授業実践記録

ツツジ(オオムラサキ)の花の秘密
神奈川県相模原市立緑が丘中学校
今井 正巳

1.最初に

 単元の中でも,学校周辺で野外観察ができるのは非常に少ない。その中で植物の単元では,私はできるだけ多くの野外観察(ほとんど学校の敷地内)を実施している。植物の本当のおもしろさは野外観察でこそ十分発揮できると思うからである。しかし,野外観察は,生徒も関心が高いが,落ち着きがない生徒が気になる事や天気や花の咲く時期に左右されるため,計画通りにいかない難点もある。

 

2.単元名

(1) 1年2分野上 1単元 植物のくらしとなかま
    1 章 なかまをふやすしくみ
     
(2) 観察名 「ツツジ(オオムラサキ)の花の秘密」(ツツジの花の観察)
       
(3) ねらい    
  花の観察を通して,花のつくりを理解させ,受粉のしくみやいろいろな花のしくみについて気づかせる。

 

3.ツツジ(オオムラサキ)の花の観察

(1) ツツジの花のおもしろさ
   植物のおもしろさの一つに,植物の2面性が上げられる。一つは光に向かって 進む茎・葉の部分と暗黒の地面に潜ろうとする根の部分があるということ。また,虫に受粉のために来て欲しい,食害のために来て欲しくないという2面性も持っていることである。身近にあるツツジの花は,巧妙な虫に来てもらうための仕組みと来て欲しくない仕組みの両方を兼ね備えている。
   
(2) 方 法
   立ちながらの観察は疲れるし,落ち着かなくなるため,服装は体育着で行わせて,座って観察させ,話しを聞けるようにしている。自分が気づいたことだけでなく,友達が発表したものをレポートに書かせて,まとめさせている。
   
(3) パワーポイント
   ツツジの花の観察を4月下旬に実施したところ,生徒が「おもしろい!」を連発したので,5月のゴールデンウィークに,生徒にツツジの花の観察の確認させるために作成した。 クリックで拡大
   
  <スライド説明>
ツツジ(オオムラサキ)の写真。
 
よく公園や学校に植栽されている。
 
花びらの観察  
 
ヒョウ柄模様がある。→ネクターガイド(蜜のありかを教えている。この花びらだけが管になっている。)
花びらにしわがある。→ 葉脈と同じ。
5枚の花びらがくっついている。→ 合弁花

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がくの観察
 
5枚
毛がびっしり生えている。粘っている。
 
スライドではトリコームと書いたが,専門家からただの「毛」もしくは「粘着毛」で良いのではないかと意見をいただいた。
よく観察すると,小さな虫がよく付着している。

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おしべ・やくの観察
 
反っている。 → 花粉が虫の体に付きやすい。
おしべの数は10本 → そのうち1本が貧弱で生えている場所が違う。蜜のありかを教えている。
やくが曲がっている。→ ツツジ科は,おしべのやくに特徴があり,180°曲がっている。
やくに花粉が出る穴が開いている。→ ツツジ科の特徴
めしべより短い。 → 自家受粉を避けている。

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めしべの観察
 
反っている。→ 花粉が柱頭に付きやすい。
おしべより長い。→ 自家受粉を避けている。
子房が毛だらけ → 胚珠の保護
柱頭の先が5つに分かれている。大の字になっている。 →心皮5枚からできている。

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苞の観察
 
ひじょうに強い粘着質になっている。→ かなり大型の虫も付いている。つぼみの保護。
モチツツジの粘着質の中に,タンパク質を分解する酵素が発見された。(2004年)

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 スライドは,受粉する昆虫は何か?へと続き,最後は,花(植物)と昆虫がお互いに形を変え,共進化してきたことで終わりにした。

 

4.最後に

 私は特に植物について詳しいわけではない。しかし,1つの植物を観察し調べていくといろいろな興味深い点がたくさん見つかる。 生徒にも同じように,何種類もの植物を調べさせるよりも,全員で同じ種類の植物を使って,1人1つの花で観察させ気づいたことを発表させ,まとめさせた方がより教育的効果が上がるのではないだろうか。本当に生徒は多くの事に気づいてくれた。ツツジのおしべのやくが曲がっている。柱頭が5つに分かれていることなど発表したときには正直な話し驚き感動した。

 これに続き,「ヤエザクラの花の観察」等をパワーポイントでつくり,授業実践している。

 

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