授業実践記録

ゲームのルール作りを通して「基準」の必要性に気づく座標指導
山形県 中学校数学教諭

1.はじめに

 関数的な見方・考え方についての指導は,小学校からはじまり,中学校・高等学校へと児童生徒の発達段階に応じて,段階的・発展的に展開される。特に,中学校での関数の表現方法は,式による表現が登場し,グラフが負の数の領域に広がるなど,小学校での表現方法から多様性を増していく。

 以上のことから第1学年で学習する「比例・反比例」では,事象間の数理的な関係を見つけ出し,式で表すことができ,負の領域に広がったグラフを的確に表現できることを関数の導入として重視してきた。特に,「座標」に関する学習は,負の領域に広がるグラフの表現に直結するため,その内容を十分に理解することは不可欠である。そこで,「五目並べ」など他と交流するゲームを取り入れることで,その抽象的な表現方法をより身近なものとし,理解の定着を図ることにした。


2.授業の内容

 五目並べの次の1手を考え,それを相手にどのように伝えるかを考える。これにより,「基準」や「伝え方のルール」の必要性に気づき,より簡単に伝えるための工夫が生まれ,自然に「原点」,「座標軸」,「座標」に関する知識を身につけることが出来ると考えた。


3.授業の実際

教師の発問・指示等
生徒の反応・変化→助言・配慮等
   
(1) 五目並べのルールの説明と確認を行い,実際にペアでゲームを行う。
五目並べを知らない生徒のために,ルールを出来るだけ簡単にする。
 
   
(2) 黒板に貼った「次の1手」の問題を全員で考える。
   
point
その場で「言葉で」伝えるよう指示する。  
   
(図1)
指さして「そこ!」
「4つ並んでいる黒の,一番左の下」
「左から6番目の下から3番目」
教師: どこだかわからない素振りをする。
うまく伝えることの難しさを感じる。
   
(3) 本時の最終的な目標は「離れた場所での五目並べ」であることを伝える。
   
「電話で五目並べができないかな」と問 いかけてみる。
意味を理解できない。
   
(4) 2名の生徒に黒板に貼った碁盤を使って,「言葉で」五目並べを行う。
   
さあ1手目はどこに置く?
あえて離れた席の2名を立たせて,黒板の碁盤で五目並べをさせてみる。
   
point
第1手目を置く場所を,どう伝えるのか考えさせる。  
   
(図2)
指さして「そこ!そこ!」
1手目を示すことの難しさに気づく。
「左から5番目の下から7番目」
教師: 端の縦軸と横軸という基準の確認。
   
point
なぜ2手目を置く場所は簡単に示せるのか考えさせる。  
   
では2手目はどこに置くの?
「黒の右下」

(図3)

教師: 簡単に伝えることが出来る理由を確認。
位置を示す元になるもの(黒)の存在,つまり基準点があることの利便性を感じる。
   
point
基準点はどこにあれば便利なのか考えさせる。  
   
はじめの基準点はどこにあった方が便利だろう?
簡単に伝えるには」という1点に絞って,基準点を考えさせる。

(図4)

のような端を基準にすればいい。
を基準にすると数えるのが面倒。
を基準にすると数えるのも簡単。
教師: 中央を基準にするというルールの共通理解と,常に基準からの位置で示すというルールの確認。
   
(5) ゲームを進めながら中央の基準点からの位置の示し方を工夫する。
   
なんかいつもいつも「右に○,上に△」とか言うのは面倒臭くない?
伝える順番を決めるといい。
必ず「左右→上下」の順番で言ってもらう。
「左右→上下」の順番で言うというルールならば,「左,右,上,下」という言葉はいらないのではないか
でも,「左か右かわからない」……

(図5)

教師: 図5のように基準点に沿って矢印を書いてみると…昔,こんな線を使って学習したこと無かった? ※横の矢印線だけ示す。
「あっ,数直線だ!」
「左側は負の数を使えばいいんだ」
「左」と「下」は負の数で表せば済むことや,負の数を使った2つの数字だけで位置を示すことが出来ることに気づく。
   
point
順番を守れば,数字だけで位置を示すことが出来ることを確認する。  
   
(6) 2名の生徒に(座標を使った)言葉だけで五目並べをしてもらう。
   
(7) 机を離して手元の紙を使って五目並べをする。(ペア)
   

(図6)

「左右→上下」の順番であることを確認する。
スムーズに出来るように,座標軸と目盛りが書き込まれた用紙を準備する。
   
(8) 「原点」,「x軸,y軸」,「座標軸」,「座標」という言葉があることを知らせる。
   


4.授業を終えて

 今回,生徒自身の意見をもとにルール作りをしたことによって,点の位置を座標で表現することに対する抵抗感が生じなかった。また,その後のグラフの指導についても的確に表現できるようになり,むしろグラフを得意とする生徒が多かったように感じる。このような学習の交流を通して得られた知識は,非常に定着度が高いことを痛感した。

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