授業実践記録 目次

個の発想を大切にする授業の工夫と実践
稲沢市立稲沢西中学校
野村 和正
稲沢市立治郎丸中学校
後藤 健太郎

1.はじめに

 「自ら学び自ら考える力」は,生徒がこれまでの体験や既習事項を基にしながら,自分で工夫をして課題を解決したり,新しい考え方や処理の仕方を生み出したりする学習の中で高められる。このような学習の積み重ねの中で育成された「自ら学び自ら考える力」は,生徒にとっては,いろいろな学習場面,日常生活,さらには将来の社会生活での活動の基になり,「生きる力」に結びつくものになる。数学科において,「自ら学び自ら考える力」の育成は「既習の知識や技能,考え方を基にして筋道を立てて考える力」の育成につながるものであり,個に応じた指導を行う中でより育まれるものと考える。

 そこで,より段階をふんだ思考が必要となる文章題を解く場面において,個の発想を生かして,数量関係を把握させることで「数学的な考え方」の育成をねらう。

2.研究の方法

(1) 対象生徒 中学校2年生85名
(2) 対象教材 中学校2年生「連立方程式の利用」(教科書P39・例題3)
(3) 基本的な授業の流れ

 個の発想を生かし,つながりを深める授業を構成するために,次のような3段階で思考を深める基本的な授業の流れを考え取り組んだ。

1で,絵や図を数学的活動に取り組ませることに自分なりの考えをもたせた。
2では,1で得られた考えをもとにグループで話し合いをもち,自分の考えを練り上げさせた。
3では,グループの絵を発表しながら,全体で考えを練り上げ,より望ましい考えをまとめさせた。
さらに,以上のような授業を行うように,構造に工夫をした自作の授業用プリントを使った。


3.研究の実際

 中学校2年生「連立方程式の利用」の割合に関する文章題での実践について述べる。

 取り組んだ問題は,「ある店で,シャツとパンツを1組買いました。定価とおりだと,1組の値段は3500円でしたが,シャツは定価の30%引き,パンツは定価の20%引きだったので代金は2700円になりました。このシャツとパンツの定価はそれぞれいくらですか。」である。

(1)「個人で考える時間」についての実践と考察

 数量関係を個人で絵・情景図・表・言葉の式など,自由に表現させるという数学的活動を取り入れた。その結果,以下に示すようなものが考えとしてでてきた。

資料1   資料2
 
 
資料3   資料4
 

 資料1は,前時の「速さ・時間・距離の問題」で扱った線分図を利用して数量関係を捉えようとしたものである。資料2は,30%引きや20%引きを絵で示すことにより視覚的に数量関係を捉えようとしたものである。資料3は,割合をしっかりととらえその変化を表したものである。資料4は,□や○を用い,次に式を立てることを意識した表し方である。

 このように,必ず自分なりの自由な絵・情景図・表・言葉の式などで表現させることで,数量関係を自分なりに把握しようとしていることが分かる。また,このような活動は,回を重ねるごとに,より式が立てやすい表現に変わっていった。生徒の感想の中には,「難しいけど,絵をかきながら考えられるので楽しかった。」という意見もあり,絵や図などで考えをまとめるだけでなく,意欲の高まりにもつながっていった様子がうかがえた。

(2)「グループで考えを練る時間」についての実践と考察

 ここでは,グループ内等質グループを基本とし,4人ずつで構成し話し合いをさせた。そして,自分の意見を発表し合う場面では,自分のかいたものを見せながら説明させ,「なんでそんな図になるの?」「もう一度説明して下さい。」など,自分の疑問に思ったことを質問させるようにした。そして,様子を見て「グループで相談をして,式が立てやすい表し方をグループで1つ考えよう。」と投げかけ,グループで考えをまとめさせた。その結果,生徒たちは,お互いの考えの良いところを取り入れながらより良い表現を考えることができた。以下に示すようなものが考えとしてでてきた。(資料5は,(1)で資料24を考えた生徒がいるグループからできたものである。資料8は資料3を考えた生徒がいるグループからできたものである。)

資料5   資料6
 
 
資料7   資料8
 

 資料5は,30%引きや20%引きを定価の70%や80%にすることで,より式を立てやすくしたものである。資料6は,資料5を式の形にしたものである。資料7は,表を用いて,定価と買値を形式的に表したものである。さらに,資料8では,表に割合の増減の行を設けることにより,定価と買値の変化を表した。

 グループでの活動の中で,自分の考えを人に伝える機会を設けたグループでの活動は,今まで話し合いに受け身で参加していた生徒を能動的に参加させることができた。また,考えを共有し認め合うことができるので,生徒が自分の考えやグループでの考えに自信をもつことができ,学習意欲の向上にもつながった。

(3)「全体で考えを深める時間」についての実践と考察

 ここでは,グループごとに考えを発表し合い,全体として考えを深めることをねらった。発表する生徒は教師が机間指導を通して,比較的発言の少ない生徒を意図的に指名した。このことにより,グループの全員が考えを理解し,協力して説明させるようにした。実際,考えがうまく説明ができない場合,グループの他の生徒に助言を受けながら説明することができた。生徒の意見には,「資料6は式が立てやすいからいい。」「表は考えつかなかった。」「表にすることで問題を整理することができる。」「表をつくることでどんな問題でも解ける。」などがあった。

 考えを練ったあとに,全体で発表を行い話し合うことで,より生徒にとって理解しやすい内容になった。また,お互いの意見の良いところがより明確に示すことができるようになった。

(4)自作の授業用プリントの実践と考察

 13の「基本的な授業の流れ」に加えて,学習プリントも利用した。学習プリントには,絵・情景図・表・言葉の式などをかくスペースをしっかりと設けた。自分の考えと人の考えを区別させるために,それぞれのスペースを設け利用させた。また,何を文字でおくのかなどの連立方程式の文章題を解くために必要な流れが定着しやすいよう,項目を立てるなどの工夫をした。


 その結果,後で見直したときに,自分の考えが人と話し合う中でどのように変わっていったのかその変容が分かりやすくなり,自分に何が足りないかを生徒自身に気づかせることができるようになった。答えをしっかりかくことや,確かめをすることなど文章題を解くために必要なことの定着も図れた。また,継続して学習プリントを使い綴じさせることにより,数量関係を捉える力が身に付いたことを実感させることができた。

4.指導の成果

必ず数量関係を絵・情景図・表・言葉の式などを用いて表すことは,生徒たちの学ぶ意欲を高めることに有効である。
「基本的な授業の流れ」に沿って授業を行うことにより,子どもたちは自分の考えを基に考えが深められることができ,主体的に取り組むことができた。
小グループで発表する場面を設定することは,生徒の考える力をつけたり定着させる場となり有効である。

5.今後の課題

思考の場におけるグループの構成について考える必要がある。
生徒が取り組みやすい課題や発問の仕方を工夫していくことが必要である。
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