規則性に着眼する課題学習
―握手の総回数―
1.はじめに
 自然界で起こる現象の規則性・法則性を見出し,それを一般化し,他の事象への応用を行うことにより,科学は目覚ましく発展してきました。数学は,自然科学の1分野であり,常にその学問の成果を生活に生かそうとする1つの手段として考えることができます。
 ところが,現在の中学生にとって,数学は問題解決をするプロセスよりも1つの結果を早く出すこと(正解数を増やすこと)が至上目的である傾向が強いようです(そのような社会に我々がしてしまっているのですが…)。つまり,1つの公式が導きだされても,どのような過程で導きだされたのかということよりも,その公式の活用法にシフトしている傾向にあります。単に解き方のパターンを身につけたり,公式を覚えて機械的に解くのではなく,あらゆる機会に自分が経験したプロセスを応用することが,本来の姿ではないでしょうか。
 今回の課題は,規則性に着眼し,問題解決のために多くのアイディアが出やすいもの,さらに,そのプロセスが他にも多く応用できるものを設定しました。また,1つの問題を解決するときに多くの考えが出されることがありますが,それらの考えの間にある関わりについてまで追究される授業は少ないと思われます。今回は,一見,全く別の考えである解き方でも,その間にある考え方の関わりについても追究し,さらに,他の課題へも応用ができるということをオープンエンドの形で生徒へ投げかけてみました。

2.本時の目標
 (1) 自らが問題解決の糸口を発見しようとする。
 (2) それぞれの考えの間にある関わりを理解する。
 (3) 解き方のプロセスを他の課題にも応用できることに気づく。
 (4) クラスメイトのそれぞれの解き方を理解できる。

3.授業の実際
 (1) 3人で握手をしてイメージづくり
 「3人で握手をするとき,握手の総回数を求めよう」ということで,2人を指名し,私と合わせて3人で実際に握手をし,イメージをもたせるようにした。
全部で3回できることがわかった。

 (2)

 課題提示
□人で握手をするとき,握手の総回数を求めよう。

人数を何人にするかは生徒に決めさせる。
「10人くらいが適当だ」と言うと,「じゃ,きりがいいのでそうしよう」ということになった。

 (3)

 解き方の発表会
生徒たちが考えた代表的な解法
1) 基準になる人から図を使って順に数え上げていく。
2) 樹形図を使って,順に数え上げていく
3) リーグ戦の対戦表を利用する。
4) 計算で求める。
5) 握手をする人数と総回数を表にまとめる。

教材提示装置を使い,数名の生徒を指名し,テレビモニターにプリントを映して発表させた。その際,それぞれの解き方についての着眼点について,大いに評価するように心掛けた。

 (4)

 それぞれの解き方の間にある関係について考える。
1)や2)の中でBの相手からAを省いているのは,3),4)ではどのように表現されているか。
4)の式を3)や5)の表から導きだせることができないか。
このような投げかけをすると,生徒たちの中から「あっ! そうか」という声が聞こえる。
解決が困難な問題に出会った場合でも,1)や2)のように数え上げるという基本に戻ってみると解決の糸口が見えてくることを確認

 (5)

 応用と発展への可能性
この内容をワークシートとして,プリントにまとめたものを配付し,「握手の総回数」の考え方をもとにして考えさせた。

4.生徒の感想より
 以下は,'98年度に「近畿算数・数学教育研究京都大会」で公開授業を行った際,生徒たちに書いてもらった感想です。私の学校の生徒ではなく,京都市立桂中学校の2年生の生徒たちに対して行った授業ですので,私も緊張していましたが,生徒たちは真剣に取り組んでくれました。

5.参考資料
 数学の授業を感動の連続に明治図書
 秋山仁のおもしろ数学発想法 NHK出版

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