授業実践記録

数学的活動を楽しみ,かかわりの中で考える力を高め合う授業 〜「図形と相似」パンタグラフを使った授業の実践を通して〜

愛知県豊橋市立中部中学校
大矢 薫

 

1.はじめに

 数学の授業では,特に以下のことが大切であると考える。

 生徒自身が数学的活動を通して主体的に考える。
 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付ける。
 思考力,判断力,表現力を総合的に高める。
 数学を学ぶことの楽しさや意義を実感できる。

 図形領域の学習においては,苦手意識を持ち,学習に対して消極的な生徒も少なくない。そこで,パンタグラフを使って,いろいろな図や絵を拡大することで,遊び感覚で活動を楽しみ,操作活動の中から,「平行線」や「穴の数から線分の比」に気づき,相似な図形へつなげていく。また,パンタグラフは1人に1つ用意し,グループで操作活動を通して,いろいろと意見を交換し合いながら,パンタグラフの仕組みについて考えさせることで,お互いに考える力を高め合うことができると考える。

 

2.授業実践

(1) 授業計画 (18時間完了)

相似と図形
(1)パンタグラフで拡大図を描こう・・・2時間(本時2/2)
(2)相似な図形・・・2時間
(3)三角形の相似条件・・・2時間
(4)相似条件と証明・・・3時間
平行線と線分の比
(1)平行線と線分の比・・・5時間
(2)中点連結定理・・・2時間
章末
(1)パンタグラフの仕組みを考えよう・・・1時間
(2)章末問題・・・1時間

(2) 本時の目標

パンタグラフのねじの位置をいろいろ変えて,拡大図がかけるか調べようとすることができる。
拡大図をかくための正しいねじの位置の組み合わせを見つけることができる。

(3) 授業過程


学習活動(○)  予想される活動や反応(・)  教師の支援や指導(※)

前時の確認をする。
 
パンタグラフで2倍の拡大の絵をかいた。
ねじの位置を変えるとどうなるだろう?
2倍以外の拡大はできないのかな?
 
本時の課題を知る。
 
オリジナルパンタグラフで,いろいろな大きさの拡大図をかこう。
ねじの位置は自由に決めてもいいの?
(手作りのパンタグラフ)

4本のパーツを使ってパンタグラフをつくる。
 
4本のパーツでパンタグラフをつくり,拡大図をかいてみよう。
ねじの位置を適当に組んでみて,実際に拡大図をかいてみる。
縦長や横長の絵になった。
 
形が変わったから拡大とは言えない。
 
操作活動を一旦とめて,代表の班に発表させ,同じ形についてのイメージを全員がもてるようにする。
ねじの位置を変えてみよう。
2倍のパンタグラフを観察する。
中にできる四角形の形に注目する。
3点A,B,Cの位置関係に注目する。
 
かけた図を見て,同じ形かどうか見た目で判断する。
長さを測って,だいたい何倍か調べる。
 
3倍や6倍の拡大図がかけた。
パンタグラフの中に平行四辺形ができる。
 
 
 
 
 
 
うまくかけないパンタグラフはそのままの状態でとっておき,新たなパンタグラフをつくるように指示をする。
うまくかけないパンタグラフとうまくかけたパンタグラフを見比べ,ねじの位置の違いについてグループ内で相談させる。
(正しくないパンタグラフの一例)
 
うまく拡大図のかけたパンタグラフのねじの位置を発表する。
 
正しいねじの位置を見つけられた班の生徒が黒板で位置を発表する。
ねじの位置で「正しく拡大した図をかくため」の規則を発表する。
 
中の四角形は平行四辺形になるようにする。
3点A,B,Cが一直線上になるようにする。
(正しいパンタグラフの一例)


本時のまとめをする。
 
自分たちの手で,倍率の違うパンタグラフをつくることができた。
かいた図は本当に拡大図なのかな?
平行線があると,なぜ拡大図がかけるのだろう。
 
これから,相似な図形について学習するにあたって,平行線に着目させ,さらに,新たな課題をもたせることで,今後の学習に対する意欲を高める。

 

3.授業の実践を通して

《単元の流れ》
パンタグラフを使わずに
  絵を2倍に拡大しようと
    がんばって描いたもの

パンタグラフを使って
  アンパンマンを2倍に
    拡大してみました。

 

 ほとんどの生徒達が,初めてパンタグラフを目にし,興味を持って操作活動に取り組んでいた。いろいろな図や絵を拡大する活動を通して,「倍率を変えたりすることはできないか」と発展的な考えを自ら持ち,活動の幅が広がっていった。ねじの位置を変えて,オリジナルのパンタグラフを作るが,正確な拡大がかけないことを知り,パンタグラフの仕組みを調べ始めた。グループでの活動であったが,全員が初めての体験であったため,学力の差を感じずに,いろいろと試したり,気づいたことを伝え合ったりしながら,パンタグラフの仕組みを話し合うことができた。
上記の具体的な手立てのAとBを実践することができたと考える。各グループから出た「平行」「穴の数」をキーワードに,相似についてもっと知りたいと意欲がわき,以降の授業への取り組みもいつも以上に真剣に取り組むことができた。単元終了時にはもう一度パンタグラフに戻って,パンタグラフを検証することで,今までに身に付けた学習内容でパンタグラフの仕組みを根拠を明らかにして説明し合うことができ,単元を通して,手作り教材のおもしろさを実感することができた。

 手作り教材ということで,いろいろと試作品を作り,素材を変えたり,穴の位置を変えたりと大変な面も多いが,生徒達の楽しそうに活動し,さらに調べてみたいという様子を見ると,今回実践してみよかったと思えた。まだまだ改良するべき部分は多いが,来年度以降も続けていきたいと思う。また,他の図形領域でも手作り教材を用いてさらに,数学的活動を通して楽しく追求し続けることができる教材も考えていきたい。

前へ 次へ


閉じる