対角線が通る方眼の眼の数
長野県A中学校
1.素材の教材化<課題学習:2,3学年>
 ・見通しをもった追究(見つけたきまりが成り立つ場合と成り立たない場合のすべてをつくす)
 ・筋道を立てた考え方(きまりを見つけるときの帰納的な考え方)

 (1) 素材の数理的価値

図1
 左の図1のような方眼に対角線を1本引いてみる。このとき,通過する方眼の眼の数は,どのようになるかを考える。
 1)  (縦2,横5)のときは,通過する方眼は6個,
 2)  (縦3,横5)のときは,7個である。
a) 縦と横の数が互いに素である場合
 縦と横が互いに素の場合は,網かけした部分を通るのと同じことになる。つまり,(縦)+(横)−1=通過する方眼の数
 縦を1にきめて横を増やしていくと,横が1増えるごとに1ずつ増える。
式:(縦)+(横)−1=通過する方眼の数 最後のひく1は,の部分を表す。

b)

 縦と横の数が互いに素でない場合

図2(正方形)
 図2(正方形)のような場合には,1)は3個,2)は4個である。つまり,格子点を通る場合には,a)の式は成り立たない。
 しかし,1)(縦3,横3) 格子点 2個
2)(縦4,横4) 格子点 3個
 1+格子点=方眼の数であると考えられる。

図3
 図3では,1)(縦2,横4)は,4個
2)の(縦3,横9)は,9個である。
 縦と横の数が互いに素で,約数を持たない。
 1)が2つ,2)が3つ。この2と3が,1+格子点=最大公約数になっている。
a)とb)に共通する求め方を表す式として,
  (縦の数)+(横の数)−(最大公約数)=方眼の数

 (2)

 教材化
 四角形の対角線を結んだとき,「対角線が通る内部の方眼の眼の数は,いくつであろうか」という問いに生徒は,縦と横の方眼の数に着眼して,場合に分けていく活動に取り組むであろう。しかし,互いに素であることを見つける活動でかなりの時間を費やしてしまうであろうと考えた。また,2学年では,論理的な図形の論証が未実施であることを考慮した。
 そこで,b)の場合のような,互いに素でない場合を含めて提示すると見通しをもった追究ができにくいと考え,a)の場合のような互いに素の場合を提示することを考えた。
【学習問題】

 (縦3,横6)

 (縦4,横7)
 左のような方眼1),2),3)に対角線を1本引いてみる。このとき,通過する方眼の数はどうなるだろうか
(縦5,横8)

 そして,上記のような学習問題を提示することにした。1),2),3)は,互いに素になっている関係で,これらの関係を表にまとめたりすると,(縦+横−1)という式を予想することが容易にできる。
 個人追究では,正方形(図2)や互いに素になっていない場合(図3)について調べていく。
 成り立たない場合を見つけることは,数学においては大事な考え方である。成り立たないものが見つかっても,統合して成り立つきまりを目指すことが必要である。
 そこで,中間発表の全体追究を授業の後半に設けることで,成り立たない場合を見つける原動力にしたい。

 (3)

 本時を成立させるための手だて
 本時を成立させるために,次のような手だてを考えた。1)〜3)の手だては,見通しをもった追究をするための手だてである。
 1) 縦,横の方眼の数が,互いに素になる場合の図を提示する。
 2) 縦,横,通過する方眼の数を表にまとめる。
 3) その表を縦に見る。対応の見方をする。式を予想させる。
 4)〜6)は,筋道立てた考え方を育てるための手だてである。そのために,帰納的に成り立たない場合や成り立つ場合を見つけて追究を続けていく。
 4) 式がどんな場合にも成り立つのか。いろいろな図をかいて調べる。
 5) 成り立たない場合の図と成り立つ場合の図を比べる。格子点を通るものと通らないものの違いに気づかせる。
 6) 中間発表を行うことにより,他の人の追究と比べることによって,より一般性を高めていく。

2.授業の実際(2時間扱いの第1時)
 (1) 本時の主眼
 方眼上の対角線が通る眼の数についての規則性を調べる場面で,はじめの問題での図をもとに考えたり,いくつかの場合を図や表にかいたりして,方眼の横切り方の違いや,格子点を通るかどうかで場合に分けられることに着眼して,帰納的に考えることのよさを感得させる。
 (2) 次時の予定
 第1時の追究結果から,さらに深めたい課題を意欲的に追究し,レポートのまとめる。
 (3) 展開→別ファイル

3.生徒の追究活動
 生徒は,本時の学習で,「どんな場合でも,通過する方眼の数=(縦+横)−1で求められるか,図をかいたり表でまとめたりして考えよう」を課題にして取り組んだ。
【U生の追究】

方眼1012
 はじめに表にまとめ,縦+横−1の式を予想した。また,増加量にも眼を向けた。
 縦を2,3,4,5と増やすのと同時に,横を3,4,5,6と増やし,式が成り立つことを確認する。
 次に取り組んだ図は,正方形(縦5,横5)であった。「格子点を通っているときで縦=横のときは,(縦+横)÷2である」とした。さらに,(縦2,横6)・(縦3,横6)に出会って,「成り立たないものがこんなにあるなんて」といいながら,格子点を通る場合と通らないときでは,方眼の数が違ってくることに着眼した。正方形や縦÷横が整数になるときは,

 格子点を通るときが1),2)で,格子点を通らないときが3)であることがわかった。
【S生の追究】

 はじめに表を作成して,縦+横−1という式を予想した。そして,違う図形で調べたときは,成り立たないことがわかった。
 そして,次のように追究した。


 共通する式を,
 縦+横−(格子点+1)ではないか。
 【感想】
 表を使って,縦+横−1の式を予想することは簡単だった。図で説明もできた。でも,共通な式を予想することはできたけれども,なぜ,このようになるかは,やはり不明である。2時間集中して追究できてとてもおもしろかった。
 2時間終了時にU生は,「正方形になる場合と縦÷横=整数となるときは,はじめの式が成り立たないことが明らかになった。格子点を通ると方眼の数が1つ減るからである。友だちから,すべてに共通する式は,縦+横−(縦,横の最大公約数)であると聞いたけど,意味がわからない」と書いている。

4.成果と課題
 帰納的に式を予想して,いくつかの図で確かめることはできるようになった。しかし,演繹的に説明したいという気持ちが生徒に芽生えており,その点を今後改善したいと考えている。

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