの性質に応じて用途を使い分けていること,利便性がある反面,地球環境への負担が問題視され始めて,リサイクルを積極的に進めることが必要となっていることを伝える。
実験や講師の話を聞く中でプラスチックの性質や用途について関心を高める。(関)

 

(3)評価

評価の観点 評価項目 判断する際の具体的な姿の例
自然事象への
関心・意欲・態度
プラスチックの性質について興味を持つ。
実験や講師の話を聞く中でプラスチックの性質や用途について関心を高める。
プラスチックの性質や用途に興味を持って実験を行ったり,話を聞いたりする中でその有用性について関心を持つ。
プラスチックの性質や用途に興味を持って実験を行ったり,話を聞いたりしている。
科学的な思考
実験方法を考え,その実験結果からプラスチックを種類ごとに分類することができる。
それぞれのプラスチックの性質を理解し,物質の性質を調べるための方法を考えて実験を行い,その結果からプラスチックを種類ごとに分類することができる。
物質の性質を調べるための方法を考えて実験を行い,その結果からプラスチックを種類ごとに分類することができる。
観察・実験の
技能・表現
実験に必要な器具を正しく安全に使用することができる。
実験に必要な器具を用途に応じて正しく安全に使用することができている。
実験に必要な器具を安全に使用することができている。
自然事象についての
知識・理解
プラスチックにも種類がありそれぞれの性質に違いがあることを理解する。
プラスチックの種類とそれぞれの性質について理解し,具体的な例を挙げながら説明できる。
プラスチックにも種類がありそれぞれの性質に違いがあることを理解する。

 

5.教材について

(1)プラスチックについて

私たちはプラスチックで作られた多くの製品に囲まれて生活している。プラスチックには多くの種類があり,各種の製品はその用途に最も適したプラスチックを選定して作られている。プラスチックの多くは石炭,石油を原料として化学合成される。プラスチックは腐ることがないため,廃棄されたものはいつまでも残り,また,燃やすと二酸化炭素や有害なガスを発生することもある。プラスチックの便利さと反対に,地球環境への負担が問題視され始めて,リサイクルを積極的に進めることが必要となっている。

(2)本時で使用したプラスチックについて

今回は数多い身近なプラスチックの中から生産量が多く,非常に基本的でプラスチックの性質を学びやすい4種類を選んでいる。2時間続きの1時間目の授業では,プラスチックの性質実験材料:ケニス(5種類6枚組 3800円)を使用したがその中に含まれていたポリ塩化ビニル(塩ビ)は,燃焼実験の際のダイオキシン等の問題があるため今回の授業では紹介程度にとどめ使用しなかった。

上記のプラスチックの性質実験材料に同封されていたケニス資料によると,試料1枚あたりの体積が4cmとあるので3枚重ねた質量を測定し,12cmで割った数で密度を求めた。それによるとPPの密度0.84g/cm,PEの密度0.87g/cmとなり,資料の値であるPPの密度0.9g/cm,PEの密度0.92g/cmと異なる値が得られた。これは,試料1枚当たりの体積に大きな誤差が含まれるためであると考えられる。

また今回は,日常に使われているプラスチック製品として@PP:クリアファイル(代用品:ビデオテープのケース)APE:ジッパー付きの袋(代用品:米や肥料の袋)BPS:CDケース(代用品:ビデオテープ本体)CPET:卵パックを用いた。この中でもPEに関しては低密度のものと高密度のものがあるため教材として用いる際は注意して選定しなければならない。ポリ塩化ビニルを用いる場合も可塑剤によって軟質のものと硬質のものに分けられるので注意が必要である。

