授業実践記録

学力向上を図る学習指導の工夫 ― 図形と相似の指導を通して ―
愛媛県A中学校
教 諭

 

 《この事例のポイント》

 三角形の相似条件などを用いて図形の性質を証明したり,平行線についての線分の長さの比の性質を見い出したりすることは,論理的に考察し,表現する能力を伸ばすことに役立つ。特に,身の回りの事象を「形・大きさ」という観点から考察することは,図形の基礎的な概念や性質についての理解を深めるために大切となる。

 図形領域において,筋道を立てて論理的に思考していくことを苦手とする生徒は多いと考えられる。そこで,小集団学習を取り入れ,自分の意見を述べ合い,聞き合い,一人一人の表現する時間を確保することで,学習への充実感を味わわせたい。また,考えたことを書いたり考えたりする場を多く設定して,論理的に考察していく力や表現力などを高めていきたい。

 また,本授業研究は,学力向上プロジェクト事業の授業研修として,学力の定着を目指した研究も兼ねている。自己の授業力を見つめ直し,学力の定着をどのようにしていけばよいかを考えながら取り組んだ。

 

1.単元名 図形と相似

2.単元目標

( 1 ) 図形の拡大・縮小の意味を知り,それをもとに図形の相似の意味と相似な図形の性質を理解する。
( 2 ) 三角形の相似条件を知り,それを用いて図形の性質を証明することができるようにする。
( 3 ) 縮図をかいて,距離や高さなどを求めることができるようにする。
( 4 ) 平行線と線分の比についての性質を見いだし,これを活用していこうとする。
( 5 ) 三角形の中点連結定理を理解する。

 

3.指導計画

( 1 ) 相似な図形 3時間
( 2 ) 三角形の相似条件 2時間 (本時その2)
( 3 ) 相似条件と証明 3時間
( 4 ) 縮図の利用 1時間
( 5 ) 平行線と線分の比 5時間
( 6 ) 中点連結定理 2時間

 

4.本時の指導

( 1 ) 指導について

   本単元では,図形の相似の概念を明らかにし,その性質を用いて図形の性質を論理的に確かめ,理解を深めさせていく必要がある。前時では,対応する頂点の順に記号∽を用いて書くことを確認し,いくつかの三角形の中から,相似な三角形を見つけ出す課題を解いている。

   本時では,相似となる三角形を見つけ,その相似条件を筋道を立てて的確に説明する学習を行う。 まず,2つの三角形の中から相似条件に当てはまるものを見つけていき,さらに,共通な角や三角形の向きに注目させることで,相似な三角形を見つける。
そして,相似な図形についてその根拠となる事柄について筋道を立てて考えさせ,発見する喜びを感じさせたい。 そして,言葉や図を使って説明する力を身に付けさせたい。

( 2 ) 本時のねらい

   ア 相似の関係にある三角形を見つけ,その根拠を説明することができる。

   イ 既習事項をもとに,意欲的に課題解決に取り組むことができる。

( 3 ) 準備物

   ワークシート,板書用掲示物

( 4 ) 授業の実際

学習活動(形態)

時間
( 分 )

主な発問と生徒の反応


指導上の工夫

学力向上のための工夫と支援

評価の視点

前時までの復習をする。

2つの三角形の図を3枚提示するので,それぞれの相似条件を大きな声で言ってください。

相似な三角形を表す図を提示して,相似条件をテンポよく確認させる。

(一斉)

3組の辺の比がすべて等しい。
2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい。
2組の角がそれぞれ等しい。

声に出すことで,既習事項の定着を図る。

本時の学習を確認する。

相似な三角形について考えよう。

(一斉)
       

課題1を考える。

課題1

2つの三角形が相似のとき,相似条件を説明しよう。

相似条件を使った問題を考えてみましょう。これはどんな相似条件が使えますか。また,その理由を説明してください。

対応する辺の比や角の大きさに注目させ,相似条件をしっかり考えさせる。

(個)
 
↓↑
(全体)

3組の辺の比がすべて等しいので相似です。理由は,3組の辺の比がすべて1:2となるからです。

相似な三角形を見つけることができたか。

   

第2問。

   
   

2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので相似です。理由は,2組の辺の比が2:3,間の角は対頂角で等しいからです。

   

 

 

第3問。

   
   

2組の角がそれぞれ等しいので相似です。理由は,2つの三角形には 70°があり,左の三角形には 50°があります。右の三角形には 60°があるけど,三角形の内角の和は180°だから,右の三角形のもう1つの角度は 50°です。

   

課題2を考える。

37

今考えた3問は2つの三角形が相似であることを考えました。では,この図を見てください。この中に三角形はいくつありますか。

図の上に2つの三角形である△ACD,△DBCを重ねて張り合わせておき,合計3つの三角形が存在することを理解させる。

(個)

