東海大学助教授
菊池 文誠
ドイツ博物館
Deutsches Museum

ドイツ(1)

ドイツ博物館
(Deutsches Museum)

所在地:Museumsinel1,Munchen
電話番号:089-21791
アドレスhttp://www.Deutsches-Museum.de/
交  通:ミュンヘン中央駅(Hauptbahnhof)から地下鉄で3つ目の
 Isartor下車徒歩5分,イザール川の中の島にある。
開館時間:毎日9:00〜17:00
休館日:元日,告解火曜日,聖金曜日,復活祭日曜日,
 聖霊降臨祭日,聖体の祝日,5月1日,6月17日,11月1日,
 12月24,25,31日
写真撮影:可能
 市内を流れるイザール川の中の島に建つドイツ博物館は世界屈指の科学博物館である。日本をはじめ,世界各地の科学博物館はここを参考にして建設されたものが多い。規模は大きく,全部見るのにおよそ16km歩くといわれる。ドイツの生んだ科学・技術・産業のすべてにわたりその姿を知ることができる。ヨーロッパ科学博物館めぐりの旅としてはロンドン,パリとともに欠かすことのできない場所である。

戦火の跡が残る入口

巨大な湿度計と温度計のついた塔
 この施設は,創立者オスカル・フォン・ミラ−の思想である,科学と技術を誰にでもわかるように示す国民教育の場として1925年に開館された。彼は従来の,単に品物を並べただけの展示では,専門家や技術者には有用であっても,青少年や一般大衆にとっては興味を呼び起こさないと考えた。
 内容は一般的な展示のほか,観客参加型博物館の草分け的存在で,自分でスイッチを入れて実験をしたり,職員によるデモンストレーションも行われている。
 膨大な展示の中からいくつかを紹介する。まず,物理関係では,有名なマグデブルグの半球とゲーリケの真空ポンプがある。そして,背後には真空ポンプの初期のものから最近のものまでがずらりと並べられ,このコーナーだけで真空ポンプの発展の様子を知ることができる。比較的新しいものでは核分裂の発見者オットー・ハーンの実験装置がある。その他,古典的なものはレプリカ(複製品)が多いが,クーロンのねじれ秤,ジュールの熱量計,ファラデイのコイル,ボルタの電堆など歴史に残るようなものはほぼ見ることができる。力学や電磁気の分野では,ボタンやハンドルを操作して自分で実験できる装置も多い。

マグデブルグの半球と
ゲーリケの真空ポンプ
 放射線関係では,レントゲンのX線装置,キュリー夫妻の電気計,絶えず宇宙線を見ることのできる大型拡散霧箱,メスバウワーの実験装置,発電用原子炉の模型などがある。また実験では,短寿命のアイソトープを用いた半減期の測定や,ボタン操作で放射線強度の距離による変化,および様々な物質による吸収の異なる様子を見せるなど,わかりやすく理解できるような工夫がなされている。
 一般に押しボタン方式になじまないと思われる化学実験でも,多くの化学反応を簡単に見ることができる。また,昔の実験室を復元しているのもここの特徴の1つであろう。ガリレオ,リービッヒ,ラボアジェなどの当時の実験室の姿を見ることができる。もちろんガリレオの部屋には天体望遠鏡や力学斜面装置などがある。
 2階の中央部に「栄誉の間」というコーナーがある。ここには,ドイツ(神聖ロ−マ帝国の領域)の生んだ数十人の科学者の石像や肖像画が並べられている。古くはコペルニクスからライプニッツ,ガウス,オーム,ヘルムホルツ,クラウジウス,ボルツマン,レントゲン,プランク,アインシュタイン,ハーンなど枚挙にいとまがない。それらの顔と名前を見ていくだけで歴史の重みが伝わってくる。これらに混じってディーゼル,ジーメンスなどの技術者も同列に扱われている。その技術関係の展示が,また量・質ともにものすごい規模である。


復元されたガリレオの実験室

栄誉の間

 イギリスの産業革命を代表するのが蒸気機関と紡績機だとすれば,ドイツでは,エンジン,モーター,発電機である。それらの大型機器やダイムラーとベンツ以来の数々の自動車をはじめ,航空機,船(特に潜水関係)などの交通機関,各種の工作機械の展示に広いスペースがあてられている。さらに,ドイツ得意の工業化学,冶金などの工業関係や,珍しい分野としてダムや道路,トンネル,橋といった土木関係のものもある。マニアにとっては膨大な種類のカメラのコレクションは見逃せないだろう。また,ピアノ,ハープシコードをはじめとする充実した古典楽器のコレクションも見事である。これらの楽器は,職員によって実際に演奏もされている。
 展示の方法として装置の原理を理解させるために一部を拡大したり,断面を見せたりなどの配慮も行き届いている。中でも圧巻は地下に作られた実物大の鉱山のモデルである。薄暗い坑道を進むといろいろな機材の実物があり,等身大の坑夫の人形が採鉱や運搬の作業をしている様子がわかる。そのスケールの大きさと内部の複雑さ,これほどまでリアルに作られた展示には驚くばかりである。これは後に作られたアメリカのシカゴ科学産業博物館の原型となった。
 人気のあるのは,100万ボルトの高電圧装置によるデモ実験である。雷の実験では大音響とともに,モデルハウスが炎上し,沿面放電の実験では大きなガラス板上を紫の閃光が走る。人間の入ったファラデーケ−ジにも雷を落とすが,人間は金網で静電遮蔽されているため何ともない。当然のことながら,そのものすごい迫力に一般観客は驚きのようである。

アルキメデスの実験


高圧放電装置

放電の様子

 このドイツ博物館は第2次世界大戦で壊滅的に破壊され,多くのオリジナルの展示物が失われた。惜しんでもあまりある。その後,復興への努力が重ねられ,今日の姿となった。
 売店の規模も大きく,図書,参考資料,模型その他豊富である。
 バイエルン州の首都ミュンヘンは南ドイツの政治・経済・文化の中心で,スイスとオーストリアとの国境に近く,付近にはノイシュバンシュタイン城やバイエルンアルプスなどの観光地をひかえ,ビールの都としても知られている。西方近郊にあるウルム市はアインシュタインの生誕地である。ミュンヘン市内には歴史的な王侯貴族の宮殿を始め,教会などのゴチックやバロック様式の大きな建築物や多くの美術館・博物館がある。また,市内にはジーメンスやBMWの企業博物館もある。

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