(3)使用したプラスチックの性質

  PP
(ポリプロピレン)
PE
(ポリエチレン)
PS
(ポリスチレン)
(通称:
スチロール)
PET
(ポリエチレン
テレフタラート)
(通称:ペット)
身近に見られる
用途
コップ,
弁当箱,
容器,
洗面器,
ヒモ・ロープ付ふた衣装ケースなどの雑貨品,
ファイルの表紙
ポリバケツ,
ポリ袋
ビールびんコンテナ
薬品容器,
接着剤容器
密閉容器のふた
工事用ロープ,
フィルム
カセットテープケース,
CDケース,
鉛筆ケース,
使い捨てスプーン,
修正テープの透明ケース,
発泡スチロール
ペットボトル
録音・録画用磁気テープ,
電気絶縁フィルム
コイルのボビン
比 重 0.9
水に浮く
低密度:0.92
高密度:0,96
水に浮く
1.05
水に沈む
1.34
水に沈む
素材の色
(無着色の場合)
乳白色 乳白色 無色透明 無色透明
特 徴 割れにくい
薬品に侵されない
接着,塗装,印刷が困難
硬いもの(高密度)と柔らかいもの(低密度)ができる。
薬品に侵されない
接着,塗装,印刷が困難
硬い,割れる
薬品に侵されることがある
強靭
薬品に侵されにくい
熱に強い(耐熱性)
燃焼試験
@燃焼の難易
A炎を去っても燃え続けるか
B炎の性状
 
Cプラスチックの状態
D燃えるときの匂い
 
@燃えやすい
A燃え続ける
 
 
B先端黄色,
下端青
C溶融落下
 
D石油臭
 
 
@燃えやすい
A燃え続ける
 
 
Bローソク上の炎
C溶融落下
 
Dパラフィンの燃える匂い
 
@燃えやすい
A燃え続ける
 
 
B橙黄色,
黒煙が出る
C軟化
 
Dスチレンの匂い
 
@燃えやすい
A燃え続ける
 
 
B芯黄色,
下外端緑
C溶融落下
 
D特有の匂い
 

参考:ケニス資料

 

 

4.実践例(授業プリント)

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5.授業の様子

 

 

 

6.授業を終えての感想

今回の授業は2時間続きの授業で実験課題の設定,実験方法の検討,実験,考察,まとめを行う授業を展開した。1時間目は課題の設定,実験方法の検討,実験を行い,続く2時間目の授業で結果から生まれた新たな課題について実験・考察・まとめまでを行う時間を十分確保することができた。

考察は根拠を持った考察を行うことができており,また教師がまとめとして指導をする場面もこの授業の中で行うことができた。さらに,2時間続きの授業であることで時間に余裕があり,全部の班の考察を共有することができ,生徒の探究心を喚起することができた。

また,思考力・判断力・表現力を育むために黒板に貼ることができるホワイトボードを用いた。ホワイトボードには各班の実験結果や考察を書くことを通して,科学的な表現方法を学んだり,思考したことを明らかにしながら発表活動を行ったりすることをした。ホワイトボードはA3サイズのものを用い,限られたスペースの中で書き込んでいくので,生徒自身は得られた結果や考察をより洗練させて表現した。全ての班のホワイトボードを掲示することで視覚的に確認することができ,自ら得られたデータの信頼性や信憑性を確認しながら考察することができたり,各班の結果や考察を共有して各自の考えを深めていくことができたりした。そして,生徒は班や学級で深めたことを各自のレポート作成に反映させることができた。

さらに,今回は社団法人プラスチック処理促進協会の協力を得て授業を行った。これにより,日常生活や社会の中で使用されている代表的なプラスチックについてその性質や用途など理解を深めることができた。講師の先生のまとめの話の中に,私たちにとって身近なのに知らなかったプラスチックの活用方法について説明があり生徒から驚きの声もあがっていた。

 

 

7.終りに

私たちは,日常生活の中で多くのプラスチック製品に囲まれながら生活している。プラスチックには多くの種類があり,各種の製品はその用途に最も適したプラスチックを選定して作られている。プラスチックには便利さがある反面,廃棄されたものはいつまでも残り,燃やすと有害なガスを発生することもあるなど地球環境への負担が問題視され始めて,リサイクルを積極的に進めることが必要となっている。そのため,理科の授業においてもプラスチックについての知識などを伝えていくことが今後より一層必要であると考える。

また新学習指導要領では,科学的な知識や概念を活用して考察し表現することが重視されている。このことを踏まえ,今回は『科学的に探究する能力を培う理科指導』をテーマに「2時間続きの授業」「ホワイトボードの活用」「外部機関との連携」などを要素として取り入れた。また,実験時間の確保や表現活動の充実のためにICTも有効に活用した。このような授業展開は他の単元においても科学的に探究する能力を培う上で有効であった。

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