授業実践記録

その2 三平方の定理〜パズルに挑戦〜
埼玉県 中学校数学教諭

1.はじめに

 一般的な三角形では,2辺の長さがわかっても,残りの辺の長さは中学生の学習範囲では求めることができない。小学校で三角形を学習したときから,「2辺の長さを加えれば,残りの1辺の長さを求めることができるのではないか」という思いを多くの生徒は持ったものである。しかし,そうはならないことを実測などで知り,長さを求めることをあきらめてきていた。しかし,「三平方の定理」は,直角三角形という特別な場合においてであるが,そんな気持ちを解決してくれる単元である。


2.ねらい

 この単元は,上記のことからもわかるとおり,生徒にとって興味深い内容である。しかし,学習していく上で,直角三角形の3辺の関係について,「 a2 + b2 = c2 」の数字の関係にのみ注目し,a2,b2,c2が持つ意味を生徒はすぐに忘れてしまいがちである。そこで,a2,b2,c2が面積の関係に結びつくことを印象づけるためと,生徒がより関心を持って取り組むようにパズルを取り入れて導入課題とした。


3.実践例
(1)準備について
 あらかじめ授業の準備として,ハサミを用意させておく。B5の紙に,図のような同じ大きさの正方形2枚の組(パズル1)と,大きさの違う正方形の組(パズル2)の2つを用意する。パズル1は,正方形2つを1つの正方形に組み合わせる意味を理解させる意味で行う。パズル2を2つ用意するのは,1つを切ってバラバラになったとき,初めの状態がわからなくなってしまうためと,2つの正方形がどのように1つの正方形に組み合わさったかを,照らし合わせて最後に確認できるようにするためである。したがってパズル2の1つは,あらかじめ切り取らないように注意しておく必要がある。

(2)パズル1について
 
 パズル1は,生徒によっては切らずに見ただけで,どのように組み合わせるかわかる。また,実際に切り取って活動することによって理解する生徒もいる。どちらにしても,実際に活動し,2つの正方形から1つの正方形になることを理解し,『自分でもできる』という喜びを味わわせることができる。そして次のパズル2も『やってやろう』という気にさせることができる。

(3)パズル2について
 
 パズル1ができた生徒は,2に取り組ませる。1の経験から,簡単にできると思って始めるが,1に比べると切られた1つ1つの図形の大きさがバラバラであり,思うようにできない。途中,「全部使わないといけないんですか?」とか「本当にできるんですか?」などといった質問が出る。また90°に注目し,元の正方形の90°を使い,正方形でなく長方形ができる場合もある。試行錯誤の末,1人ができるとその声に刺激され,段々と完成させる生徒が出てくる。大方の生徒ができた所で,どこの90°を利用するか説明し,元の形から新しく正方形をつくる方法を説明する。
生徒にノートに貼らせた図形

(4)まとめについて
 残っていたパズル2を2つの正方形に切り離し,作り上げた正方形を右の図のようにノートに配置させる。そして『三平方の定理』の3辺の関係
「 a2 + b2 = c2 」について説明する。


4.成果

 『三平方の定理』は3年生最後の単元で,塾にいっている生徒は既に知識として習っている。しかし,パズルや右の図の関係から改めて納得し,感動する生徒もいる。また,元の2つの正方形の切る線に注目させると,任意の2つの正方形でも切り方で1つの正方形に並べ替えることができることを理解することができた。


その1
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