「ビリヤードの達人になろう」
福岡県行橋市立仲津中学校
福羽 延生
1.指導観
 (1)  教材観
 本題材「ビリヤードの達人になろう!」は,ある玉を壁に反射させて別の玉に当てるには壁のどこに反射させればよいかを考えさせる課題である。直観的におおよその位置は見当がつくと思われるので,課題に取り組みやすく内容もとらえやすい。そのため,どの生徒においても操作活動を通して主体的な学習活動が期待でき,事象における数学の活用を学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら学習を進めていくことができる題材である。
 (2) 指導観
 中学校学習指導要領 解説―数学編―(文部省編集)では,「課題学習では,新たな知識・技能の習得や習熟よりも,生徒の数学に対する興味・関心や創造力,活用力の育成が強調されている。(中略)すべての生徒がその課題に主体的に取り組み,数学的な見方や考え方のよさが感得できるような指導をすることが必要である」とある。
 本単元の指導においては,数学の時間に学習した内容を用いて,ビリヤードという身近な事象に取り組ませることを通して,まず興味・関心をもたせ,操作活動の中から「発見」をさせることによって,数学を活用する態度を育てていきたい。ビリヤードの玉のはねかえりの位置を求めるには,操作活動を行っていくと見つけることができる。
 さらに,班で意見交換を行うことにより,その位置が対称性や一次関数を利用して求めることができることに気づかせ,数学をいろいろな場面で活用できる態度を養っていきたい。また,2回,3回とはねかえりの回数を増やしたり,左の壁ではねかえって上の壁でもう一度はねかえるなど生徒自ら問題を発展させて考えることができるようにしたい。


2.指導目標
 ・生徒の力に応じて課題に取り組み,解決することができる。
 ・日常的な事象の中に対称性や一次関数が活用することができる。


3.単元指導計画(全3時間)
学 習 内 容評  価
.ビリヤードの達人になろう!
ビリヤードの達人になろう!
対称性を利用して玉のはねかえりの位置を求めることができたか。(本時1/2)
一次関数を利用して反射地点を求めよう。
一次関数を利用して玉のはねかえりの位置を求めることができたか。


4.本時の展開
 (1) 本時の指導観
 本時では,ビリヤードの玉が壁に当たってはねかえる経路は,入射角と反射角が等しいことを,まず操作活動を行うことで直観的に気づかせる。次に,班の中で入射角と反射角が等しい点はどうすれば見つかるのか考えさせる。そのときに三角形の合同を利用すると対称性が使えることに気づかせていきたい。さらにお互いに発表をすることで内容を深め,対称性が多くの場面で利用することができることを確認させる。また,T・Tを導入することで生徒一人ひとりの学習活動により対応していきたい。
 (2) 主 眼
玉の経路の作図する工夫を通して,対称性が利用できることに気づくことができる。
班活動の中で,自らの考えを表現することができる。
 (3) 準 備
1)学習プリント
2)定規
3)分度器
4)ビデオ(ビリヤードをしている姿・玉のはねかえりを撮影したもの)
5)実物投影装置
6)ビリヤード装置(額縁,ペン,角材,玉,方眼紙)


学習プリントの例1

学習プリントの例2

玉はオセロ型のものを使用。なるべく小さいほうがよいみたいです。当たった点や軌跡をたどるのに使いやすかったです。玉をはじくのにはペンを使いました。角材を各班3本準備しましたが,角材を添えて玉をはじいたり,角度をつけたりと考えて使っていました。
 (4) 指導案(略案)


5.生徒の反応と指導の成果,課題
 ビリヤードという身近な題材を使うことにより,反応もよく操作活動も楽しんで,学習できていた。日頃,「数学」に対して拒否反応を示しがちな生徒が,操作活動では一番に玉に当てみんなから拍手をもらい,喜んでいる姿も見られるなど,どの生徒においても操作活動を通して主体的な学習活動が期待でき,事象における数学の活用を学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら学習を進めていくことができる課題であった。
 ただし,一次関数を利用して求める方法については,「関数」,「傾き」,「切片」などと聞いただけで,拒否反応を示す生徒も少なくなく,復習の時間もとり,1時間では足りなかった。2年の一次関数終了後に行うほうが効率的だと思われる。

 <参考文献>
山口県中学校数学教育会  数学指導ハンドブック第3集 課題学習
秋山 仁中学生おもしろ数学

 <協 力>
行橋市中学校数学部会

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