3つです。

この3つの三角形のうち,相似の関係にある三角形があります。どれでしょうか。

△ABCと△ACDです。

     

相似の記号を使って表わせますか。

   
     

△ABC∽△ACDです。

   
   
課題2 △ABC ∽ △ACDの相似条件を見つけよう。また,その理由を説明してみよう。
     

この2つの三角形が相似である理由を考えていきましょう。相似条件について,どの辺や角に注目して示していけばよいでしょうか。図の中に相似条件に必要な辺の長さや角の大きさを記入して理由を書きましょう。

いろいろな値の中から相似条件に必要なものを見つけることができたか。

意欲的に課題解決に取り組むことができたか。

     

ここまでにします。今現在,自分は何種類考えられましたか。1?2?3?3より多く?

いくつの考え方ができたか確認させることで,追求心をもたせる。

 

(小集団)

 

今からグループになって,自分が書けている内容を発表していきましょう。

小集団学習を取り入れ,自分の考えをしっかり表現させる場を設定する。

 

グループ内で自分の考えを発表できたでしょうか。では,どのような考え方があったのかを発表してもらいます。

一通り説明ができたグループは,他の考え方はないか,相談しあいながら見つけさせる。

(全体)

 

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本時のまとめをする。

相似な三角形であることを相似条件を使って,もっと筋道を立てて説明していくものを証明といいます。次の時間から学習していきましょう。今日の感想,反省を発表しましょう。

本時の授業を振り返り,次時につなげる。

(一斉)
 
 

 

 

友達の考え方が,発表し合うことで分かりました。自分の考えをうまく伝えようとがんばりました。

   
     

普段の授業では考えないようなことを発見できてよかったです。班活動で他の人の考えを聞いて,自分の間違ったところや新しい考え方が発見できてうれしかったです。

   

 

5.授業を終えて

( 1 ) 研究協議の在り方

 この授業は,学力向上プロジェクト事業と宇和島市算数・数学科研究委員会の授業研究会を兼ねており,宇和島市内の小学校,中学校,高等学校の教員が集まった。研究協議は,6つの少人数に分かれて,ワークショップ型で行い,意見を出し合った。

 ア 各班の意見発表

課題2は,相似ではない三角形の理由を考えさせる必要があった。誤答から説明させることもできたのではないか。小集団の時間を取りすぎたのではないか。その後,自分で同じような問題を解かせると,学んだことが身に付いたかどうかがわかるのではないか。

授業全体,落ち着いていて雰囲気がよい。提示の仕方もよい。個人から小集団,そして全体への流れの工夫ができていた。基礎・基本を大切にしている授業だった。

授業最後に「感想を書きなさい」ではなく,「学んだことを書きなさい」とすれば,振り返りができたのではないか。

課題や発問をしたとき,生徒が考える時間が短かった。課題2の三角形がはがせて3つになるのが良かった。しかし,裏返して同じ向きにできればもっと良かったのでは。角を直角にすれば,次の単元の三平方の定理につながるようになる。小集団もしっかり話し合えていたが,答え合わせになってしまっていなかったか。

3つの三角形で,相似でない三角形の説明をもっとすれば良かったのではないか。

小集団の効果が見られた。課題の提示の仕方や発問の仕方等,入念な準備ができていた。

 イ 指導助言

   先生が一生懸命に授業をされている。生徒との人間関係もできている。授業は,人間関係が基盤である。

  本時の単元は,生徒が苦手としている図形の領域である。視覚に訴え,根拠をもとに筋道を立てる力を身に付けさせてほしい。

  導入では,全員で相似条件を声に出した。ペアで言い合い,確認ができるとよい。

  課題については,ねらいを達成するための設定が必要である。今回の課題設定は,多様な見方や考えに気付くことができたのではないか。なぜ相似条件は3つしかないのに4つの枠があるのか,というつぶやきがあった。「他にもまだ相似になる条件がある」と興味が湧いた子がさらに課題を発展させていくのではないか。課題には負荷を掛けてほしい。自力解決もさせてほしい。相似にならない三角形も考えさせたかった。

  話合い活動は,リーダーを中心に話し合いが進むようなきまり,仕方を取り入れてほしい。

 ウ 成果と課題

   本時の授業前に,他のクラスで2回授業の研究を行った。机上で三角形を切り,操作活動の中で相似な三角形を見つけさせた。そして,2つの相似な三角形を貼り付けさせたが,貼るだけで時間がかかり,相似にならない三角形の対応をどうしてよいのかを悩む生徒が多かった。課題を設定するときの的確な発問内容を考え,生徒にわかりやすい課題設定をしなければならないと感じた。また,生徒が興味の沸く課題設定をして,さらに考えが発展させていけるような授業に努めていきたい。

 

[ 参考文献 ]

文部科学省『中学校学習指導要領解説 数学編』

 

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